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(投稿:by 僻地の産科医)
すみません(>▽<)!!!!
今日は子供の運動会でニュースお休みです!
こちらをお楽しみくださいませ ..。*♡
地域で求められているのはどんな医療機関なのか
城西大経営学部准教授
伊関友伸(いせき・ともとし)
キャリアブレイン 2008年9月26日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/18416.html
元埼玉県庁職員で、自治体病院に勤務した経験を持つ伊関友伸さんは、自治体病院の経営問題に関して積極的な発言を続けている。「夕張問題」では市総合病院の病院経営アドバイザーなども務めた。感情論ではなく、熱い情熱と冷静な目で原因を掘り下げ、解決策を示す伊関さんに、地域医療の復活・再生へ向けた処方せんを聞いた。(吉澤 理)
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―この数年、自治体病院で次々に危機が表面化しています。なぜ自治体病院は危機に陥るのかをお聞かせください。
千葉県の銚子市立総合病院が9月いっぱいで閉鎖されるなど、自治体病院の危機的状況は今も続いています。この原因は2つあると考えています。一つは、病院の財政危機。もう一つが医師不足です。
一つ目の財政について言えば、国の診療報酬抑制政策が、経営能力の一番弱い自治体病院を直撃している、ということだと思います。病院の運営の仕方が「お役所流」で、人件費が比較的高めであり、診療材料費なども硬直的な購入制度などで割高になっています。
一般会計からの繰入金がありますが、自治体本体の財政も厳しく、支出には限界があります。資金の余裕はどんどんなくなっており、余裕がないことで、医療の質の維持のための再投資ができなくなる。再投資ができないから、競争に負ける。さらには現金を使い果たして一時借入金で借金生活。一度借金生活に入ると、どんどん借金が積み上がっていくことになります。北海道の夕張市総合病院では39億円の借り入れを抱えていました。
借り入れも、企業債は地方交付税の裏付けもあるし、毎年の返済額が明確ですから、住宅ローンのようなものです。ところが、一時借入金は金融機関からいつ「一括で返せ」と言われてもおかしくない、ある意味消費者金融に近い性格です。ジリ貧になっていると返す余裕はなく、積み上がった一時借入金が、突然の病院の「死」を招くことになるのです。
―病院の経営が「お役所流」とは具体的にどういうことなのでしょう。
病院の事務は2-3年で転勤していきます。前職が、土木課や教育委員会にいましたという人がざらです。こういう人たちは病院経営や医療について素人です。人員の採用や異動についても、枠がきっちり決められており、自由にできません。自治体本体の人事担当課の了解がなかなか得られないのです。予算も財政担当課に握られていて、なかなか付きません。
例えば、診療報酬の改定について、民間病院であれば、報酬改定の議論が盛んな半年くらい前から結果を予測していて、決定後すぐに対応しますが、自治体病院だと発表されてから初めて気付きます。でも、そのまま先送りして4月になったら異動で新しく職員が変わり、そこで一から勉強し始めて次の年の予算要求をし、翌年に1年遅れで対応する。まあ、1年で対応できるならいい方なんです。こんなことでは加算なんて取れるわけがありません。
―もう一つの医師不足は、自治体病院ならではの理由があるのでしょうか。
医療が高度化・専門化し、医師は症例数や研修機能の充実度で病院を選ぶようになりました。これらの面で、自治体病院は熱心ではありませんでした。例えば、夕張市総合病院の場合、入院患者の95%が65歳以上の高齢者でした。福祉の体制が不十分なため、社会的な入院を受け入れざるを得ない、という事情もあったようですが、これでは専門医志向の医師は、病院に勤務したいとは思いません。
さらに2004年の新医師臨床研修制度のスタートにより、大学医局による派遣医師の引き揚げが、自治体病院で起こりました。医師が次々引き揚げられることにより、地域医療で頑張ろうと残った医師たちの負担がますます大きくなります。過重労働になり、激務に耐えられなくなった医師が退職、中には診療科の医師全員が退職するという病院も少なくありません。
―地域の住民や議員さんたちの問題も指摘されていましたよね。
地域住民や議員にも、医師不足の原因の一端はあると考えています。公の病院ということで、好き勝手に振る舞う。軽症でも休日・夜間に受診するコンビニ救急がとても多いし、タクシー代わりに救急車を使う人もいます。飲酒して受診し、現場でトラブルになる事例も少なくないようです。
こうした状況に対し、事なかれの行政は何も言えません。議員は、住民の代表として、住民に節度ある受診を訴えるべき立場にありますが、逆に特別扱いを要求したり、よく勉強をせず思い込みで「病院たたき」をする例も少なくありません。その結果、志のある医師ほど心が折れ、病院から立ち去ってしまう。そうした結果が、「医療崩壊」なんです。
―今後の地域医療の在り方について、どのように考えていらっしゃいますか。
わたしは、地域医療は危機的な状況にありますが、逆に地域医療の再生を通じて、地域の民主主義の再生、地域の再生につながる可能性を感じています。地域医療の在り方を「人任せ」にしていれば、地域医療の危機は解決できません。住民を含めたすべての人が、自分に何ができるかを考え、行動をすることが必要です。
民主主義は、一人ひとりの人の意思の集まりによって意思を決定するという政治の制度です。しかし、民主主義を単なる多数決ととらえ、構成員が自分のことだけを追求して意思決定をする場合、衆愚政治に堕することになります。民主主義が機能するためには、意思決定の前提として、多様な意見を持つ社会の構成員が、お互いに譲り合いも含めて理性的な議論を行うことが必要です。
とはいえ、それはとても難しいことです。特に、医療という問題は、住民にとって個人のエゴが最も出やすく、意見も対立しやすい問題です。しかし、意見の違いを乗り越えて、相手の立場を考えて議論ができなければ、医師不足の問題は解決しません。
―具体的な提案はありますか。
ある程度の医療機能の集約化は必要だろうと思います。地方の病院を回れば回るほど、その思いは強くなります。例えば外科の先生1人だけの病院で手術をする、というのは無理でしょう。最低でも4-5人の外科の先生の人数がいて麻酔科の先生がいて、という形で手術ができるような体制が必要だと思います。ある程度、医師の方々に中核病院に集まっていただくなど、医療機能の集約化と分化は必要です。ただしこれは、現場の意見を聞かずに一方的に進めると、かえって医療崩壊を招く危険性があるので注意が必要です。
医師不足が現に生じていて、できる範囲の医療、「あれもこれも」ではなく「あれかこれか」に絞っていかなければ立ち行かないのに、国民全体がそのことを理解していません。その地域でどんな医療機関が求められているかを絞り込んでいかなければならないと思います。医療が進化していく中で、地域に合った、そして医療機関に合った医療提供の在り方というのがあると考えます。
医療崩壊の危機にある自治体病院を見ると、入院患者のほとんどが高齢者で、社会的入院を受け入れているようなところが数多くあります。これは、地域の福祉が充実しておらず、受け入れざるを得ないという面があります。医師、看護師不足の時代からすると、医療機関に併設して老人保健施設を充実させるなど、福祉で対応できる部分は福祉でやるということが大切とも考えます。
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