(投稿:by 僻地の産科医)
というわけで。最近のVBAC事情ですo(^-^)o..。*♡
めちゃめちゃ等身大な産婦人科事情をおたのしみくださいませw。
(最後まで読んでもらうとわかります)
帝王切開後経腟分娩(VBAC) 東邦大学医療センター大森病院産婦人科 (産婦人科の実際 vol.56 No.9 2007 p1365-1368) 晩婚化や初産年齢の上昇および未婚者等の増加で出生率は低下し,2005年の合計特殊出生率は1.26となったが2006年は1.31と少し上昇した。しかし,今後このまま上昇するか否かは未知数である。このような状況下で,分娩には安全で完璧性が要求されるため,帝王切開(帝切)分娩の比率は上昇している。帝切適応の1/3は前回帝切である。帝切率を減少させるための一つは帝切後経腟分娩(vaginal birth after cesarean section ; VBAC)を行うことである。ただし,VBACを行うには厳格な適応のもとに症例を厳選し,十分なインフォームドコンセントを得て行わなければならない。 はじめに Ⅰ.当院の分娩統計(2006年) Ⅱ.VBACの適応と禁忌 1.適 応 1)既往帝王切開術式が子宮下部横切開である。 2,禁 忌 1)文書によるインフォームドコンセントが得られない。 Ⅲ.試験分娩中の管理方針 VBACを施行する場合は,緊急事態が発生したとき,自施設で迅速に緊急帝王切開が行える体制が整っていなければならない。異常が発生してから高次施設に母体搬送するのは厳に慎むことであり,あってはならない。 おわりに 文 献
田中政信 前村俊満 間崎和夫 渋井幸裕
今日,「帝切を含め分娩は安全である」という安全神話がまかり通っている。その上,分娩監視装置や超音波装置などの医療機器の普及・精密化は母体子宮下部・頚部,陣痛の状態や胎児・胎盤・臍帯・羊水などの状況を正確に診断できる。母児の軽度異変や骨盤位の予防帝切および医療訴訟問題を含めた社会的適応などによる帝切の増加も加味し,安全神話が帝切率を上昇させている理由の一つでもある。しかし,手術には予期せぬアクシデントや合併症がある。次回の妊娠・分娩を考慮したとき,癒着胎盤・子宮破裂などの危険性が増加し,さらにVBACを施行する場合は,産婦とその家族および医療従事者の精神的負担は計り知れない。そのようなことからも,まず,初回の帝切適応はより以上に厳格に決定されるべきである。
当院で2006年1月~12月の間に取り扱った分娩総数は多胎を含め928件であった。内訳は経腟分娩640件,帝切分娩288件(帝切率31.0%)であり,帝切の内訳は予定帝切126件(43.8%),緊急帝切162件(56.2%)であった。帝切を妊娠週数別でみると妊娠28週までが13例(4.5%),29~34週が29例(10.1%),35,36週が31例(10.8%),37週以降が215例(74.7%)である。経腟分娩のうちVBAC成功は3例(0.4%)のみであった。今回,何例にVBACが試みられたかの詳細は不明であるのでVBAC成功率は出せないが,約1O年前は年間で20例ほどのVBACを試行し74%の成功率であったが,近年の医療事情から推察しVBACの試行は激減したことは間違いない。
当院におけるVBAC施行ガイドラインを表1に示すが,当院ではこの9項目すべてをクリアしなければVBAC試験分娩は施行しない。VBAC適応は厳格に決定しなければならないことはいうまでもない。参考までにACOGのVBAC施行ガイドラインを表2に禁忌を表3に示す。また,一般的な最低限の適応と禁忌を以下に挙げる。
2)術後経過が良好であった。
3)既往帝正切開数が1回である。
4)子宮体部筋層に及ぶ手術既往または子宮破裂の既往がない。
5)児頭骨盤不均衡でない。
6)緊急帝王切開および子宮破裂に対する緊急手術が可能な施設である。
7)文書によるインフォームドコンセントが得られている。
2)前回の適応が今回もある。
3)今回新たに帝切適応がある。
4)前回帝切が体部縦切開である。
5)前回帝切後に感染徴候,異常出血などを認める。
6)陣痛誘発や促進が必要である。
7)巨大児である。
8)頚管が未熟である。
9)2回以上の帝切既往がある。
VBACの実施にあたっては,厳密な適応のもとに症例を厳選し,十分なインフォームドコンセントを得て行うことが必要である。
方法は,陣痛誘発や促進は行わず自然陣痛の発来を待ってdouble set up 体制で,産婦のバイタルサイン(血圧・脈拍など)と分娩進行度を厳重にチェックし,血尿や子宮手術創部周辺の圧痛・自発痛などの切迫子宮破裂徴候に注意し,これらの症状が出現した場合は,速やかに緊急帝切を行うべきである。
胎児に関しては,羊水混濁の有無をチェックしつつ,分娩監視装置による継続的な厳重監視が必要である。胎児心拍数陣痛図上で突然の遷延一過性徐脈の出現や高度変動一過性徐脈が頻発した場合は子宮破裂の可能性があり緊急帝切にする。
VBACを施行する上で.最も重篤な合併症は子宮破裂である。その頻度はACOGでは前回帝切が子宮体部縦切開術とT字切開術で4~9%,下部縦切開術は1~7%,下部横切開術は0.2~1.5%であると報告している。しかし,いったん,本症を発作した場合の母児の予後は極めて不良である。
最近,当院における周産期に関係した医療従事者数は全国で起きている現象と同様に減少している。一方で,分娩を含めた症例数は増加し,その調整に苦慮している。このような状況下であるため,以前はガイドラインに合致した場合,予定日を過ぎた症例や前期破水等の医学的適応が存在する症例では再度十分なインフォームドコンセントを得て陣痛誘発等を行っていたが,現在はあくまでも自然陣痛の発来を待ち,血管確保のみで経過をみている。産婦がVBACを強く要望した場合であっても,医学的適応のみでなく取り扱い医療機関の状況を自覚し,決して無理はしないことである。
参考として日本産婦人科医会の研修ノートにある試験分娩の許可条件,禁忌事項を図1に示す4)5).
最近,当院でのVBACは減少している。理由は,当院は総合周産期母子医療センターであるが,産婦人科医・新生児科医・麻酔科医などの減少や周辺の医療機関が分娩を取り扱わなくなり,その影響を受けてと思われるが,分娩取り扱いが激増し,MFICUとNICUを含めた産科・新生見料病床が常に満床であり,その上,いつ搬送依頼があるか不明の状況では,時間的・心理的余裕をもってVBACを施行できる体制が崩壊した。
産科医は初回の帝切適応をさらに厳格にし,VBAC症例を減少させなければならない。また,帝切を施行した場合は,特に褥婦に対し経腟でも帝切でも生命誕生には変わりなく,立派な仕事であることを含め十分な精神的ケアと次回妊娠に向けての期間的避妊指導を行うことである。
2)vaginal birth after previous cesarean delivery.
ACOG Practice Bulletin, N0.54,pp10,2004.
3)AC0G Committee on quality assessment :Criteria set N0.13,1995.
4)日本母性保護産婦人科医会:急速逐娩術,研修ノートN0.58,pp125-129,1998.
5)日本産婦人科医会:分娩管理,研修ノートN0.68,pp87,2003.
晩婚化や初産の年齢の上昇は、戦後の教育にも責任があるのではなにかと、このごろ思います。
マスコミにも責任があるのではないでしょうか。
不妊治療にも限界があります。
妊娠や出産は本来、「子の命」を最優先すべきなのに、「母親のエゴ」が最優先されているような最近の風潮には納得ができません。
そして、周産期がその責任をすべて押し付けられてしまっているような気がしてなりません。
今、変わらなくてはならないのは、患者の方だと思います。
投稿情報: せんせい ありがとう♥ | 2007年12 月16日 (日) 10:50