(関連目次)→医療事故安全調査委員会 各学会の反応
(投稿:by 僻地の産科医)
週刊医学界新聞に記事が出ていましたのでo(^-^)o ..。*♡
日本医事新報の記事と併せてどうぞ!
再度慎重に議論する場が必要か
「診療関連死の死因究明制度創設に係る公開討論会」開催
週刊医学界新聞 第2795号 2008年9月1日
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02795_05
「診療関連死の死因究明制度創設に係る公開討論会」(総合司会=高久史麿氏・日本医学会,司会=門田守人氏/山口徹氏・同臨床部会運営委員会)が7月28日,日本医師会館(東京都文京区)にて開催された。本制度については各学会より意見が出されているが,学会の垣根を越えた議論は今回が初めて。
永井良三氏(日本内科学会)は,医療事故調査委員会の役割として,“原因究明と再発予防”“医療の透明性の確保”などを挙げた。また先日,厚労省より出された「大綱案」について,厚労省,法務省,警察庁間の合意の明確化や,警察への届け出の範囲などの課題について,継続して議論すべきと述べた。
髙本眞一氏(日本外科学会)は,医療者自身が透明性,公正性を確保しながら調査し,再発防止に努めることが重要だと主張。また,9地域で行われている「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」の成果を紹介し,今後は自律的組織の創設実現のために,医療者が団結すべきと強調した。
堤晴彦氏(日本救急医学会)は,医療の安全性の向上のために公正性・透明性が確保された仕組みは必要だとしながらも,医療者にとって理解できない刑事訴追・書類送検が存在することを指摘。法曹界と医療界が同じ土俵で議論すべきだと主張した。
並木昭義氏(日本麻酔科学会)は,「原因究明と再発防止のために中立的な第三者機関を設ける」という趣旨については賛同の意を表明したが,WHOの医療安全に関するガイドラインとの違いなどの問題点を指摘し,不明瞭な部分を残したまま運用が始まれば,萎縮医療につながるとの危惧を示した。
木下勝之氏(日本医師会)は,近年の警察への医療事故届出件数と立件送致件数の増加を指摘。日常診療行為における死亡事故に業務上過失致死罪が適用されるなどの刑事訴追をなくすために,医師法21条を改正し,医療者を中心とした,中立的な医療安全調査委員会の設立の必要性を訴えた。
西澤寛俊氏(全日本病院協会)は,「大綱案」において,“説明責任と被害者補償”と“再発防止”が混在していることを指摘。結果的に両方とも達成できないのではないかとの危惧を示し,先進国に学びながら,医療者が主体となって議論をやり直すべきだと主張した。
休憩をはさんで行われた総合討論では,日本産科婦人科学会,日本脳神経外科学会など6学会から意見が出された。会場からも,「現場で踏みとどまって勤務している医師に,負の遺産を残さないでほしい」「日々氷の上を歩くような気持ちで診療している。早く成立させてほしい」など,賛否両論の意見が噴出したかたちで議論を終えた。
○死因究明制度
捜査機関への通知範囲で明確化求める声
日本医学会が公開討論会
(日本医事新報 N0.4397(2008年8月2日)p14-15)
日本医学会(高久史麿会長)は7月28日、日医会館で「診療関連死の死因究明制度創設に係る公開討論会」を開いた。医療安全調査委員会を設置する必要があることで演者の意見は一致したものの、第三次試案で「標準的な医療から著しく逸脱した医療」は捜査機関への通知の対象とされていることに「範囲が不明確」と戸惑いが示された。また、フロアから「現場の医師との議論が足りない」などの批判も噴出した。
高久会長は討論会の冒頭、「日本医学会は、死因究明で第三者の機関を作ることで声明を出したが、各学会や関係団体から『細かい注文も聴くべきではないか』ということでこの会を開いた」と開催趣旨を説明した。
討論会の前半は日本内科学会、日本外科学会、日本救急医学会、日本麻酔科学会、日本医師会、全日本病院協会の6団体の代表が意見を表明。
各団体とも医療安全調査委員会の必要性を指摘。しかし、捜査機関への通知の対象となる「標準的な医療から著しく逸脱した医療」の範囲について、救急医学会は「範囲が明確でない」と不満を表明。他の演者からも、範囲の明確化を求める声が相次いだ。
後半の総合討論会では、日本産科婦人科学会など6団体(別掲)の意見表明に引き続き、前半で意見を述べた6団体の代表が登壇。
「医師法21条」と「刑事訴追の免責制」を中心に活発な議論が行われた。
「刑事訴追の対象の明確化で改善する」
医師法21条について救急医学会の堤 晴彦氏は、「21条の問題は、届け出ると刑事訴追になると恐れて問題にされているが、重要なのは何が刑事訴追されるかだ」と述べ、現行法のままでも医療のどの部分が業務上過失致死傷罪になるのかを明記するだけでかなり改善する―と指摘。
「現状は警察・検察が医学的判断の前に、まず自分たちで法的判断を決めてから動くというのが問題」と強調した。
また、堤氏は極端な話と断った上で、「異状死を警察にどんどん届ければいい。そうすれば警察はパンクし、警察は自分たちで組織をなんとかしなければならない方向に動かざるを得なくなる。そこまで持ち込んで、警察が動き始めたらこちらがそれに乗ればいい」との考えを披露し、会場からは大きな拍手が起こった。
しかし内科学会の永井良三氏は、「的外れな鑑定書が出てしまったとき検察はそれを基に動いてしまう。それを防ぐためには警察を介さない方がよい」と述べ、医療界主導で行うべきとの立場を示した。
「医療者で処分制度を作る必要がある」
この問題に関連してフロアから、「日本の医療界に欠けているのは職能団体としての自律作用がないこと。そのために患者や国民から信頼を失っている」との意見が出された。
高久氏もこの意見に賛同し、「医療者の集団として処分制度は作っていく必要がある。近い将来、検討をスタートしなければならない」との考えを示した。
「院内事故調のように免責のシステムを」
「免責制」について日本脳神経外科学会の嘉山孝正氏は院内の事故調査委員会を例に挙げ、「個人(の責任)を問わないで調査すれば患者が知りたい情報が出てくる。免責と同じシステムでやっているからだ。刑事処分に通じるような調査委員会では、どんな性善説に立ってもきちんとした調査はできず、患者のためにならない」と指摘した。
院内事故調については済生会宇都宮病院長の中澤堅次氏もフロアから、「院内調査の結果をそのまま患者にぶつけるとほとんどの場合理解してもらえる。さらに自分たちの問題点をはっきりさせる一番いい方法」と院内事故調の意義を強調。院内事故調との関係が明確でない第三次試案の調査委員会に疑問を投げかけた。
その上で、「事故が起きたとき問題になるのは患者と病院あるいは主治医の関係」だとし、第三者の委員会が調査を行うのではなく、院内事故調の結果に学会が助言する方法がよいとの考えを示した。
西澤氏、「現場の医師との議論が足りない」
このほか、全体的な意見としては、済生会栗橋病院副院長の本田 宏氏がフロアから、医学会が刑事訴追の可能性がある第三次試案に賛成していることについて、「若い人にこれで急性期病院で働けというのか。
捕まらない立場の人がこういうことを決めるのはやめてほしい。若い人が働かなくなったら代わりに救急医療をやってくれるのか」と強く批判。
本田氏の発言を受けて全日病の西洋寛俊氏は、「現場の医師との議論が足りないのではないか。一番困っているのは現場で救急・急性期医療を担っている勤務医。その声を一番大事にしなくてはならない」と述べ、もう一度議論をやり直すべきとの考えを示し、会場から拍手喝采を浴びた。
郡市医師会まで話が来ていない
第三次試案については、日医が都道府県医を対象にアンケートを実施し、約8割が賛成だったと集計している。
これについて長崎県の諌早医師会が、「アンケートに答えたのは(都道府県医の)常任理事の一部だけ。郡市医師会にまで話は来ていない」と不満を表明。「我々開業医の意見さえ日医は取り上げない」と強く批判した。
この意見に対し日医の木下勝之常任理事が、「何か起こったときに刑事訴追という不本意な結果にならないように一歩進めるという視点でやっている。議論がまとまらないと、この状態が続いてしまう。抽象論でなく具体的な質問をいただきたい」と切り返す一幕もあった。
>捕まらない立場の人がこういうことを決めるのはやめてほしい。
本田先生ぐらいですよね、こういうことちゃんと言ってくれる人って。本当にその通りだと思います。一次・二次救急医療のかなりの部分は医師の使命感(ただのお人好しの世間知らずの馬鹿)で成立していると思います。
投稿情報: げ〜げ〜 | 2008年9 月 5日 (金) 18:36