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(投稿:by 僻地の産科医)
「第35回 日本産婦人科医会学術集会」
抄録が、かなり面白かったので
あげさせていただきます!
まず今回はワークショップ2の
「妊娠中の急性腹症」から、
妊娠と腸閉塞について2本です(>▽<)!!!!
イレウス
―妊娠と腸閉塞について―
山梨大学産婦人科講師
奥田 靖彦
(第35回 日本産婦人科医会学術集会抄録 p54-55)
<抄録>
腸閉塞は妊娠中の急性腹症の原因として、急性虫垂炎および急性胆嚢炎に次いで多く見られる疾患である。以下、妊娠中の腸閉塞について概要および留意点について述べる。
[頻 度]
妊娠および産褥期に発症する腸閉塞の頻度は1,500~16,000分娩に1例程度と推定され、近年増加傾向にある。増加の原因は、妊娠する以前の開腹手術に伴う腹腔内の癒着が増加しているためと考えられる。
[原 因]
妊娠中の腸閉塞の原因は、全体の60~70%が腹腔内の癒着であり、次いで腸捻転が25%、腸重責が5%とされる。腸捻転は非妊時の腸閉塞の原因(3%)に対して妊娠特に多くみられることが特徴的である。
[発症時期]
妊娠後期が45%と最も多く、妊娠中期27%、産褥期21%と続き、妊娠初期は7%である。妊娠中期から後期は増大した子宮が骨盤から腹腔内に占拠するため癒着した腸管を圧迫して腸閉塞を発症し、産褥期は子宮の大きさが急速に変化するために発症すると推定されている。
[症 状]
典型的な症状は、周期的な腹痛(4~5分毎)、便秘、嘔吐である。
[診 断]
腹部単純X腺にて、鏡面像や異常に拡張した腸管像が特徴的である。しかし腸閉塞症例の約20%は鏡面像を呈しないことに留意し、特徴的な画像所見が得られないものの腸閉塞が疑われる際は経口的な造影剤の使用も考慮する。超音波断層法では拡張した腸管像を認め、血液検査では白血球数の増加、電解質異常を呈する。
[治 療]
非妊時と同様に補液、胃管による減圧、抗生物質の投与が基本であるが、入院後4日以上経過して手術した症例の予後が不良のため、保存的治療にて軽快しない場合は手術を考慮する。
[予 後]
母体死亡は感染症やショックなどから5%程度、児の死亡は母体のショックや低酸素血症のため20~25%程度とされている。
[結 語]
妊娠中の腸閉塞は、胎児への影響を考慮するあまり診断が遅れることにより、母児共に予後不良となり得る重要な疾患である。妊娠中の腸閉塞は積極的に診断および治療を施行し、軽快なければ児娩出を含んだ手術療法が肝要である。
イレウス
信州大学医学部保健学科教授
金井 誠
(第35回 日本産婦人科医会学術集会抄録 p52-53)
<抄録>
妊婦におけるイレウスの発生頻度は、2,500~3,500妊娠に1人程度とされ、原因としては既往手術の癒着によるものが最多で、次いで腸捻転、腸重積と報告されている。妊娠中は腸捻転の比率が非妊婦よりもはるかに高いことが特徴的で、当院でも最近4年間に搬送されたイレウス合併妊婦7例の内訳は、既往手術の癒着4例、軸捻転2例、子宮筋腫の変性に伴う炎症性の癒着1例であった。癒着が原因と考えた5例中4例は開腹手術を施行したが、軸捻転の2例は内視鏡的整復に成功した。イレウスは、器質的病変による機械的イレウスと、器質的病変を認めない機能的イレウスに分類されるが、臨床的には絞扼性イレウスに代表される複雑性イレウスか否かが重要となる。単純性イレウスでは、周期的な疝痛・腹鳴を伴う腹痛が典型的で、炎症直後の血液検査では異常所見を認めないことが多く、絞扼性イレウスでは、急激で持続的な腹痛が特徴で、血液検査でも白血球数・LDH ・ CPK ・ 血清アミラーゼなどの高値を認めることが多い。
また、単純性でも複雑性でも、脱水を呈するとヘモグロビン値の増加率電解質バランスの異常を認める。嘔吐の反復はHClを喪失させ低クロール性アルカロージスをきたす。複雑性イレウス、腹膜炎症状を呈する場合、保存的治療にて数日間以上改善しない場合などは、早急に手術を行うことが重要である。
また、軸捻転ではまず内視鏡的整復を試みることが重要である。妊婦では妊娠随伴症状との思い込みや、検査や治療による胎児への影響を考慮しすぎることなどから、診断や対応が遅れる傾向があり、母体や胎児が予後不良となりやすいことを知っておくべきであろう。1週間の保存的治療で軽失せずに搬送され、当院で開腹手術となった1例は妊娠25週で消化管穿孔をきたしていたが、肺野条件のCT画像でfree air を発見して緊急手術を施行している。 CTやMRIは、妊娠中のイレウスの診断と病態把握には非常に有用であり、検査をためらわない方がよいと考える。
エコーを使って診断して欲しいですね.
CT,MRもいいですけど,絞扼性イレウスであればエコーで迅速確実に診断できます.軸捻転は腹単でしょうね.
癒着性イレウスと絞扼性イレウスは血流障害の有無でまるで異なりますが,臨床ではなかなかむずかしいところがあります.ドップラーエコーで腸管の血流を確認するのも有効です.
投稿情報: もちぽん | 2008年10 月22日 (水) 18:05
エコーでの診断もいいけど、撮影できるならばCTがベストでしょう。
エコーでは見落とす箇所がかならずあるし。
あとは、血ガスも参照するべきと思います。
投稿情報: 放射線科 | 2012年8 月19日 (日) 18:59