(関連目次)→医療事故安全調査委員会 各学会の反応
(投稿:by 僻地の産科医)
そろそろ大綱案への意見書が出てきました(>▽<)!!!
また、日本医学会でも公開討論を行うようです。
では、どうぞ ..。*♡
■意見書 平成20年7月2日
-「医療安全調査委員会設置法案」大綱案について-
日本臨床整形外科学会
「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方に関する検討会」による「医療安全調査委員会設置法案」大綱案が平成20年6月13日厚生労働省より公表され、パブリックコメントを求めているところであるが、以下の理由により当学会は反対し、厚生労働省、日本医師会をはじめ関係各団体の再検討を要望する。
1.医療の質の向上のためにも死因を調査し対策を講じる何らかの医療安全調査センター的中立機関が必要であり、その方向性に反対するものではない。
2.医療事故の起こる背景因子としての医師不足、医師・看護師をはじめ医療従事者の過重労働、低医療費政策等の医療制度そのものの根本的改善が最も重要である。設置法案の附帯事項として考慮すべきである。
3.医療事故の再発を防止し医療の安全を確保、真に医療を守るための報告制度であるべき法案が、修正された大綱案でも行政的・司法的処分の色彩が極めて強く残っている。そもそも委員会の目的は「医療事故の原因究明と再発防止」が目的であり、その結果を捜査機関に通知すべきでない。刑事事件として扱うならば捜査当局は独自に別の機関で究明すべきである。調査と刑事処分が連動することには反対である。この法案は医療従事者の責任追及そのものである。
4.懲罰的色彩が極めて濃い大綱案では、医療側の十分なコンセンサスが得られず、さらに萎縮医療がすすみ医療崩壊を招くことが必定である。特に救急医療の現場ではさらに救急医療を受け入れない医療機関が増えてくる。重要なことは医師の処罰は予防には何ら寄与しないことである。萎縮医療が進むのみである。
5.医療は「許された危険の法理」に基づく刑法第35条の「正当業務行為」であり、医療行為を一般の犯罪の業務上過失傷害致死罪と同等に捉え、処分・処罰を行うことは問題である。故意、悪意をもって行われていない医療行為に刑事罰を科すべきでない。善意でもって行った医療行為が、結果のみで犯罪として扱われることは問題である。医療行為には正当業務行為としての免責規定が必要である。
6.謙抑的に対応するとしているが、司法当局は刑事訴訟法に基づき自由に訴追もできることより、謙抑的な対応を義務づける文言を法案に組み込むべきであり、検察庁・警察庁と約束文書を交わし、公表すべきである。委員会の調査と判断が捜査機関に優先するとする担保がない。この法案では正当業務行為である医療への刑事司法の直接的介入は抑制できない。
7.地方の調査委員会には裁判所と同等ともいえる調査権限が付与されており、その判断が直接行政処分・司法処分に繋がるようになっていることは問題である。
さらに調査権限と処分権限が同一の委員会で行なわれることは好ましくない。調査と処分は完全に分離されるべきである。
8.委員会より医道審議会への報告対象の拡大は医師にとっては刑事訴追と相俟って不安というより恐怖である。また、委員会の報告のみで行政処分が行なわれることは問題である。
9.警察への通知については「標準的な医療から著しく逸脱した医療」としているが、標準的な医療の基準があいまいであり、著しく逸脱もどの程度のことを意味するか不明である。委員会構成員である一委員がその道の権威者であると標準的医療のレベルが極端に上昇する危険性がある。
10.その判断基準は「病院、診療所などの規模や設備、地理的環境、医師等の専門性の程度、緊急性の有無、システムエラーの観点等を勘案して、医療の専門家を中心とした地方委員会が個別具体的に判断する」となっており、全く同じ事例でも各地方調査委員会の自由裁量で判断が異なるということにもなる。これを防ぐシステムが必要である。標準的医療の基準・概念、逸脱の範囲及び判断基準等についてさらに十分な議論を尽くす必要がある。
11.届出範囲は「医療事故死等に該当するかどうかの基準を医学医術に関する学術団体及び医療安全中央委員会の意見を聞いて主管大臣が定め、公表する」となっており、主管大臣が届出対象を自由に拡大できる極めて具体性のない大綱である。
12.大綱では医師法21条の改定について「医療安全調査委員会」(仮称)に届出を行った場合はこの限りではない、と追加しただけであり、医療関連死の除外や正当業務行為としての医療行為に全く配慮がなされていない。異状死の定義に踏み込んだ医師法第21条の抜本改定が必要である。
13.医療安全調査委員会の独立性・中立性の担保も極めて重要である。調査機関と処分機関が同一機関内にあることは好ましくなく、両者の機能を分離すべきであり、また設置場所も十分な検討を要する。
14.さらに議論を深めた第4次試案の策定が望まれるが、第4次試案策定前に日本医学会傘下の全学会及びその他の臨床系学会、医師会、医療関連団体を含む意見交換会・総合討議を開催すべきである。
15.医療安全調査委員会(仮称)の目的は「医療事故の原因究明と再発防止」が目的であること、医療は正当業務行為であることより、委員会の業務は原因究明と再発防止の指針つくりにとどめること、医師法第21条の抜本改定を行うこと等である。設置機関の名称も医療安全調査センターが望ましい。
16.医療側にとって、長期的に良質でかつ安全な医療を提供できる医療体制が構築されるような制度を担保する設置法であることを望む。
以上
拍手 そのとおりです。
どんどんいろんな所から反対意見が
出て、議論を深めていくことを
希望します。
投稿情報: KK | 2008年7 月 4日 (金) 14:35