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(投稿:by 僻地の産科医)
妊婦のリンゴ摂取で児の喘息リスクが低減
メディカルトリビューン 2008年2月28日(VOL.41 NO.9) p.77
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〔オランダ・ユトレヒト〕ユトレヒト大学(ユトレヒト)環境疫学部門のSaskia M. Willers氏らは「出生後の児の喘息発症リスクを最小限に抑えるため,妊婦はリンゴを摂取すべきである」と Thorax(2007; 62; 773-779)で報告した。リンゴ以外の食べものは喘息リスクに影響を与えないが,湿疹に関しては食物の影響が見られ,魚の摂取が予防に有用であるという。
同氏らは1,253人の女性を対象に,妊娠中から出産後の最長 5 年後にわたり自身の食事と子供の症状について質問票に回答してもらい,食物と呼吸器疾患とアレルギーとの相関を調べた。その結果,妊娠中のリンゴ摂取のみが子供の喘鳴や喘息と相関していた。その他のアトピー性疾患では,母親が魚を摂取した場合にのみ予防効果が認められ,妊婦の魚類摂取が子供の湿疹予防につながるとのデータが得られた。
また,インペリアルカレッジ心肺研究所(ロンドン)のB. J. Okoko氏は「子供自身が果物を摂取することによる喘息リスクへの影響を調べたところ,バナナあるいはリンゴの摂取と喘鳴との間にオッズ比0.53〜0.74の負の相関が認められたが,最終的な喘息発症率に対する影響は認められなかった」と European Respiratory Journal(2007; 29; 1161-1168)で報告している。
生後早期の魚食が乳児の湿疹リスク減少に関連
MTpro 記事 2008年9月25日掲載
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約5,000人の乳幼児を対象としたスウェーデンの出生コホート研究で,1歳までの早期に魚を摂食していた場合,湿疹のリスクが約25%減少することが明らかになった。グーテンバーグ大学小児科のBernt Alm氏らが9月25日のArch Dis Child オンライン版に報告した。
魚食と鳥の飼育がリスク減少の独立した因子・・・母乳の効果は確認できず
スウェーデン西部の都市,グーテンバーグで2003年に出生した1万6,682人の乳児の半数に当たる8,176人をランダムに抽出し,調査への同意ならびに最終的に回答が得られた家族に対し,乳児の湿疹とその関連因子を調査した。解析対象となった乳児は4,921人。 それによると,生後6か月までには13%が,1歳に達するまでに20.9%の乳児が湿疹にかかっていたとの回答が得られた。罹患時期(中央値)は生後4か月であった。罹患因子について多変量解析を行ったところ,兄弟,母親の湿疹の既往が独立した危険因子であることが示された〔各オッズ比,1.87(95%CI 1.50~2.33),1.4(95%CI 1.30~1.84)〕。
一方,生後9か月までに魚を摂取していた場合のオッズ比は0.76(95%CI 0.62~0.94)と湿疹のリスクが減少していた。鳥を飼っていた場合も同様にリスクの減少が見られた〔オッズ比0.35(95%CI 0.17~0.75)〕。母乳哺育,牛乳・卵の摂取時期,イヌなど毛の多いペットの飼育との関連は認められなかった。
乳幼児期の湿疹など,アレルギー性疾患と離乳期の食事との関連についてはさまざまな研究が行われているが,未解明の点はまだまだ多い。魚食とアレルギー性疾患の関連については,生後1年の間に魚を定期的に食べていた乳児では4歳までの湿疹リスクが減るという報告があるほか(Allergy 2006; 61: 1009-1015),メカニズムとしては,ω3脂肪酸の関与も指摘されているようだ。
なお,今回の調査における魚食の状況については,週に1~3回の摂取が全回答(4,953件)中2,995件(60.5%)と最も多く,次いで月に1~3回(1,296件,26.2%)であった。また,おもに取られていた魚の種類は,脂身の少ないタラ類の魚が全回答(4,473件)のうち,3,516件(78.6%)と過半数を占めていた。同解析からは脂身の多寡など,魚の種類による影響は確認できなかったとのことだが,Alm氏らは「ω3脂肪酸だけが魚食によるアレルギー性疾患リスクの減少に寄与するとは言えないのではないか」と考察している。
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