(関連目次)→医療事故安全調査委員会 各学会の反応
(投稿:by 鶴亀松五郎先生)
WHOのコメントで有名な鶴亀松五郎先生からすばらしいコメントを
頂きましたのでご紹介します(>▽<) ..。*♡
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スウェーデンでは医療事故を含めた診療関連死を、
刑罰ともせず、民事訴訟ともしていないそうです。
(1)医療行為はすべて傷害行為である。
(2)正当なる医療目的、国家資格で保障された医療者、普遍的な倫理に基づく医療行為である限り、刑法上の「傷害」とは同一視されない。
(3)一方、医療が人によって履行される限り、ヒューマンエラー(人為ミス)の発生は避けられない。
詳細はこちら↓
医療事故に対し「紛争外処理」を望む
南国中央病院院長 山本浩志先生
http://www.chisio-group.or.jp/hotushin/0606.html
私自身、大阪の医療事故調査会(森功・世話人)の理事を9年間させてもらっているが、帝王切開を受けた女性が死亡したことで福島県の産婦人科医が逮捕、起訴されたという報道に正直違和感を覚えた。森功氏の友人のスウェーデン医師も、「日本はなんと野蛮な国か」というのが第一の感想であったとのことである。
医療というものの主旨はこうである。
(1)医療行為はすべて傷害行為である。
(2)正当なる医療目的、国家資格で保障された医療者、普遍的な倫理に基づく医療行為である限り、刑法上の「傷害」とは同一視されない。
(3)一方、医療が人によって履行される限り、ヒューマンエラー(人為ミス)の発生は避けられない。
ところで医療者にミスがあったと思われる場合、わが国は、「米国型医療紛争」にならい、損害賠償裁判で争うことが多い。今回のように警察が介入することもある。それがスウェーデン医師にとっては野蛮と映るのである。
スウェーデンなどは、医療事故に対しては、すでに「紛争外処理」というシステムを取り入れている。それは簡単に言えば、患者の苦情を受けつけ、患者救済(補償)と医療者の審判が分割され、かつ同時進行で行われるシステムである。ある意味患者救済を第一にするもので、医療者の過失がない場合でも救済、支援する制度でもある。
わが国がそれを真似るとなると、厚生労働省が「医療事故報告義務を課した法」に基づき、医療機関、患者のいずれかからでも提出可能な事故報告を受け取る。
それを国の懲戒委員会で審議し、医師等の過失に応じ懲戒が行われる。と同時に患者保険に連絡し、救済作業を行う。また患者支援センターが、患者のクレームへの対応と支援を行うというものである。
そしてスウェーデンでは医療事故の98%がこの紛争外処理であり、裁判になるのは2%に過ぎない。
もちろんこのシステムをわが国ですぐに導入するという訳にはいかないが、そのためには森功氏は以下の4点の提案を行っている。
(1)法律整備 患者の権利法、個人情報保護法、医療情報公開法の成立、さらには強制加入の医師会のための法規定など。
(2)医療事故事件の鑑定方式の確立。
(3)医療者の審判制度 審判制度は専門職の責任、懲戒、復帰を定めた法の下に国家機関を設け、理事は市民を含めた幅広い構成。
(4)医療事故被害者救済システム 事故被害者は過失の有無にかかわらず、スウェーデン方式での救済が望ましい。そのため医療機関、医療保険、損保会社、国の負担により、資産をプールし給付を規定する。
以上であるが、私はこの方式を先の土佐高生の落雷事故にも当てはめるべきと考えている。最高裁での最終の審判がどうなるかは分からないが、もし敗訴したらこの親子にとって人生とはいったい何であったろうと思う。
親が子を思う気持ちはよく分かる。一方校長が落雷事故を予見不能として引率の教諭をかばう気持ちも分かる。
裁判に対しては私自身良く分からないが、親がこの事故を裁判に持っていかざるを得ないシステムではなく、国がこの子を補償し、これからの人生をいかに支援していくかを事故と同時に持つシステムが求められる。
はっきり言えば、落雷事故も医療事故と同様、裁判は似つかわしくないというのが私の結論である。
また、医療事故の「紛争外処理」においても、医師を懲戒するということ以上に、真実を究明し、再発をいかに防止するかを審議することが大切であることは論をまたない。
診療関連死が刑事事件化せず、刑罰フリーの国スウェーデン。
日本だってやろうと思えばできるはずです。
WHOのヨーロッパ・リージョンが作成している
国別の医療システムリポートのスウェーデン編。
http://www.euro.who.int/Document/E88669.pdf
44ページから45ページまでは、
有害事象や診療関連死、患者への保証への記述があります。
1982年にHealth and Medical Services Actが制定された。
(1)スウェーデン保健省に関連した部局として、HSANとthe National Board of Health and Welfareと言う部局が別個に独立してある。
(2)有害事象に関する患者サイドからのクレームはHSANが審査し、医療スタッフの過失あるいは過誤の有無を分析する。
(3)その分析をもとにNational Board of Health and Welfareが医療スタッフへの警告、医療行為の限定あるいは停止を命ずる(刑事事件化して、刑罰をくだすことはありません)。
(4)2002年には3227のクレームのうち75%が医師の医療行為によるもので、さらに医療職として資格停止になったのは20人ほど(日本での行政処分に相当)。
(5)病院からの有害事象報告はNational Board of Health and Welfareに報告されるが、ここでは処罰は下さず、なにが原因か、なにが足らなかったかを分析し、ヘルスケア・システムの改善に役立てる。
1997年にはPatient Injuries Actが制定された。
誤診や誤投薬や医科や歯科の治療による障害は、医療過誤の有無にかかわらず、有害事象への賠償(保証)が行われる。
高額な保証ではないが、スウェーデンは医療費無料または低額なので、後遺症等への治療費は掛からない。また福祉施設も充実しており、永久の障害を受けた場合でも、心配がいらない。
【追記】
スウェーデン保健省の社会保障の記事があります。
保障の内容や、金銭的補助(1SEK=1スウェーデンクローネ=0.9ユーロ=145円)も記載されています。
<Social insurance in Sweden>
http://www.sweden.gov.se/content/1/c6/07/94/49/e72e6119.pdf
僻地の産科医先生、エントリーありがとうございます。
いつも先生をはじめとして、人のブログを借りては、コメントを書いてばかりで申し訳ありません。
すこしでも、医療崩壊をストップさせることのお役に立てればと思います。
スウェーデン保健省の社会保障の記事があります。
保障の内容や、金銭的補助(1SEK=1スウェーデンクローネ=0.9ユーロ=145円)も記載されています。
<Social insurance in Sweden>
http://www.sweden.gov.se/content/1/c6/07/94/49/e72e6119.pdf
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2008年5 月14日 (水) 22:34
毎日新聞は何を言いたいのだろう。この記事に医師という単語は出てこない。
医師達の意見は無視してよいということか?
http://mainichi.jp/select/science/news/20080515k0000m040086000c.html
医療死亡事故:第三者機関設立で医療者と患者「賛成」
医療事故の被害者らで作る「医療過誤原告の会」(宮脇正和会長)など6団体は14日、厚生労働省が検討している医療死亡事故の第三者調査機関「医療安全調査委員会」(仮称)を早期に設立するよう求める統一見解をまとめ、厚労省に提出した。病院側の各団体も13日に原則容認する意見を出しており、一部の学会や病院団体などを除き、医療者と患者の双方が「賛成」でまとまった。
毎日新聞 2008年5月14日 20時02分
投稿情報: 医療関係者ではありません | 2008年5 月14日 (水) 22:34
鶴亀松五郎先生、とんでもないです(>▽<)!!
いつもありがとうございます。
小松先生のパブコメにも引用されていましたし、この前のWHOのガイドラインの件は結局、2008年4月28日(月) 決算委員会の石井みどり議員により国会質問にまでいっていましたね!
(文字おこししようとして頭が割れましたw。半分ありますが、半分ではちょっと(笑)。)
すばらしいです。
ありがとうございます。追記として加えさせていただきます。
医療関係者ではありませんさま
新聞記事では時々そういうことがあるんです。そんなものかなぁとおもって(笑)。
明日のニュースに出しますが、厚労省の二川一男医政局総務課長は患者団体に「国会の会期末まであとわずかだが、提出に向け全力を尽くしたい」と話したそうですよ。
パブコメはこっそりと締め切られているという噂は、このあたりから出ているものと思われます。
(有力筋からの話でもあるのですけれどね)
そもそもパブコメに期限がないなんてw。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年5 月14日 (水) 22:54
とても不思議な毎日新聞の記事ですね。
>>病院側の各団体も13日に原則容認する意見を出しており、一部の学会や病院団体などを除き、医療者と患者の双方が「賛成」でまとまった。
毎日新聞の記者さん、どこを見てそう書いたのでしょう。
とてもとても、賛成でまとまったとは言えない状況にある思いますが。
第三次試案に対して、反対や再考を公式見解で表明している医療団体のほうが、賛成を表明した団体(患者団体と医療側団体)よりもずっと多いんですが。
きちんと取材せずに記事を書いていますね。
記者の能力の問題なんでしょうね。
それに、病院の各団体が賛成と書いてありますがも、賛成とは間違っても表明していません(キャリア・ブレインの記事)。
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2008年5 月14日 (水) 23:21
>病院側の各団体も13日に原則容認する意見を出しており
この記事だと思います。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20080514ddm005040106000c.html
反対する医師は一部だけとの世論誘導がされそうな気がします。
投稿情報: CNN | 2008年5 月15日 (木) 14:59
僻地の産科医先生、おもしろい資料があります。
イギリスにおける診療関連死への警察の介入の保健省ガイドライン
イギリス保健省が、2006年に診療中の「予期せぬ死亡」と「重大な障害」に関してのガイドラインを作成しています。
Guidelines for the NHS: In support of the Memorandum of Understanding - Investigating patient safety incidents involving unexpected death or serious untoward harm
(http://www.dh.gov.uk/en/Publicationsandstatistics/Publications/PublicationsPolicyAndGuidance/DH_062975)
わかりやすい覚書(Memorandum of understanding: Investigating patient safety incidents involving unexpected death or serious untoward harm)
このガイドラインには、わかりやすい覚書も掲載されています。
序言には、「イギリスでも以前は診療関連死が起きた場合は当事者である医療従事者を処罰する方向でしたが、処罰を前提にすることで他の医療職や医療機関が今後の診療に役立てる為の大事な情報が出てこなくなり、むしろマイナスに働くことがわかってきました。
そしてNational Patient Patient Safety Agencyへの診療関連の有害事象報告が、報告者を罪に問わないという条件でなされるようになりました。」
と書かれています。
また、有害事象の報告に関するNational Health Service(NHS)ガイドラインも別途作成されています。
具体的には、
予期せぬ死亡」と「重大な障害」の報告の中には警察の介入を認める事例があり、どんな事例が警察の介入を認めて、どのような手続きが取られるのかも、詳しく述べられています。
イギリスにおける予期せぬ診療関連死への警察の介入は、日本のように一方的に警察が資料を押収して検察に送検して刑事事件化するシステムとは根本的に違っています。医療機関である当事者のNational Health Service(NHS)、警察当局Association of Chief Police Officers、医療安全システムの政府部局Health and Safety Executive(HSE)が話し合いをして、調査していきます。その結果、警察の介入が不要とわかれば警察は手を引き、当事者であるNHSでの調査がメインとなります。
そして、警察の介入を要する症例とは、ガイドラインの文言を引用すると、
•*evidence or suspicion that the actions leading to harm were
Intended
・・意図的に障害を起こす診療行為をした証拠あるいは疑いがあるもの。
•*evidence or suspicion that adverse consequences were intended
・・意図的に有害な結果を起こした証拠あるいは疑いがあるもの
•*evidence or suspicion of gross negligence and/or recklessness in a
serious safety incident, including as a result of failure to follow
safe practice or procedure or protocols.
・・安全な診療手技やプロトコールに従わなかった結果、重大な事故につながった怠慢あるいは無謀な治療である証拠あるいは疑いがあるもの
とされています。それ以外の診療行為における予期せぬ死亡は、当然のごとく警察の介入とはならず、有害事象報告者も免責されます。
警察の介入が起きても、あくまで医療側と医療安全の部局との3者の話し合いで結論が下されます。そしてイギリスは日本と違い、診療関連死は解剖になりますからcoronerといわれる解剖の担当者の意見も3者の話しあいの中で重要意見として取り上げられます。
日本のように原告側の鑑定だけが裁判の証拠として取り上げられることもなく、解剖所見は関連する3者の共通の資料となっています。
公正と公平な判断を行うことが一番重要であるとも、書かれています。
そして、一般の患者や、関係していないNHS内の医療スタッフの動揺をを起こさせないように充分な配慮をすることも必要であるとも書かれています。
実は、厚生省の第三次試案のなかの文言が、このイギリス保健省のガイドラインの中に使われた文言の直訳に相当するものが多々、見受けられました。
しかし、イギリスのガイドラインと厚生省のガイドラインは、似て非なるものです。
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2008年5 月15日 (木) 23:14
僻地の産科医先生。
ガイドラインのURLが正しく表示されませんでしょた。
正しくは、
http://www.dh.gov.uk/en/Publicationsandstatistics/Publications/PublicationsPolicyAndGuidance/DH_062975
http://www.dh.gov.uk/en/Publicationsandstatistics/Publications/PublicationsPolicyAndGuidanceのあとに/DH_062975
と続きます。
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2008年5 月15日 (木) 23:38
僻地の産科医先生、こちらに書きますね。
Patient Injuries Actの詳しい翻訳あり。
医真会八尾総合病院の森功先生のホームページより、。
1997年に制定されたPatient Injuries Act(患者障害法)の翻訳
● 患者傷害法の一考察 ●
カール・エスペルソン
(2000年8月発表;筆者はスエーデン患者保険協会法律顧問)
(1)背景と歴史
http://www.reference.co.jp/imori/info/info7.html
(2)患者傷害法、補償範囲、患者傷害、
http://www.reference.co.jp/imori/info/info7_1.html
(3)患者傷害の種類
http://www.reference.co.jp/imori/info/info7_2.html
(4)治療に関する情報不足または同意の欠如、患者傷害賠償金の決定方法、回想、一般司法制度の裁判、出訴期限
http://www.reference.co.jp/imori/info/info7_3.html
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2008年5 月26日 (月) 10:19
>4)2002年には3227のクレームのうち75%が医師の医療行為によるもので、さらに医療職として資格停止になったのは20人ほど(日本での行政処分に相当)。
スウェーデンの医師数(26,000人)が日本(270,000人)の10分の1と考えると、1年間で20人の資格停止処分というのは、ものすごく厳しいと思います。
日本では、医道審議会で医療ミスを理由として医業停止処分を受けた医師の数は、昨年が10人程度です。http://www.shinginza.com/idoushin.htm
投稿情報: 匿名患者 | 2008年6 月20日 (金) 22:45
行政処分?だからなにですか?
警察への医療事故の届け出、2007年は3割増 立件送致数は減少
http://obgy.typepad.jp/blog/2008/06/post-1341-11.html
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年6 月20日 (金) 22:57
行政処分で年間200人の医業停止処分が出されても、刑事処分を受けるよりマシだと言うわけですね。
よくわかりました。
投稿情報: 匿名 | 2008年6 月20日 (金) 23:42
(1)医療行為はすべて傷害行為である。
(2)正当なる医療目的、普遍的な倫理に基づく医療行為であるか否かは事前に完全に確定することは不可能であり、したがって、刑法上の傷害と弁別し得るものでは全くない
(3)従っていかなる医療行為であろうとも刑事罰の対象となりうる
というのを日本国民が選んだんですよ。
スウェーデンの人に野蛮だの何だのいわれる筋合いはありません。
投稿情報: XXW | 2008年6 月21日 (土) 00:01
匿名患者さま。
わたしの書き方が、足らなかったため申し訳ありません。
医療職の資格停止が20名とは、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、他のコメディカルのトータルで20名と言うことです。
このコメントには書きませんでしたが、資料を読むと、医師の資格停止は1名で、National Booadの再三の勧告にも関わらず、医療エラーを繰り返した医師が資格停止になっています。
したがって、人口あたりの医師数を考えれば、ほぼ日本と同じ比率です。
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2008年6 月21日 (土) 00:06
>日本国民が選んだんですよ
司法と警察がでしょ。
単に、世界の流れ(スタンダード)を知らなかっただけ。
日本は遅れてる。
世界の流れ(スタンダード)を知って、標準にあわせるように、今、議論している最中。
>事前に完全に確定することは不可能であり
そんなの当たり前。
故意や悪意や怠慢でなかったことは、すべて事後に判定しますが。
>刑事罰の対象
故意や悪意や怠慢でなければ、対象にはなりません。
>何だのいわれる筋合いはありません
スウェーデン人医師でなくとも、野蛮と思うでしょう。
アメリカの医師や医療安全の専門家も、おかしいと思っているとの新聞記事がありましたが。
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2008年6 月21日 (土) 00:42
基本的に医療裁判がシャットアウトされている国(民事裁判なしは当然として、故意でもないかぎり刑事事件化もなし・・日本とは大違い)であるスウェーデンにおける通常の診療中の診療関連死や有害事象の取扱いについて、日本語の詳しい解説があります。
● スウェーデン、ドイツ、オランダ三国の視察報告 ●
~医療の品質とエラー管理~
スウェーデン編
(1)http://www.reference.co.jp/imori/info/info6_7.html
(2)
http://www.reference.co.jp/imori/info/info6_8.html
(3)
http://www.reference.co.jp/imori/info/info6_9.html
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2008年8 月 3日 (日) 11:03