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(投稿:by 僻地の産科医)
MMJ2008年10月号からo(^-^)o ..。*♡
アメリカでも看護師不足なのですねo(^-^)o ..。*♡
日本の医師不足・看護職不足に対する政策などでも、
もっと現場の声を吸い上げ、参考にしていけばいいのに
といつも思っています。
看護師不足:横断的な組織連携で乗り切る米国
(MMJ October 2008 VOI.4 N0.10 p820-822)
米国内では今後、看護師の需要が増加すると予測されているが、看護職の労働人口を増やすうえで最大の障害となっているのが看護学校だという。そこで、米国内で強い影響力をもつ2つの非営利団体(NPO)「American Association of Retired Persons[AARP;全米退職者協会])」と「Robert Wood Johnson財団(RWJF)」が連合し米国労働省(DOL)などの連邦組織や州当局と合同で今年6月にサミットを開催した。
JAMA(2008 ; 300 : 887~888)によると、同会議では、看護学校のかかえる障害をいかに取り除き、入学者の枠を拡大して今後のニーズに備える方法について議論が交わされた。全米から選ばれた18州の代表も参加し、看護師教育課程の卒業者教を増やすのに参考となる模範例を共有化するとともに、今後の計画が立案された。上記の3組織は共同で、この目標達成に向けて特に各地域で効果が期待される対策を中心に白書を発表した(http://www.championnursing.org/uploads/NursingEducationCapacityWhitePaper20080618.pdf)。
今回のサミットおよび白書の作成は、AARPとRWJFが取り組む活動の一環で、今後さらに状況の悪化が予想される看護師不足問題に対し解決を迫られている州に、専門的支援や組織的な支援活動も提供している。米国健康資源・サービス局(HRSA)によると、看護師不足は今後12年間で100万人以上になると予測されている。
看護師の需給
看護師の需要が高まっている背景には、高齢者人口の増加、看護職労働人口の高齢化、そして医療の質に看護師の果たす役割の大きさが認識されてきたことなど、さまざまな要因が考えられる。比較的給与が高く、長期雇用率が高いこと、将来需要の増大が見込まれることから、看護専門職に対する関心が高まっている。
しかし、米国の看護学校では教員や施設が不足し、助成金も限られている。卒業者に紹介できる医療施設も非常に少ないという問題対応にも追われているため、将来の看護師需要を見込みつつも、なかなか入学者の枠を広げられない状況にある(Kuehn BM.JAMA 2007; 298: 1623~1625)。実際、2006~07年に看護学校へ入学を希望した資格のある応募者のうち42,000人以上が入学を拒否されている。
「看護職を目指す人が増えてきた今こそ、その門戸を開く必要がある」とAARP公共政策研究所のSusan Reinhard所長は言う。
看護教育課程の修了者を増やし、看護職の定着を促進する目的で、AARPとRWJFは2007年に合同事業として「Center to Champion Nursing in America(CCNA)」を発足させた。同センターは現在AARPが運営しており、会員数は3㈲O万人を超え、政府機関への陳情など、かなり大きなロビー活動を展開することが可能だ。RWJFは1000万ドルをCCNAに資金援助を提供しており、同財団のスタッフが保健医療制度の改革など、専門的な知識・経験に関して支援することになっている。今年開催されたサミットは、CCNAによる最初の対外的な活動である。
DOL雇用訓練局(Employment and Training Administration;ETA)労働人□計画室のGay Gilbertによると、当局もブッシユ大統領が提言したHigh Growth Training Initiative(成長分野において専門的訓練を受けた労働人口を増やすために、地域の人材養成機関、大学などの教育機関、その他の関係機関に資金援助するプログラム)にのっとり、看護職の労働人口不足の問題解決に取り組んでいるという。これらの助成金の約半分は医療訓練プログラムに与えられている。
看護専門家で、RWJF人材チーム(Human Capital Team)プログラム責任者でもあるSusan Hassmmerによると、今回のサミットには49の州から多分野の看護職グループが参加に応募し、最終的に18州が選ばれたという。
サミットでは、若グループが看護教育の受け入れ能力の問題について現状ならびに現在実施している対策の情報を交換し、各州で問題の解決に必要な計画作りに取りかかった。
今後12ヵ月間にわたり、CCNAはこの18グループに専門的な支援を提供していく。例えば、AARPのスタッフ加州や全国レベルでのロビー活動に協力し、看護教育プログラムの財源確保を図るといった展開が考えられる、とReinhardは述べている。DOLも同様な支援を各グループに行う。同省では各種産業分野の労働人口に関して戦略作りに必要な教育資材などを提供している(http://workforce3one.org/)。 CCNAは今後毎月、ウェブ放送を通じて参加している州(代表グループ)に専門的な支援を提供する予定だ。
多面的アプローチ
今回発表された白書のなかで、CCNAとDOLは「看護学校がかかえる障害を緩和するためには多面的な方策が必要だ」と提言し、重要項目をいくつかあげている。主な対策としては、商工会議所などの法人と戦略的提携関係を構築する、これらの提携先の資産を活用する、看護学生の受け入れ能力を増大させ、多彩な教員を登用する、看護教育システムを再構築する、教育プログラムに政府や資格認定機関を参画させること――などだ。
これらの要点を取り入れたプログラムの一例として、オレゴン州の看護教育コンソーシアム「Oregon Consortium on Nursing Education」を白書は紹介している。このコンソーシアムは2006年にオレゴン保健科学大学(OHSU)看護学部とオレゴン州にある8つのコミュニティーカレッジが設立した組織で、その成果として4年制の共通カリキュラムが作られた。
学習課程の多くはオンラインでも単位を取得でき、コースを修了すると看復学の学士号が授与される。直接OHSUへの入学を認められる学生もいるが、他の学生は通常、OHSUと他のコミュニティーカレッジ1校の両方に籍を待ち、最初の教育課程をコミュニティーカレッジで修了した後、最後の1年間をOHSUで修了する。
教育課程を共有化することのメリットは、教員が複数の学校で授業を行えるようになり、教員間で共有可能な教育用資料のオンラインデータベースも構築できるようになる。最初の臨床実習は、ナーシングホームやホームレス保護施設を含む、さまざまな施設で実施される。さらに高度な看護の臨床実習は、同プログラムで特別な訓練を受けた専門看護師(practicing nurse)の監督下で実施される。
HassmiHerによると、CCNAは、プロジェクトに参加している州同士がそれぞれプログラムを作るときに得た知識・経験を共有化できるように、オンラインフォーラム(掲示板)やチャットルームの準備も進めている。また、今回サミット参加に応募したが選ばれなかった州にも何らかの形で参加できる方法を模索しており、その1つとして、一部のウェブ放送をすべての州に公開する計画もあるという。それ以外にサミットに参加した州が近隣の州をも指導できないか、その可能性も検討されている。
看護師の定着率向上
CCNAは、看護教育の拡充に取り組んでいる州への支援だけでなく、看護師の定着率を向上させるための病院や医療関係の組織、プロジェクトの理事会・役員会メンバーなどに対しても、看護師の枠を増やしていくよう働きかけることを目標に掲げている。
看護師の大多数は現役として医療の現場で活躍している、とReinhardは言う。事実、HRSAが実施した調査によると、2007年には正看護師のうち83.2%が医療施設に就労していた。しかし、看護師が専門職をやめる理由を把握し、労働条件・環境などを改善すれば、いまより多くの看護師人口を確保し、離職率の高い職場での定着を促すのに役立つ可能性があるという。
「新卒看護師の多くは病院に勤務するが、離職率が高い」とReinhardは問題を指摘する。「過酷な労働で“燃え尽き症状"を感じたり、孤独感を訴える看護師は少なくない」と彼女は話す。「仕事の内容や職場の環境を改善し、看護師の定着につながる方法を見つけたいと考えている」
年齢が比較的高く、熟練した看護師をとどめておくことも重要課題の1つだ、とReinhardは述べている。職場の照明を改善する、病棟内の回診回数を減らす、患者の体位変換や重い器具・機材の挙上など身体的負担の大きい仕事に就かせない、といった工夫を図れば、年齢の高い看護師の離職を防げる可能性もある、と彼女は示唆する。医療機関の理事会(役員会)に看護師の枠を設けることも、看護職の問題を拾い上げ、改善策を講じるなどして定着率を向上させることにもつながると期待されている。
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