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(投稿:by 僻地の産科医)
重労働、生計立てられず「続けられない」
―2008年重大ニュース(6)―
「介護現場で人材不足深刻化」
キャリアブレイン 2008年12月29日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19832.html
2008年、人材不足による介護事業者の倒産や、介護・福祉系の専門学校、大学の定員割れなど、介護現場の人材不足が深刻化した。背景にあるといわれるのが、「低賃金」「重労働」の過酷な勤務実態だ。来年度の介護報酬改定に向け、関係団体が処遇改善の必要性を訴えている。厚生労働省の社会保障審議会・介護給付費分科会(座長=大森彌・東大名誉教授)でも、介護従事者の確保と処遇改善は議論の焦点となった。同審議会は12月26日、舛添要一厚労相に対し、人材確保が困難な現状を改善し、質の高いサービスを安定的に提供するため、処遇の改善を図るべきなどとする09年度介護報酬改定案を答申した。
■背景に「低賃金」「重労働」
介護労働安定センターが昨年11月から12月にかけて、介護保険サービスを行う全国の事業所に対して実施した「2007年度介護労働実態調査」の結果によると、訪問介護員、介護職員の離職率は21.6%で、全産業の平均離職率16.2%(厚労省の06年度調査)を上回った。東京都が昨年10月、都内の特別養護老人ホームと介護老人保健施設に対して実施し、今年6月に公表した「特別養護老人ホーム等経営実態調査」の結果でも、回答した施設長の7割以上が、緊急に解決すべき課題として「人材確保」を挙げている。
これらの調査は同時に、「低賃金」「重労働」が人材不足の背景にあることを浮き彫りにした。都が施設長に対して人材確保が困難な理由を尋ねたところ、特養、老健共に8割以上が「給与水準が低い」(特養80.1%、老健84.6%)と回答。また、7割以上が「業務内容が重労働」(特養70.6%、老健73.1%)と答えた=グラフ1参照=。
給与水準が低い理由としては、「介護報酬(施設収入)が低い」(特養98.0%、老健98.1%)が最も多く、「他の経費が圧迫し介護・看護職員の人件費に回せない」(特養54.6%、老健71.2%)がこれに次いだ=グラフ2参照=。
介護労働安定センターの調査でも、介護サービスを運営する上での問題点として、「今の介護報酬では、人材確保などに十分な賃金を払えない」と回答した事業所が64.7%に上っている。
神奈川県で働く社会福祉士の女性は、「『介護の仕事は好きだが、生計を立てられず続けられない』と、結婚を機に退職する男性職員が多数いる」と指摘。都内の特別養護老人ホームの介護職員も、「70人の利用者を6、7人で見ていることもある。人が少な過ぎる」と窮状を訴える。
日本介護福祉士会の石橋真二会長は、03年度、06年度の2回にわたるマイナス改定の影響について、「多くの事業者が厳しい事業運営を迫られ、職員のボーナスをカットしたり、給与を減らしたりした。常勤のスタッフだけでなく、非常勤のスタッフも積極的に雇用するようになり、夜勤など、常勤スタッフの負担が重くなった」と話す。
■介護報酬改定で各団体が処遇改善を要望
こうした中で注目されているのが、来年度の介護報酬改定だ。
介護報酬改定に向けた議論は9月18日、介護給付費分科会でスタートした。厚労省はその際、議論の視点として、「高齢者が自宅や多様な住まいで療養・介護できる環境の整備(医療と介護の連携)」「認知症高齢者の増加を踏まえた認知症対策の推進」など5点を提案。中でも、最初に「介護従事者の人材確保対策」を位置付けた。
介護関係者などで構成する各団体も、介護報酬改定を前に、処遇改善の重要性をアピールした。
全国老人保健施設協会は要望書で、「介護従事者人材確保と処遇改善を確実なものにするための諸施策」として、▽介護の質の向上を目指した有資格者の評価、人員配置上の評価▽介護分野における専門的職種としての介護福祉士の社会的評価の確立、適切な給与の設定▽キャリアアップの取り組みに応じた事業主、事業所団体への支援策―などを求めた。
日本介護福祉士会は、「介護労働がディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)となるよう、適切な介護報酬額が確保されるべき」と訴え、▽キャリア、能力、資格に見合う加算等を含む賃金制度の構築など、介護従事者個人の努力が評価される仕組みの構築▽報酬の改定が確実に介護労働者の処遇の向上につながるような仕組みの検討と、報酬の改定が介護労働者の処遇の向上にどの程度つながったかということを検証する仕組みの検討▽介護報酬の一定割合を人件費と設定し、その分は確実に介護従事者に賃金として支払われることを義務付けることの検討、人件費比率についての情報の公表の義務付け―などを求めた。
日本介護支援専門員協会は、「利用者本位のケアマネジメントが適切に行える件数」で、介護支援専門員が「正職員でケアマネジメントを専従で行うことにより、正当な収入を確保」できるよう対応することを求める決議を採択。具体的には、▽居宅介護支援事業所が安定して自立経営ができるための措置▽介護保険施設における介護支援専門員の位置付けの明確化と処遇改善▽その他、配置が義務付けられている施設・事業所における介護支援専門員の処遇改善―を要望している。
約3か月間の議論を経て、社会保障審議会は12月26日、舛添厚労相に対し09年度介護報酬改定案を答申。介護従事者の人材確保、処遇改善について、「介護従事者の離職率が高く、人材確保が困難である現状を改善し、質の高いサービスを安定的に提供するためには、介護従事者の処遇改善を進めるとともに、経営の効率化への努力を前提としつつ経営の安定化を図ることが必要」として、▽各サービスの機能や特性に応じ、夜勤業務など負担の大きな業務に対して的確に人員を確保する場合に対する評価▽介護従事者の能力に応じた給与を確保するための対応として、介護従事者の専門性等のキャリアに着目した評価▽介護従事者の賃金の地域差への対応として、介護報酬制度における地域差の勘案方法(地域区分ごとの単価設定)等の見直し―などを行うとした。
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