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(投稿:by 僻地の産科医)
産科医の無過失補償制度 東北の病院・診療所が全加入
河北新報 2008年12月28日
http://www.kahoku.co.jp/news/2008/12/20081228t73014.htm
1月1日にスタートする産科医療補償制度(無過失補償制度)で、東北で分娩(ぶんべん)を扱う病院と診療所の加入率が100%となったことが27日、制度を運営する日本医療機能評価機構(東京)のまとめで分かった。お産を受け入れる助産所も1カ所以外は加入。東北のほとんどの分娩施設で、脳性まひの赤ちゃんが生まれた場合、施設側に過失がなくても補償が受けられる見通しだ。
制度は分娩施設が任意で加入し、妊婦には登録証を交付する。評価機構によると、東北で対象となる病院と診療所計243カ所はすべて、26日までに加入手続きを取った。10カ所ある助産所では、福島県の1カ所を除く9カ所が加入している。無過失補償制度は、出産時の事故で重症脳性まひの赤ちゃんが生まれ、所定の要件を満たすと、総額3000万円が妊婦側に支払われる。分娩一件当たり3万円か3万500円の掛け金は施設側が負担。分娩費用にはね返るが、出産育児一時金が増額されるため妊婦側の負担増にはならない。
東北公済病院(仙台市青葉区)産婦人科の上原茂樹科長は「脳性まひの子どもを育てる家庭の救済になる」と制度を歓迎する。とも子助産院(泉区)の伊藤朋子院長は「登録証にサインすると、妊婦は心構えが変わるようだ。お産の『安全神話』を過信しなくなる効果もあるかもしれない」と期待する。
ただ、妊娠20週ごろの健診時に登録を呼び掛けている公済病院でも、妊婦の半数以上は制度を知らないのが実情。各分娩施設は評価機構を通じて民間の保険会社と契約する仕組みで、高額な掛け金の割に補償額が少なく、補償範囲が狭いという指摘もある。
公済病院の上原科長は「情報公開をしっかりしてほしい。今後、余剰金が出れば、母体死亡や先天異常のある子どもらにも対象を広げてほしい」と訴える。脳性まひは出生1000人に対し、2人程度の割合で発生する。分娩時の瑕疵(かし)で起こる可能性は低いという説が有力とされるが、これまでは医療側が賠償を求められるケースが多かった。
制度の導入は医療紛争の防止、早期解決のほか、発症の原因分析も目的。多くの医療関係者は「制度により訴訟が減り、産科医減少の歯止めとなるかどうかは疑問だ」と口をそろえる。
小林産婦人科医院(盛岡市)の小林高院長は「訴訟リスクの軽減はあまり期待していない。さまざまな課題はあるが、まずは恐れずスタートすることが大切だ」と話している。
[産科医療補償制度(無過失補償制度)]
分娩に関連して発症した重症脳性まひの赤ちゃんが対象。看護・介護のため一時準備金として600万円、補償分割金として20年間に計2400万円、総額3000万円が支払われる。体重2000グラム以上、妊娠33週以上で生まれ、重度の障害があると診断されることが条件。妊娠28週以上でも、所定の要件に該当した場合は適用される。
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