(関連目次)→医療事故安全調査委員会 各学会の反応
(投稿:by 僻地の産科医)
第17回、診療行為に関連したなんたらかんたら検討会o(^-^)o ..。*♡
ここまできて、やっと。
やっとですよ。
モデル事業の詳細な報告話が出てきました(>▽<)!!!
といいますかですね、予算とか、苦労話とか。
普通に、前にやっている事業があれば、
民間企業でもその話ききに行きますよね?
いくらかかるかとか、当たり前の話ですよね?
17回もやってきてですよ。
やっと
「一体の死因究明にいくらかかるのか?」
なんて根源的な話が出てきました ..。*♡
普通の企業では、部下がこんなのろまな仕事してたら、リストラされてますね。
間違いなく。(あ~これだから、厚労省は!っていわれるんですよ~)
↑冗談ですが、私はトヨタコワくないです~。
詳しく知りたい方は、ぜひ「イノセントゲリラ」お読みくださいまし。
海堂先生は私の戦友でもあります(>▽<) ..。*♡
というわけで、あれこれ情報拾ってきました!
ぜひぜひお読みくださいませ!!
死因究明検討会17(1)
ロハス・メディカルブログ 2008年12月01日(←資料に注目!)
http://lohasmedical.jp/blog/2008/12/post_1521.php
死因究明「人材確保」が課題に モデル事業の現状報告
日刊薬業 2008/12/03
厚生労働省の「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」(座長=前田雅英・首都大学東京法科大学院教授)は1日、日本内科学会などが取り組んでいる「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」の現状について、事業に携わる医療関係者から意見を聞いた。参考人らからは、課題として「人材の確保」が挙げられ、医療安全委員会の設置に向けては関係者や関係機関との業務分担などを求める声もあった。
札幌地域のモデル事業代表を務める松本博志・札幌医科大教授は、対象事例が発生した場合、解剖に立ち会う医師を確保することや、評価する際の関係者の日程調整にも腐心していることを訴えた。さらに「病院からの任意提出となっているため、診療録など客観的な資料に基づいた調査が難しい」と指摘し、法制化に向けては人的・物的両面での充実が必要とした。
臨床評価医を務める奥村明之進・大阪大大学院教授は「現状では解剖に携わる医師を大学以外から探すのは非常に難しい」と人材確保が困難になっている現状を指摘。さらに解剖結果の報告書を作成するのに「段ボール2箱分の資料をひっくり返さなければならない場合もある。通常の業務をこなしながらではかなり無理がある」と述べた。さらに、東京地域事務局の調整看護師を務める田浦和歌子氏も「評価結果の報告書案を作成する担当医はとても大変」と現場の負担の大きさを強調。当事者の医療機関と遺族との調整を担う調整看護師の負担も「非常に大きい」と訴えた。
●法制化による件数拡大で「全部できる状況にない」
樋口範雄委員(東京大大学院教授)が「第3次試案に基づいて法制化された場合、調査を拡大できるのか」とただしたのに対し、奥村氏は「全部できるという状況にはないと思う」と述べ、独自の院内事故調査システムを構築できる大病院以外などに絞って実施すべきだと主張した。田浦氏も「現場でも『本当にできるのか』と思っている。医療従事者も少なくなっている中で心配はいつも持っている」と述べた。
死因究明検討会 第三者機関のモデル事業「遺族同意」課題
Risfax【2008年12月2日】
厚生労働省は1日、「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」を開き、診療行為に伴う死因の調査を第三者機関が行う「モデル事業」について関係者からヒアリングした。厚労省の補助事業として、日本内科学会を中心に05年9月から実施している。関係者はモデル事業の課題として、解剖に対する患者の同意率が低いことや評価時間が長い点を挙げた。また、死因究明のコストとして、1件あたり平均94万円かかることも報告した。
モデル事業は、診療行為関連の死亡について、遺族と医療機関の依頼により医師や弁護士といった専門家で構成する第3者機関が死因を究明・分析している。医師法第21条に基づいて警察に届け出た事例は対象にしないなど、厚労省が設立を検討している「医療安全調査委員会」とは異なる点がある。
現在、医療系38学会の協力のもとで、札幌、東京、大阪、福岡といった主要10地域で実施。これまでに82件を受け付け、評価結果の報告書62件を遺族に交付している。モデル事業を説明した虎ノ門病院の山口徹院長は今後の課題として、遺族の約3分の1が解剖に同意しない現状や、評価時間が平均10.5ヵ月かかることを挙げた。解剖を行う病理医、法医、臨床立会医の確保が困難な点などが、評価時間がかかる要因とした。また、評価を担当する医師が事例ごとに異なるため、全国で統一した基準で評価するのが難しいと指摘。このため、評価の視点・判断基準のマニュアルを作成中と説明した。
さらに、モデル事業での評価コストも報告。1事例あたりの評価コストは平均93.9万円で、内訳は評価委員への謝礼が43.6万円、解剖費用が39.3万円、遺体搬送料が4.3万円、その他事務費などが6.7万円とした。
「死因究明モデル事業は、本当に面倒で大変」
モデル事業関係者へのヒアリングで、制度化の困難さが露呈
橋本佳子m3.com編集長)
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/081202_1.html
「話を聞くにつけ、モデル事業では、本当に面倒、大変なことをやっていることが分かる。遺族に感謝されることは大切だが、果たしてこれだけ資源を投入して死因究明を行っていることが、日本の医療全体の改善につながっているのか。またモデル事業を拡大し、制度化することが可能なのか」
12月1日の厚生労働省の「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」の第17回会議の席上、東京大学大学院法学政治学研究科教授の樋口範雄氏は、モデル事業の一定の成果を認めつつも、その制度化の困難さを指摘した。
モデル事業とは、日本内科学会などが中心となり、2005年9月から実施している「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」(同事業のホームページはこちら)。事業名の通り、“医療事故調”の根幹となる死因究明の手法を確立するのが狙い。
1日の会議では、モデル事業の責任者で、本検討会の委員でもある、虎の門病院院長の山口徹氏(『「誤りであった」などの言葉の使用に注意』を参照)のほか、計3人のモデル事業関係者へのヒアリングが行われた。そこから浮かび上がったのは、
(1)遺族の解剖への同意が得られないことなどから、実施件数は当初予定より下回っている
(2)人手と手間、コスト、時間が非常にかかる
(3)死因究明を行い、遺族に説明しても、必ずしも納得が得られるわけではない
(4)モデル事業の主眼は死因究明にあるため、事故の再発防止にはつながっていない
などの問題点だ。
現在の厚労省の“医療事故調”の「第三次試案」は、一定の条件を満たす診療関連死の全例届け出と死因究明を基本とする制度。そもそもPR不足で、モデル事業に対する医療関係者および遺族の理解・協力が得られにくいのが現状だが、樋口氏の指摘はモデル事業を発展させて、“医療事故調”という形で制度化するハードルが高いことを意味する。
山口氏もこれらの問題点をほぼ認めつつ、「大病院では、院内の事故調査委員会を充実させている。すべての事例を第三者機関で調査する必要はなく、まず院内で調査を行い、それを第三者機関がレビューするといったやり方もある」などと提案した。
次回の会議日程は未定だが、12月から1月にかけて、東海北陸、近畿、東北の各厚生局主催で、「第三次試案」および「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」の地域説明会を実施する予定になっている。
以下、樋口氏の発言とそれに対する4人の回答、山口氏によるモデル事業の説明を紹介する。また、事例受付から遺族への説明を一貫して担当する「調整看護師」、換言すれば一番モデル事業の実際をよく知る立場にある、東京地域事務局調整看護師・田浦和歌子氏の発言を別途取り上げる。この日の検討会は、午後4時から、予定時間をややオーバーし、午後6時すぎまで開催された。
「医師・患者の信頼関係構築につながるのか」
樋口氏の発言は、計4人のヒアリング後に行われた。次の3点に要約できる。
(1)遺族に感謝されている、これは医療の一環として重要なことは分かるが、人的資源などを投入してこれだけのことを実施する以上、日本の医療が良くなるなど、プラスアルファの部分、この経験を生かす部分がないといけないのではないか。
(2)フィージビリティー(実行可能性)の問題がある。つまりモデル事業を拡大して制度化 した場合、取り扱う件数が増えるのは確実だが、果たして対応できるのか、それが一番問題。
(3)“医療事故調”の議論が始まった背景には医療不信がある。モデル事業や“医療事故調”により、医療界全体としては不満・不審に応える仕組みになるだろう。しかし、個々の医療機関と患者との関係に落とし込んだ場合に、信頼関係の構築につながるのか。
各者の回答の要点は以下の通り。
◆虎の門病院院長・山口徹氏
遺族から感謝されているのは事実だが、もともとモデル事業の目的の一つに再発防止にある。医療への貢献という意味では、個々の病院へのフィードバックだけではなく、全国の病院に広げる必要があるので、日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業とコラボレーションする必要がある。
当初、モデル事業を開始したときは、死因究明が第一だった。死因究明を行っても、説明不足などで遺族にうまく伝わらないこともあり、遺族がどう受け取るかは別のこと。遺族の話を聞き、その疑問に答え、その点も報告書に盛り込む、注釈を付ける。その後、フォーアップするようにした。メディエーションなど、死因究明を行う組織とは別に、遺族とのやり取りを仲介するような組織は必要だと思う。
しかし、これはモデル事業に含まれる仕事なのか、病院で行うべき仕事なのか、今後の検討課題だろう。モデル事業でやると、膨大の仕事になるので、別の枠組みを作り、協調しながらやっていく形の方がいいのではないか。
またすべての事例を第三者機関が調査しなければならないわけではないだろう。大病院では院内事故調査委員会を持っており、病院に任せられるところは任せ、それを第三者機関がレビューするというやり方もある。院内事故調査委員会が公平性を保ち、それを担保する仕組みを考えれば、全体が効率化でき、十分に対応できるだろう。
◆札幌地域代表(札幌医科大学法医学教授)・松本博志氏
(死因究明の調査の結果は)医学教育などに役立てていきたい。モデル事業では、報告書の概要のみで、全文が明らかになっていないなどの問題はあるが、同僚をレビューすることは医師として重要なこと。
また今後の制度化が可能かということだが、今、モデル事業を実施している背景には医療不信を払拭したいという思いがある。皆、医療者は必死にやっているものの、その中で不幸な事態が起こる。自信を回復して医療をやるためにモデル事業をやっている。今後、第三次試案が実現すれば、一種の「医療側の安心感」につながるのではないかと考える。その意味で、医療側は実現しなければならない。
モデル事業については、もう少し広報する必要がある。その中でいかなる点が問題か、どのようなことが国民の安全につながるのかを考える必要がある。医療の場合には医師と患者の関係がまずある。その信頼を高めるものにすることが大切。
◆臨床評価医(大阪大学大学院医学系研究科呼吸器外科教授)・奥村明之進氏
モデル事業が十分に広報されていない中で、個々の当事者を超えて、社会的なプラスアルファには正直なっていない。今後、このやり方で拡大していく、フィージビリティーについては、人的パワー、時間的問題などを考え、「全部できる」とは、とても言える状況ではない。大病院では独自の調査システムがあるので、それを立ち上げることができない規模の病院などに絞ってやっていくのも一つの考え方。
医療不信の払拭には、モデル事業がそれなりの役割を果たすが、これだけで解決する問題ではない。大阪では評価を終えた14例中13例で遺族が満足しているが、それは評価結果を了解できたという意味であり、半分くらいの遺族からは感謝もされている。しかし、残りは治療中の医師の言葉などが背景にあるので、個々の医師の資質などにさかのぼる問題になる。医学教育にも関係するなど、非常に根が深い問題である。
◆東京地域事務局調整看護師・田浦和歌子氏
「モデル事業を拡大したときにできるのか」という点について回答する。現場でもそのように思っている。例えば、24時間体制が可能なのか、誰が受け付けるのか、果たして24時間体制が必要なのか、という思いもある。また、医療現場に医療従事者が不足している中で、調整看護師として働いてくれる人がいるのか、という疑問もある。「このままやっていけるのか」という心配だけはいつも持っている。ただ別件だが、モデル事業を通してよかったことがある。遺族が評価結果の説明会の際、「これで誰も恨まずに済む」と言い、お礼を述べた遺族がおり、やってよかったと思った。
1例当たり「医師9人が関与」「コストは93.9万円」
山口氏によるモデル事業の概要は以下の通り。
【実績】
・ 2005年9月からスタート、医療系38学会の協力を得て、現在10地域で実施。うち開始したばかりの岡山・宮城以外の8地域で、2008年11月までに82例を受付。62事例については評価結果報告書の交付まで実施。
・ そのほか、相談事例は150事例あったが、遺族の解剖などへの同意が得られない(47事例)ことが、実施に至らなかった一番の理由。
・ 75事例の受付時点で、延べ679人の医師が関与(1事例当たり平均約9人)。
・ 60事例の評価終了時点で、刑事事件となったものはない。2008年11月実施の調査で、回答があった37事例のうち、民事裁判になったのが1事例、今後民事裁判になる可能性があるのが1事例、評価結果説明会以前に示談・和解したのが2事例、説明会後に示談・和解したのが8事例、特段のトラブルがなかったのが25事例。
・ 1例当たりのコストは、平均93.9万円(評価委員への謝礼43.6万円、解剖費用39.3万円、遺体搬送料4.3万円、その他事務費等が6.7万円)。
【主な問題点など】
・ 受付件数が当初予定より下回っているのは、遺族の同意が得られない、現行法規下での実施のため医師法21条に基づく異状死の届け出が必要な事例はモデル事業の対象外、受付が24時間体制になっていない、などが理由。
・ (1)原因究明のために、事例発生時で診療行為が適切であったかを評価、(2)再発防止のために、臨床経過を振り返り、すべての可能性を評価、という2つの視点で実施するが、経験を積んでいない医師が実施するため、評価や報告書記載の方法の統一が難しい。
・ 遺族への対応において、(1)死因究明を第一としたため、遺族の疑問点に答えるものでは必ずしもない、(2)当初予定の3カ月以上の時間がかかり、かえって不信感を募らせた、などの問題があった。
・ 評価結果報告書では、再発防止策についても提言しているが、その後、どのように活用されているのか、フォローアップは十分ではない。
・ モデル事業の参加により、医療機関は患者側との関係が改善していると考えている一方で、患者側は改善していないと考える傾向にあるというアンケート結果があるなど、両者の認識には差がある。
【第三次試案を前提とした場合の課題】
・ 厚労省の第三次試案は解剖を前提としているので、一般国民の解剖への理解を得る取り組みが必要。
・ モデル事業では、医師法21条の異状死に当たる事例は扱わないので、新制度前にモデル的に異状死を取り扱う必要がある。
・ 受付は、夜間や祝祭日も含め、24時間体制にする。
・ モデル事業では医療機関の同意が前提だが、第三次試案では遺族からのみの依頼も受付対象とすることを想定しているので、こうした事例でどの程度、調査を実施するかを判断する仕組みが必要。
・ モデル事業と同様の専門医のボランティア的参加による体制での実施は困難であり、専任医師の配置や予算の確保などが重要。
・ 標準業務マニュアルなどの作成で、評価の効率化・時間の短縮化が必要。
・ 再発防止につなげるために、日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事情との役割分担が重要。
モデル事業の進行役「調整看護師」が苦労を語る
関係者の時間調整が手間
遺族への配慮も常に念頭に
橋本佳子m3.com編集長
http://www.m3.com/tools/IryoIshin/081202_2.html
12月1日の「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」の第17回会議では、「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」の関係者へのヒアリングが実施された。
その中で、同事業の概要と苦労などを現場の視点から語った、東京地域事務局調整看護師・田浦和歌子氏の発言を紹介する。「調整看護師」は、医療機関や遺族などからの調査依頼の受け付けから、調査結果の医療機関・遺族への説明までを一貫して担当する。
◆モデル事業における事例の申請から説明までの苦労
1.地域評価委員会の構成
「地域評価委員会の構成と役割」という表を作成している(解剖執刀医、解剖担当医、第1評価担当医、第2評価担当医、弁護士、調整看護師など、計12の立場の委員の役割を記載した表)。事例ごとに医師が変わり、モデル事業を医師に理解してもらうのに非常に手間がかかる。そのため、委員にはこの表を渡し、評価委員会でもこれを手元に置いて、自分の役割を理解していただくようにしている。
ただ、東京都は解剖施設が輪番制となっているので、解剖執刀医・担当医は理解を示してくれており、感謝している。解剖は、解剖執刀医、解剖担当医、臨床立会医の三者で行う。この臨床立会医は、当該事例の専門医なので、見つけるのが大変。
第1評価担当医は、当該事例の専門医で「評価結果報告書案」を作成する医師。この先生が一番を苦労する。もう少し負担を軽減する工夫はないものか。第2評価担当医は報告書案を加筆・修正する役割。外科系委員、内科系委員は評価委員会に参加して、意見を述べてもらう委員で、「医学的評価のみならず、医療全体の問題を捉えた見地から意見を述べてもらいたい」と依頼している。また病院側弁護士と患者弁護士には、「遺族、国民の目線で意見を述べてほしい」と依頼。委員長は、委員会の司会進行を担う、大変な役割。外科系委員、内科系委員のいずれかから選出。総合調整医は、地域代表の医師。
調整看護師は、総合調整医とともに、モデル事業の過程で生じる様々な業務を円滑に進めるために、遺族も含め関係者の調整を行う。
2.事例の受付から調査結果報告までの流れ
1)受付
電話で第一報を受け付け、依頼元機関に事例の発生日時、病名、遺体の保存場所などを聞くとともに、警察への届け出の有無、モデル事業の資料を読んでいるのかなどを確認。その上で、「事例概要」を書いてもらう。それを地域代表に送り、当該事例を受諾するかどうかを決める。
最初の頃は、なかなか理解できない概要が送られてきた。このため、概要の見本や受諾後の必要事項などを記したものを、依頼元機関にFAXしている。この依頼元機関、地域代表とのやり取りに大変時間がかかる。依頼元機関も、こうした事例が発生するとパニックになっていると思う。その中で、地域事務局から様々な書類の提出を求められ、大変だろうと思う。
地域代表が受諾したら、依頼元機関に準備事項を記した書類をFAXで送る。同時に解剖施設にも連絡する。解剖施設は輪番制なので、第一報が入ったら連絡し、「事例概要」が来たらまた送っているため、すぐに対応してもらえる。
さらに、臨床立会医を地域代表と協力しながら探す。決まったら、「何時に解剖できるか」を調整する。この調整がまた大変で、解剖施設、依頼元施設、遺族、臨床立会医、遺体の搬送車、これらの都合を踏まえ、解剖時間を決める。決めても、「遺体を依頼元施設がちゃんと時間通りに運んできてくれるか、道順を迷わないか、病院に来ても迷わないか」など、すごく不安。葬儀社と地域事務局が直接話すなどして、必ず所定の時間に来てくれるよう調整する。
2)解剖実施
主治医から解剖執刀医に対し、事例概要を基に、カルテなども用いて説明してもらう。調整看護師は、遺族への聞き取り調査を行う。「依頼元機関に不満を持っていないか、どんな疑問を持っているのか、重点的に何を調べてほしいのか」などを聞く。調整看護師はこの時、初めて遺族と会うので、遺族に沿うようにしている。解剖前に、解剖執刀医は遺族と面談するので、その説明も遺族に行う。解剖執刀医は主治医からの説明が終わると、遺族と面談する。解剖は2 - 3時間で終わるが、その前後を入れると5 - 6時間くらいかかる。遺族がリラックスでき、また遺族と依頼元機関が同じ待合室で待つことのないように、などと様々な配慮をする。
解剖が終わったら、解剖執刀医が遺族と依頼元機関の同席の下、解剖の段階で分かったことを説明する。その時、遺族が理解できるように、また遺族が聞きたいことが医師に分かるように調整看護師が司会進行をする。その後、遺族と遺体は帰るわけだが、葬儀社の車は解剖施設に到着後、いったん帰る。このため、「もうそろそろ解剖が終わる」という情報聞くと、葬儀社に電話して、また来てもらう。
これが第一の山で、当日の仕事が終わる。
依頼元機関には、カルテをはじめ様々な書類や院内調査報告書をできるだけ早く送ってもらうようお願いし、帰ってもらう。また解剖執刀医には、「解剖結果報告書案」をできるだけ早く作成するよう依頼する。
3)解剖担当医による解剖結果報告書案提出
「解剖結果報告書案」がまとまるまでの間、地域代表と調整看護師は、学会から評価担当医を推薦してもらう。この医師に内諾が得られたら、モデル事業の概要やこの事例の概要などを送る。
第一評価担当医と評価委員長については、重要な役割なので、調整看護師が勤務先に出向いて、モデル事業や事例などについて説明する。また、委員は全員が電子メール上で共有するようにするので、「メールはできるだけこまめに見てほしい」とのお願いなどもする。
「解剖結果報告書案」ができたら、第一評価担当医に、「評価結果報告書案」の作成を依頼する。カルテをはじめ、「ダンボール1箱、2箱の書類」を送る。第一評価担当医は、これを丹念に全部見て、「評価結果報告書案」をモデル事業の枠組みの中で書く。
「3 - 4週間で書いてほしい」と依頼するが、2カ月程度かかって当たり前。「それはその先生が悪いのではなく、仕組みが悪い」。電話や電子メールで何度も催促する。「あと1週間くらいで書き上がる」という情報を得たら、すぐに第二評価担当医にその旨を伝え、スタンバイしてもらう。第一評価担当医から、資料をお送りしてもらい、それを第二評価担当医に送る。第二評価担当医は加筆修正なので、1 - 2週間で終わる。完成したら、「解剖結果報告書案」や「評価結果報告書案」、第二評価担当医の意見など、評価委員会の参加者全員に送る。
4)第1回評価委員会開催、審議
この報告書案の完成時期を踏まえ、評価委員会開催の準備を行うが、この日程調整が大変。今、次の委員会を開くのであれば、来年1月中旬から、2月にかけての開催になる。
また評価委員会の審議がスムーズに行くように、委員長と地域代表と打ち合わせを行い、論点なども書いてもらう。また当日の評価委員会で質問が出た場合には、依頼元機関に郵便で送り、回答をもらうことなどもしている。
5)解剖結果報告書、評価結果報告書最終版作成
電子メールのやり取り、評価委員会の審議の内容などをすべての結果を踏まえて、第一評価担当医が「評価結果報告書案「を修正する。修正したものを委員全員に送り、了承をもらう。最終的に、「評価結果報告書」、「評価結果報告書概要(公表用)」、「解剖結果報告書」、この3つについて委員の承認を得る。なかなか委員から連絡が来ないので、いらいらする。
6)遺族、医療機関への説明会
説明会の1週間前に、依頼元施設と遺族に、「評価結果報告書」、「評価結果報告書概要(公表用)」、「解剖結果報告書」を送る。質問があれば前もって、送ってもらう。説明会には、委員長、第一評価担当医、地域代表が出席し、第一評価担当医が説明する。遺族が中心とした説明会になるよう、並ぶ順番も遺族と依頼元機関が対面しないように座る順番なども工夫する。
第一評価担当医がすばらしい報告書を作成しても、理解してもらないと意味がないので、ゆっくりと分かりやすい言葉で説明するよう、お願いしている。説明会が終了したら、2週間の期限で、もう一度、質問を受け付ける。それに回答したら、終了する。委員にも、電子メールで、委員会を解散する旨を伝える。
◆医療安全調査委員会の制度化に向けて
・ 再発防止策を講じるために、評価委員会の委員に、システムエラーの専門家の意見を入れてほしい。
・ 医療安全調査委員会の事業の枠組みには、「PDCAサイクル」、つまり計画、実施、検証、改善のサイクルが回るような仕組みを取り入れほしい。
死因究明制度の実現に7つの課題
キャリアブレイン 2008年12月2日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19464.html
「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」について担当者からヒアリングを行った12月1日の「死因究明等の在り方に関する検討会」(座長=前田雅英・首都大学東京法科大学院教授)で、同検討会の委員で同事業の中央事務局長を務める山口徹・虎の門病院院長は、「モデル事業を行っている側から言えば、制度として幾つか課題があるが、十分実現性があるものとして現在行われている」と、モデル事業が一定の成果を上げていることを強調しつつも、死因究明制度の実現に向けて7つの課題を示した。
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3学会からヒアリング―死因究明制度
死因究明をめぐる溝は埋まったのか
モデル事業は厚生労働省の補助事業として日本内科学会が38学会の支援を受けて実施。2005年9月、東京、愛知、大阪、兵庫の4地域で開始した。その後、順次実施地域を拡大し、現在は札幌、宮城、茨城、東京、新潟、愛知、大阪、兵庫、岡山、福岡の10地域で実施している。モデル事業についてのヒアリングは、厚労省による死因究明制度の第一次試案ができた後に開かれた昨年6月27日に続いて2回目。第三次試案の具体化に向けて、モデル事業から新制度へのスムーズな移行ができるかどうかに委員の関心が集まった。
山口氏は、モデル事業の実施によって見えてきた課題として、
▽低い解剖率 ▽対象となる事例の範囲
▽受付体制 ▽遺族からの調査依頼
▽評価を行う医療従事者の確保
▽評価に要する時間 ▽再発防止への提言―の7つを挙げた。
「低い解剖率」に関しては、第三次試案では原則として、遺族の同意を得て解剖が行える事例について、医療安全調査委員会(仮称)が調査を行うこととされている。しかし、山口氏によると、モデル事業では調査依頼があったものの受け付けに至らなかったケースが150件あり、その約3分の1に当たる47件は解剖に「遺族の同意が得られなかった」ことが理由だった。このため、山口氏は、一般国民の解剖への理解を深める取り組みが重要と指摘した。
また、「対象となる事例の範囲」について、第三次試案で提案されている新制度が、医師法21条に基づく警察への届け出が必要となる事案を調査対象としているのに対し、モデル事業では対象外としていることを問題視。新制度の施行前に、医師法21条に基づき警察に届けられた事例の調査もモデル的に行う取り組みが必要ではないか、と提案した。
「評価に要する時間」については、モデル事業では、事例受け付けから患者遺族・医療機関への説明会までを6か月以内に終わらせることを目標としていたが、説明会までに要した時間の平均は10.5か月。このため、山口氏は、診療行為と死亡との因果関係を分析した評価結果報告書を作成する評価委員会の委員のうち、臨床評価医などの負担を軽減することや、事業の事務局の業務手順を効率化する必要性を訴えた。また、同委員会の委員が事業に初めて参加した場合、調査期間が長引く傾向があるため、評価に習熟した委員の育成を計画的に進める必要性を指摘した。
厚労省によると、今回のヒアリングは、取り組み状況の報告にとどまった前回のヒアリングとは異なり、第三次試案の具体化を前提に課題を洗い出すのが狙い。同省では、「前向きに進めていきたい。法案についてもなるべく早く出せるよう準備したい」と話している。
死因究明の平均費用、1件約94万円
キャリアブレイン 2008年12月2日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19453.html
診療行為に関連した死亡の原因を調べるための1件当たりの費用として平均93万9000円掛かることが、厚生労働省の検討会で明らかになった。内訳は、診療行為と死亡との因果関係を分析する「評価委員会」の委員への謝礼として43万6000円、解剖費用が39万3000円などとなっている。
【関連記事】
死因究明モデル事業の成果をヒアリング
3団体からヒアリング―死因究明検討会
3学会からヒアリング―死因究明制度
医療安全調で「地域説明会」を開催―厚労省
医療事故の死因究明、紛争処理など 制度化に向け07年度から検討開始
厚労省はこのほど、「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」(座長=前田雅英・首都大学東京法科大学院教授)の第17回会合を開催し、「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」について、山口徹委員(虎の門病院院長)が現状を報告した。診療関連死のモデル事業は、厚労省の補助事業として日本内科学会が2005年9月から実施しており、山口委員はこの事業の中央事務局長を務めている。
報告によると、これまでに調査・分析を行った事例は11月17日現在で82件、調査依頼があったものの受け付けに至らなかった事例が150件あった。
受け付けた事例のうち、「評価結果報告書」を遺族や医療機関に交付したのが62件、交付しなかったのが1件、現在進行中の案件が19件だった。一方、受け付けに至らなかった150件の理由として最も多かったのは、「遺族の同意が得られなかった」で47件。次いで、「その他」(30件)、「司法解剖または行政解剖となった」(26件)、「医療機関からの依頼がなかった」(同)、「解剖の体制が取れなかった」(11件)などだった。
モデル事業に掛かる費用は1件当たり平均93万9000円で、内訳は「評価委員会」の委員への謝礼として43万6000円、解剖費用39万3000円、遺体搬送料4万3000円、その他の事務的な経費6万7000円となっている。
これら費用の負担について、厚労省の担当者は「医療事故の原因を調べる『医療安全調査委員会』が国の組織として設置された場合には、もちろん国が支出する。ただ、医療機関から届けられたすべての事例について、(解剖して評価結果報告書を交付するような)“フルの調査”をするかどうかは、今後の検討課題だ」と話している。
死因究明モデル事業の成果をヒアリング
キャリアブレイン 2008年12月1日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19438.html
「第17回診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」(座長=前田雅英・首都大学東京法科大学院教授)が12月1日に開かれ、「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」の関係者3人からヒアリングを行った。3人はモデル事業の成果について「遺族らから感謝されることが多い」と述べる一方で、「評価結果報告書の作成までに時間がかかる」「人材確保が難しい」などの問題点も挙げた。
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モデル事業は、厚生労働省の補助事業として日本内科学会が主体となり、東京や大阪など全国10地域で実施されている。
松本博志・札幌医科大法医学教授は、モデル事業を実施して良かった点として、「遺族から『本当にありがとうございました』という言葉を頂いた。今後ともモデル事業を続ける上で、遺族の思いに応えていければ」と述べた。奥村明之進・阪大大学院医学系研究科呼吸器外科教授も、「遺族が感謝してくれることが多い。それまでの医療機関への誤解が解けたといった形で理解していただけたということは、それなりの意義があると感じている」と述べ、「医療安全調査委員会」(仮称)の設置に向けた期待感を示した。
その一方で、問題点として松本氏は、「苦労をしているのは、(解剖の際に)臨床の立会医を確保すること。本業を別に持っている中でやっていくため、解剖が夕方、翌日になり、遺族の思いに時間的なところで少し応えられない」とマンパワー不足を指摘。また、評価基準の標準化について奥村氏は、「個々の例で事故の内容は随分違うし、事故は先進的な外科治療やまだ経験したことのないものに起こってくる可能性が高いわけで、それを標準化というのはあまりなじまない」と述べた。今後、モデル事業を全国に拡大する上での課題について、奥村氏は「評価委員の人材確保と質の確保。現状で何とかするのなら、できるだけ事務作業を軽減してほしい」と述べた。田浦和歌子・東京地域事務局調整看護師は、評価委員にシステムエラーの研究者を加えてほしいと提案。また、「医療安全調の事業の枠組みにPDCAサイクルが回るような仕組みを取り入れてほしい」と語った。
今回の検討会では、医療安全調の設置自体に賛同する意見は共通していたが、現在のモデル事業をそのまま医療安全調に活用することについては、さまざまな課題が浮き彫りになった。
【おまけ】
オーストラリア:医療体制の不備の究明制度
NSW州の病院実態調査報告
日豪プレス 2008/11/28より引用
救急病棟閉鎖など厳しい措置勧告
ニューサウスウェールズ州政府が特別調査委員会を設立し、州内公立病院の医療実態調査を命じていたが、11月27日、その報告書(ガーリング報告)が政府に提出された。
同調査委員会は、2005年11月、バネッサ・アンダーソンさん(16)が、ゴルフ場から飛び出したボールを頭に受け、ロイヤル・ノース・ショア病院 (RNSH)に収容された後、頭蓋骨骨折で死亡した事件で、州検視法廷が、「バネッサさんは、RNSH内の医療体制の不備と、鎮痛剤の誤った投与が原因で呼吸困難に陥った結果死亡した」という判断を下したことで、医療体制の不備を究明するために設立された。報告書に盛り込まれた勧告には次のようなものがある。
*緊急病棟では、30分以内に処置が必要な患者だけを治療する。
*その他の外来患者はすべて初期治療センターに送る。センターは連邦政府の出資で全病院に設ける。
*マンリー病院、ライド病院など8病院の緊急病棟を閉鎖する。
*新生児・児童の急病処置はNSW Kidsを新設し、ここで扱う。
*新卒医師の監督を改善する。
*病室往診ではできる限り、臨床薬剤師を同行させる。
*退院患者の往診は午前10時までに済ませる。
*新卒医師には、義務として農村部での訓練勤務を課する。
*保健情報局を設立し、患者治療の安全と質に関するデータの報告を担当させる、など。 (AAP)
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NSW州の病院実態調査報告
日豪プレス 2008/11/28より引用
http://www.25today.com/news/2008/11/nsw_227.php
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