(投稿:by 僻地の産科医)
月経障害のある肥満少女にorlistatが有効
Medical Tribune 2008年8月14日(VOL.41 NO.33) p.68
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41330682&year=2008
〔スイス・ジュネーブ〕卒後研修ロシア医学アカデミー(モスクワ)産科婦人科のIrina Kuznetsova博士は「抗肥満薬orlistatによる減量療法は,月経障害のある肥満少女に対する有効な治療選択肢の1つである」と第16回欧州肥満学会(ECO)で報告した。
81.5%で月経が改善
Kuznetsunova博士らは,月経障害のある平均BMI 33.4の少女(14〜18歳)32例を対象に,体重,代謝,排卵回復に及ぼすorlistatの効果を検討した。32例中24例には希発月経(不規則なあるいは少ない月経)が認められ,5例は無月経,3例には機能不全性子宮出血が認められた。
試験開始前に被験者の身体組成,血糖値,インスリン値,脂質値およびホルモンプロフィールを測定した。治療はorlistat 360mg/日の6か月間服用とし,低カロリー食と運動を併用した。最初の1か月間で,orlistatの副作用のため5例が脱落した。
治療完了時,大半(81.5%)の患者で月経は改善されており,自発排卵も37%で認められた。
試験を完了した27例は,平均8.13kgの減量に成功し,BMIは平均8.69%低下,さらにインスリン感受性は有意に改善した(P=0.002)。また,総コレステロール,LDLコレステロール,HDLコレステロール,トリグリセライドの各値に改善が認められた。ホルモンプロフィールについてはテストステロン,アンドロステンジオン,レプチンの各値が有意に低下した。
同博士は「orlistatを用いた減量療法は効果的で,月経異常のある肥満少女に対する第一選択オプションとすべきだ。しかし,胃腸管系の副作用があるため,適用が制限される場合もある」と述べた。
妊娠前の高BMIと子供の肥満は相関せず
Medical Tribune 2008年8月14日(VOL.41 NO.33) p.73
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41330732&year=2008
〔英ブリストル〕ブリストル大学のDebbie Lawlor教授らは,妊娠前の母親のBMIが高くても,その子供の9〜11歳時の体脂肪量に明らかな影響はないとの知見をPLoS Medicine(2008; 5: e33)に発表した。
BMI,遺伝子指標ともに相関せず
Lawlor教授らは,(1)父親のBMIよりも母親のBMIのほうが子供の体脂肪量との相関が強いか否か(2)母親の肥満に関する遺伝子マーカーであるFTO遺伝子のA変異と子供の体脂肪量との間に相関があるか否か―を検証した。子供自身のFTO遺伝子型を考慮に入れたうえで,母親のFTO遺伝子型と子供の体脂肪量との間に統計学的相関があれば,仮説が支持されることになる。
検証には,Avon Longitudinal Study of Parents and Children(AL SPAC)研究のデータを用いた。約4,000例の小児の親が妊娠前に自己申告したBMIと,その子供自身の9〜11歳における体脂肪量との相関を調べた。その結果,母親と父親の双方のBMIはその子供の体脂肪量と正の相関を示すが,父親よりも母親のBMIとの相関が強いことが判明した。ただし,母親のBMIとの相関は,近年の肥満の蔓延を説明するには弱すぎるものであった。
母親のFTO遺伝子型と子供の体脂肪量を調べたところ,子供の体脂肪量の違いと母親のFTO遺伝子型との間の相関を示唆する統計学的なエビデンスは示されなかった。
Lawlor教授は「現在の肥満の蔓延は全世代で加速する可能性があり,有効な肥満予防プログラムをもってしても,それが一定期間にわたり続く可能性があることからも,今回の知見は公衆衛生学上の意義を持つ」とし,「食事や身体活動度の改善を目的とした介入を行えば,肥満の蔓延を遅らせるか,止めることができるだろう」と述べている。
肥満に対する差別広がる
Medical Tribune 2008年8月14日(VOL.41 NO.33) p.50
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41330502&year=2008
〔米コネティカット州ニューヘブン〕エール大学(ニューヘブン)ラッド食糧政策・肥満センターのRebecca Puhl博士らの研究によると,太りすぎの人,特に女性肥満者に対する差別は,人種差別におとらず広がっているようだ。詳細はInternational Journal of Obesity(2008; 32: 992-1000)に発表された。
被差別の割合は女性で2倍
筆頭研究者のPuhl博士は「人種や性といった特性は法律により既に保護されているが,これらと同様に体重による差別も一種の偏見として扱われるべきであることを今回の知見は示している」と述べている。
今回の研究では,National Survey of Midlife Development in the United Statesで全国から抽出された成人(25〜74歳)のうち,体重を理由とした差別を受けたことがあると回答した人の割合が検証され,人種または性差別を受けた経験がある人の割合と比較した。
その結果,体重を理由に差別を受けたことがある,と回答した人の割合は男性に比べ女性で2倍も高いこと,また肥満を理由に職場での人間関係において差別が日常的に行われていることも明らかとなった。
同博士らによると,男性ではBMIが35を超えなければ体重を理由とした差別を受けるリスクは深刻ではないが,女性の場合はBMIが27になると,そのリスクは著明に増加し始めるという。
共同研究者で同大学のTatiana Andreyava氏は「体重による差別は性的態度,国籍/人種,身体障害,宗教による差別に比べると広く行われているが,体重による差別を受けている人の割合は高いにもかかわらず,この差別は依然として社会的に容認されている」と述べている。
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