(関連目次)→高齢者の医療について考える 褥瘡 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
メディカル朝日9月号から!
特集は最新版 在宅での褥瘡治療ですo(^-^)o ..。*♡
在宅療長者における褥瘡の実態調査
金沢大学医薬保健研究域保健学系 教授
須釜淳子
(Medical ASAH1 2008 September p18-20)
厚生労働省2007年度老人保健健康増進等事業の一環として日本褥瘡学会が実施した「在宅褥瘡ハイリスク患者ケア体制確立のための在宅版褥瘡予防・治療ガイドラインの策定・普及に関するモデル事業」において、在宅における褥瘡予防・管理の実熊調査が08年1月に実施された。調査対象は、社団法人全国訪問看護事業協会正会員施設に登録している全国の訪問看護ステーション2688施設から都道府県単位に無作為抽出した537施設である。
在宅における褥瘡の実態
●有病率
有病率算出に有効な回答を得た193施設の利用者総数9894人中、褥瘡を有する者は711人であり、褥瘡有病率は7.2%であった。なお目本冊衛学会が2006年10~12月に実施した全国調査では、病院0.96~3.3%、介護保険施設2.5~2.7%であった。これらの数値と単純に比較はできないが、在宅における褥瘡有病率は高く、重点的な対策が必要と言える。
●基本属性
調査対象者の基本属性を表1にまとめた。褥瘡群の年齢は80.0±13.3歳、性別は男性183人(41.0%)であった。要介護度5が52.8%、日常生活自立度C2(寝たきり、自力で寝返りをうたない)が45.8%と最も多く、対照群(褥瘡を有しない在宅療養者群)より高率を占め、褥瘡予防に家族、介護の力をより多く必要としていることが窺われる。
●主疾患
訪問看護利用に至る主疾患は、両部とも脳血管疾患後遺症が最も多かった(有病群95人・21.3%、対照群190人・37.2%)(表2)。 1998年に群馬県下で実施された実態調査においても、脳血管障害が寝たきりとなる原因疾患の1位で、脳血管障害回復期の早期の適切なリハビリテーションの必要性が課題として挙げられていたが、その課題は現在も存続している。
●部位・深度・発生時期
最も多い有権発生部位は仙骨部(35.0%)、次いで踵骨部、大転子部であった。これらの部位は臥位における骨突出部であり、ベッド上での対策が必要である。深達度では深い褥瘡(D3~D5)が40.9%を占めた。発生時期は、褥瘡群の26.4%が有病発生1ヵ月未満だったが、1年以上褥瘡を保有している例も18.6%あった(表3)。在宅療長者における褥瘡は、重症かつ治癒遅延であると考える。
●危険因子
褥瘡危険因子としてオッズ比が高い順に栄養状態低下、ベッド上基本動作能力なし、病的骨突出、多汗、関節拘縮、便失禁であった(表4)。
予防ケアの実態
●医療連携・介護者
予防ケアの医療連携について、有権群は訪問看護師(自施設)271人(79.9%)、ケアマネジャー207人(61.1%)、かかりつけ医201人(59.3%)の順で多く、栄養士は7人(2.1%)、歯科医・歯科衛生上は4人(1.2%)と少なかった。また、かかりつけ医の診療科は内科が80%以上であった。対照群は訪問看護師(自施設)439人(85.2%)、ケアマネジャー討4人(67.5%)、かかりつけ医310人(60.8%)で、栄養士11人(2.2%)、歯科医・歯科衛生上10人(2.0%)は同じく少なかった。主介護者は両部とも、配偶者が最も多かった(褥瘡群136人:40.1%、対照群218人:42.7%)。
●体位変換
日中の体位変換の実施状況は、1時間毎と2時間毎を合わせて褥瘡群で9.8%、対照群では8.6%であった。夜間の1時間毎と2時間毎を合わせた体位変換は、褥瘡群で5.0%、対照群も5.0%であった(表5)。
●体圧分散マットレス
褥瘡群の67.8%、対照群の64.1%が減圧分散マットレスを使用しており(表5)、種類はエアマットレスが最も多く、有権部の131人(38.6%)、対照群の188人(36.4%)が使用していた。
●スキンケア
有療部の264人(77.9%)、対照群の468人(90.5%)が入浴を実施していた。
●リハビリテーション
褥瘡群では120人(35.4%)、対照群では132人(25.5%)が実施していなかった。
●栄養経路
褥瘡評は、経口が258人(76.1%)、経腸が70人(20.6%)で、対照群は経口387人(74.8%)、経腸120人(23.1%)であった。
●排尿・排便ケア
排尿ケアについては両部ともにオムツ・尿取りパッドの使用(褥瘡群175人・51.6%、対照群276人・54.1%)が多かった。排便ケアについても両群ともにオムツ・尿取りパッド使用者が多かった(有権評190人・56.0%、対照群261人・51.2%)。
在宅療養者の柳眉を防ぐために
オッズ比が2以上あった褥瘡の危険因子は、
①栄養状態低下
②ベッド上基本動作能力なし
③病的骨突出であった。
これらが在宅における褥瘡ハイリスク因子と言え、今後これら3因子を有する在宅寺貧者への重点的な予防対策が必要となる。
予防ケアにおいても、体圧分散マットレスを約7割が使用しているのに対し、ガイドラインで推奨される2時間毎の体位変換を実施しているのは褥瘡群、対照群ともに1割未満であり、4割が不定期に実施と回答していた。在宅における体位変換スケジュールを時間ごとでなく、体位変換、排泄ケア、更衣、清潔ケア、食事等の日常生活行動と組み合わせて立案するなどの工夫が必要と考える。
最もリスク比が高かった栄養状態低下に対し、専門職である管理栄養士、歯科医、歯科衛生上との連携が1~2%と、看護師、医師、理学療法士、介護職と比べ非常に少ない。褥瘡群、対照群ともに経口摂取者が7割いることから、これら専門職の介入による有権発生リスク回避が期待される。
さらに、深くかつ治療遅延褥瘡が見られたことから、創傷を専門とする医師(皮膚科医等)、看護師(皮膚・排泄ケア認定看護師)を巻き込んだチームアプローチを基盤とした褥瘡対策などが必要である。
なお本訓告の限界として、調査回収率が38.5%と低いこと、質問票のみによるデータ収集であることが挙げられる。また訪問看護ステーションを調査対象にしたことから、このサービスを利用していない在宅褥瘡ハイリスク考および褥瘡有病者の実態については不明である。
コメント