(関連目次)→パブコメ中間発表! 今月の産婦人科医会報
(投稿:by suzan)
今日届いたばかりの医会報です。(6月1日発行)
すでに第四次試案の話になっているときにこの記事はあまりにもイタイのですけれど。
とりあえず、木下副会長のお考えを知るための参考資料として投稿いたします。
ちなみに、打ち込んでいる間にけっこう腹立ってきました(苦笑)。
医師法21条は確かに見直してほしいけど、第三次試案どおりの医療安全委員会がもしもできてしまったら、大野病院事件みたいな刑事事件はもっとたくさん起きる(作られる)んじゃないのかな~?と私は思うんですが。
羅針盤
副会長・木下 勝之
(JAOG news 日本産婦人科医会報 第60巻第6号NO.699 P3)
医師法代21条を改正して、届出先を警察でなく医療安全調査委員会にしなければ、刑事追訴の誤った流れは、いつまでも続く!!
本来、医療事故による死亡が起こった場合、あらゆる角度から原因を究明し、予防策をたて、再び事故が起こらないようにするという、医療の質の向上と安全に資する制度を構築して、国民の信頼に応えるようにすべきであるとの、医療界の熱い思いがあった。しかし、わが国は、現在の医師法第21条により、医療事故による死亡事例の警察への届出義務から始まる刑事追訴への誤った仕組みがある結果、刑事司法が突出した国として問題にされていた矢先、平成18年2月には、福島県立大野病院事件が起こったのである。
大野病院事件は、前置胎盤ゆえに、通常の帝王切開術を「行ったが、癒着胎盤であったため、胎盤剥離面からの出血のコントロールができずに、母体を救命しえなかった医療事故の主治医が、警察に逮捕、拘留され、その地方の検事により業務上過失致死罪と医師法21条違反の容疑で起訴されるという、決して起こってはならない事件であった。
分娩を取り扱う産婦人科医は、最善の治療を行っても医学的に救命しえない場合も含め、年間40~50件はある母体死亡に遭遇する可能性がある。このような事件を乗り越え、昼夜を問わず、真剣に分娩に取り組んでいる産婦人科医にとっては、大野病院事件のようなことは、二度と起こってはならないのである。大野病院事件に当事者意識を持つ、すべての産婦人科医にとっては、医師法21条を改正し、医療事故による死亡事例の届出先は、警察署ではなく、中立的な第三者機関でる医療安全調査委員会にすることが、悲願であった。
今日の医師法21条問題から始まる刑事追訴の誤った仕組みをどのように変えるのかの議論が始まった時に、日本医師会で、元大阪高等検察庁検事長、刑法学者、弁護士、医事法学者と医療界代表とで、真剣に議論した時の共通の認識事項は、以下のようなものであった。
1.医療に関連した死亡のみを特別視はできない。したがって、医療事故すべてを、免責にすることはできない。限定的であっても、刑事罰の対象は存在する(刑事法学者、元検事長、元刑事裁判官、医療側弁護士等)。
2.医師法21条そのものを廃止することは、犯罪による異状死が存在する以上、できない(元検事長、刑事法学者、元刑事裁判官、医療側弁護士等)。
3.業務上過失致死罪により、個人を罰することは、真の原因究明にはならず、治療の過程で発生する医療事故の特殊性を考慮すれば、医療事故への刑事追訴はごく少数の例外を除き、馴染まない(全員)。
4.このことを無視した適応は、かえって医療の安全と医療供給体制の確保を害し、患者や広く国民の利益にならない(全員)。
5.医療機関や医師が事故を報告するのは、警察ではなく、医療の担当官庁である厚労省とすべきであり、その傘下に事故の真相究明と再発防止を図るために、中立的第三者機関を作るべきである(全員)。
このことからもお分かりのように、わが国のように厳正な法治国家で、法務省、検察庁、警察庁が存在し、そして、国民の目がある以上、既に存在する刑法、刑事訴訟法を無視して、医療提供者側の考えだけを通すことは不可能なのである。しかし、前述の共通認識のもとで、医療事故に対する刑事司法の関与について、今までとは異なる仕組みにすることは可能である。そこで、新たに死因究明制度を創設するための具体的取り組みを、厚労省の検討会を中心に行ってきた。
この厚労省死因究明のあり方検討会に、現役の産婦人科医である私は、医師会側から出席し、他の医療界の代表とともに、検討会の席で、また特別に、厚労省、警察庁、法務省の担当官、患者側弁護士、マスメディア、遺族代表とも、頻回に協議し、お互いに理解を深めてきた。その結果、法律に定められた基本的考え方を尊重した上で、厚労省は、警察庁と法務省と深く折衝し、警察庁と法務省は、医療界の強い要望を受け入れて、譲歩し、三省庁は、最終的に合意して、厚労省が今日の第三次試案をまとめたという経緯がある。
第三次試案で示された医療界、厚労省、警察庁、法務省との合意事項は、
1.医療事故による死亡事例の届出先は警察ではなく、医療安全調査委員会とし、届出された事例に関し、警察への届出は不要とする。
2.調査委員会から捜査機関へ通知する事例は、改ざん、隠蔽、リピーター、さらに故意または重大な過失に限定し、これ以外の事例に関する調査報告書は刑事手続きには、原則として用いない。
3.行政処分は従来の懲罰方ではなく、支援型とし、再教育や、医療安全のための計画書提出等の指導とする。
といった内容を骨子としており、、従来の医師法21条に基づく刑事追訴の流れが一歩も、二歩も、三歩も改善されたものとなっている。
このような第三次試案に基づいた条文の法制化が果たされた暁には、二度と大野病院事件のような事件は発生しえないだけに、この試案に賛成しない産婦人科医は一人としていないはずである。しかし、実際には、少数ではあっても、この試案に記載されている内容が確実に実施されるかどうか不安であるとか、医療事故による死亡例をすべて免責にすべきであるとの理由で、この第三次試案に反対する医師もいる。一方、新たな仕組みを作ることは賛成だがまだ、調査委員会から捜査機関に通知する事例に、故意または重大な過失とあるが、その意味はあいまいであるとか、調査報告書が刑事手続きに使われないかどうか不安である等と、明らかにすべき点や改善すべき点があるとの意見がある。
これらの意見の中で、医療事故に対する刑事免責を求める等、国民の理解を得ることは不可能であるような内容以外では、いずれも、誤解に基づく疑問が多いだけに、今までも、繰り返し説明してきたが、これからも、さらに丁寧に説明し、誤解を解いていきたいと考えている。
世界に類を見ない、医療界にとって、画期的である本法案の成立は、特に、外科や産婦人科、救命救急部等のリスクの高い診療科や救急医療の現場で、日々診療している医師が、安心して診療を行うために絶対に不可欠である。医師法21条を改正して、届出先を警察ではなく医療安全調査委員会にしなければ、刑事追訴の誤った流れは、いつまでも続くだけに、医療界の一人でも多くがこの第三次試案に賛意を示して、法制化の後押しの支援をお願いしたい。
先を越されてしまったけど、suzan先生ありがとうございます。
私も怒りのあまり手が震えました。
24時間以内の届出と行政処分付きの法案が、明らかになりましたね。
さあ、ごく一部の抵抗勢力ですが(怒)また反撃しましょう。
投稿情報: 子持ちししゃも | 2008年6 月13日 (金) 15:28
この文章、たぶん産婦人科医向けですよね?
大野病院事件を持ち出して、産婦人科医なら三次試案に賛成して当然、という話の持って生き方に、なんだかもう怒っていいのか苦笑すべきなのか。
これを読んで、医療安全調査委員会がもしも試案のとおりにできれば絶対に大野病院事件は繰り返されないんだ、と確信できる人間がいるんでしょうか?
これを書いたご本人は、多分どーでもいいと思っているんでしょうけど。(もう癒着胎盤の帝王切開なんかしなくていいお立場でしょうからね)
投稿情報: suzan | 2008年6 月14日 (土) 10:18
大綱へのパブコメが始まっています。
・「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」に対する意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=495080050&OBJCD=100495&GROUP=
投稿情報: rijin | 2008年6 月14日 (土) 22:50
またか~。
もう疲れますよね(笑)。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年6 月15日 (日) 08:42
第3次試案の問題の大半がそのままで、ただ条文化してあるだけです。
パブコメも見直しされた該当部分だけ修正して、他はそのまま提出しようと思っています。
投稿情報: rijin | 2008年6 月15日 (日) 09:54
私もパブコメの見直し・まとめ作業また頑張って、まとめて論文にして出そうかな。
ちょっとやる気が戻ってきました。
よく考えたら、全然なんにも問題ないんだもん!無駄に消耗しましたo(^-^)o ..。*♡
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年6 月15日 (日) 10:30