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(投稿:by 僻地の産科医)
妊娠糖尿病は出産後長期にわたり
2型糖尿病のリスクを高める
MTpro 記事 2008年7月31日掲載
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妊娠糖尿病(GDM)は巨大児出産や早産,先天異常といった周産期リスクを高めるとされているが,出産後の母親の2型糖尿病発症との関連についてはあまりわかっていない。トロント大学(カナダ・トロント)のDenice S. Feig氏らが両者の間には明らかな関連が見られたとする大規模住民研究の結果を7月29日付のCMAJ オンライン版に報告した。
出産9年後では約20%のGDM患者が2型糖尿病を発症
1995年4月1日から2002年3月31日の7年間のオンタリオ州におけるすべての出産記録から65万9,164人の糖尿病の既往がない妊産婦を抽出。そのうちGDMと診断された2万1,823人(3.3%)について,主治医の届け出記録あるいは入院記録データベースを用い,出産後の経過を2004年3月31日まで最大9年の予後が追跡された。
その結果,GDM患者の割合は1995年の3.2%から2001年には3.6%に増加(P<0.001)していたほか,GDMから2型糖尿病に進展する割合は出産後9か月で3.7%,15か月時点で4.9%,5.2年で13.1%と増加し続け,9年後には18.9%となった。
GDMは母親の年齢や居住地域,近隣住民の収入レベル,妊娠高血圧といった他の因子と比べても,2型糖尿病への進展と最も強く関連していた(ハザード比37.28,95%信頼区間34.99~40.88,P<0.001)。また,調査開始初期(1995~96年)に比べ,後期(1999~2001年)に出産したグループにおいて,より2型糖尿病への進展率が高い傾向が見られたという。
この結果について,Feig氏は「医師たちの妊産婦診療やGDMスクリーニングと糖尿病発症予防の政策に役立つ内容」と評価している。高齢出産の増加にともない,日本においてもGDMスクリーニングの重要性が指摘されているが,周産期だけでなく,出産後も長期にわたり2型糖尿病発症予防をターゲットとしたなんらかの対策が必要と考えられる。
妊娠中の糖尿病と肥満が
子供の青少年期の2型糖尿病発症と関連
Medical Tribune 2008年8月7日(VOL.41 NO.32) p.55
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母親の妊娠中の糖尿病と肥満が,子供の青少年期における2型糖尿病発症と関連することを示すデータが,米コロラド大学デンバー校などのグループによりDiabetes Careの7月号に発表された。
胎児期に母親が糖尿病または肥満であったことと,子供のその後の2型糖尿病との関連についてはデータが限られている。同グループは,10〜22歳の2型糖尿病患者79例と非糖尿病のコントロールの青少年190例の母親から,妊娠中の糖尿病および肥満に関する情報を収集した。
解析の結果,コントロール群と比べて2型糖尿病群は,胎児期に母親が糖尿病または肥満であった割合が有意に高かった(それぞれP<0.0001)。子供の年齢,性,人種/民族を調整後,胎児期の母親の糖尿病と肥満は子供の2型糖尿病と独立して関連し,オッズ比(OR)はそれぞれ5.7,2.8であった。
その他の周産期および社会経済因子を調整後もこの関連性は変わらなかったが,子供のBMIを加えた場合には関連性は弱くなった(OR 1.1)。全体として,青少年期の2型糖尿病の47.2%が胎児期の母親の糖尿病と肥満に関係すると考えられた。
Dabelea D, et al. Diabetes Care 2008; 31: 1422-1426.
妊娠糖尿病の背景に歯周病が存在
Medical Tribune 2008年8月14日(VOL.41 NO.33) p.31
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41330312&year=2008
〔ニューヨーク〕ニューヨーク大学(NYU)歯科大学部疫学・健康増進科のAnanda P. Dasanayake教授らは,歯周(歯肉)病の妊婦は健康な歯肉を持つ妊婦よりも妊娠糖尿病を発症しやすいという知見をJournal of Dental Research(2008; 87: 328-333)に発表した。
細菌数と炎症レベルが有意に高い
Dasanayake教授らのチームは,ベルビュー病院センター(ニューヨーク)の妊婦265人を妊娠開始から6か月間調査した。うち22人が妊娠糖尿病を発症した。これら22人は,この研究に参加した他の女性よりも歯周細菌数と炎症のレベルが有意に高かった。この知見は,妊婦が良好な口腔衛生を保つことの重要性を強調している。
同教授は「今回の研究で歯周病が早産だけではなく妊娠糖尿病も引き起こす可能性があることが明確に示された。女性は妊娠を計画する場合と妊娠した場合は,歯科医にかかるべきである。妊娠中の歯周病治療は安全で,口腔衛生を向上させ,潜在的なリスクを最小にとどめることが実証されている」と述べている。
同教授は「将来は,この2つの病態の関連性を研究するため,アジア系や米国先住民など他の高リスク群も含めて,多くの調査を遂行することが望ましい」と付け加えている。
妊娠糖尿病では,人体にとって主要な燃料源である糖を細胞へ運搬することができなくなるという特徴がある。この病態は通常,妊娠の終了とともに消失するが,妊娠糖尿病を発症した女性は,のちに糖尿病のうち最も一般的な2型糖尿病を発症するリスクが高い。ヒスパニック系,アジア系と米国先住民は妊娠糖尿病を発症するリスクが最も高いが,今回のNYUの研究では参加者の83%がヒスパニック系であった。
歯周病に伴う炎症は,糖代謝を調節するホルモンであるインスリンの機能に影響し,妊娠糖尿病が発症する可能性が指摘されている。
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