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(投稿:by 僻地の産科医)
日本内科学会
http://www.naika.or.jp/info/info071217.html
お知らせ
2007年12月17日付
診療行為に関連した死亡の死因究明制度の創設に向けて
-厚生労働省第二次試案に対する内科・外科からの意見書についてのご報告-
社団法人日本内科学会
理事長 永井良三
診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業中央事務局長
山口 徹
内科学会は基本領域および内科・外科のsubspecialtyの38学会のご支援のもとに厚生労働省補助金事業「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」(以下、「モデル事業」)を平成17年9月より開始し、2年余の活動で60例余の事例を経験し制度化に向けて貴重なデータを積み重ねています。
平成18年2月の福島県立大野病院事件を契機に、死因究明のための中立的第三者機関設立に向けての世論が高まり、平成19年4月より「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」が発足いたしました。「モデル事業」もこれまでの経験をふまえた提言をまとめ、第4回検討会で報告いたしました。検討会の議論をもとに、同10月に厚生労働省は、「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する試案」(第二次試案)をまとめ、パブリックコメントを求めました。第2次試案は大筋においてモデル事業を発展させた形の調査委員会の設置を提言しており、モデル事業を主体的に担ってきた日本内科学会および日本外科学会の理事の意見をまとめて、添付の意見書を提出いたしました。
さらに11月には、自由民主党の医療紛争処理のあり方検討会より、第2次試案からさらに踏み込む形で、医療安全調査委員会の創設などの新制度の骨格が示されました。新制度は医師法21条の改定のための重要なステップですが、届出の範囲や運用の仕組みなど、これから検討すべき重要な課題が残されています。このため、各学会は協調して、新制度の設立に向けて積極的に発言し、制度設計に取り組むことが必要と考えております。
つきましては、会員の皆様におかれましても、この新制度の創設に対するご理解を賜り、また積極的にご意見等をいただきたく、お願い申し上げる次第です。
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日本外科学会
http://www.jssoc.or.jp/aboutus/relatedinf/info20071128.html
会員各位
社団法人日本外科学会
会長 兼松 隆之
医療安全管理委員会
委員長 高本 眞一
この度、日本内科学会との連名で「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する試案」(第二次試案)に対する意見書を提出しました。
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平成19年11月2日
意見書
社団法人 日本内科学会
社団法人 日本外科学会
厚労省死因究明等検討会第二次試案に
関する意見について
1)総論
医療事故が社会問題化する中で、医療安全の向上と医療への信頼の回復が喫緊の国民的課題である。その為には診療に関連した死亡事例について死因を究明、分析して真相を明らかにし、適切な対応策を立てて、それを医療機関、医療従事者に周知徹底して再発防止に役立てる社会的システムの構築が不可欠である。基礎医学、臨床医学の基本領域19学会は、平成16年9月にそのための中立的専門機関の創設を求める共同声明を出した。平成17年9月より厚生労働省補助金事業として「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」が38学会の支援のもとに開始され、日本内科学会はその主体としてモデル事業を運営し、日本外科学会は最も関連した臨床学会として全面的に協力し、共にモデル事業を推進してきた。
このたび厚生労働省より「診療行為に関連した死亡の死因究明等の在り方に関する試案(第二次試案)」が公表された。この第二次試案において、目的を原因究明と再発防止と明言し、専門的第三者機関の創設へ向けてより具体的な提案がなされた点を高く評価する。日本内科学会と日本外科学会の両学会は、この事業が真に国民と医療従事者のためになるべく、積極的に発言し、関与したいと考えている。
原因究明、再発防止のゴールは医療安全の向上である。この委員会は中立性、公正性、透明性をもって運営されねばならないが、この事業を主体的に担わねばならないのは専門家集団としての医師である。事例が発生した病院はもちろん、全ての専門学会が調査分析、再発防止に向けての活動に参画しなければならない。一方、医療安全の向上のために提言された再発防止策を実施する当事者も病院であり、医療従事者である。従ってこの制度は病院および医療従事者が積極的に参加できる仕組みでなければならず、この積極的な協力が一方的な責任追及や処分を生む仕組みとなるのでは、委員会活動の効果的な継続は極めて困難となる。
本来、医療は医療従事者と患者との信頼関係の下で行われるべきものであり、また多くの医療過誤はシステムエラーの結果として発生するものであるから、個人への責任追及が必ずしも再発防止、医療安全の向上につながらないことは自明である。その意味で、刑事処分は可能な限り謙抑的であるべきであり、新制度ではシステムエラーを十分に考慮して、過失をおこした医療従事者及び医療機関に対しては、再発防止のための再教育を中心とした行政処分システムを構築すべきである。
2)各論
A)組織について
多数の事例を全国的に取り扱う事業である点を考慮すると、医療に最も関与する厚生労働省に関連する委員会として設置されるのは現実的であると考える。
B)届出制度の在り方について
全ての診療関連死をこの委員会へ届出ることを義務化することで、医師法21条に関しては「異状死の中に診療関連死を含めない」という改正を含んだ法の整理を行うべきである。義務化することで届出を怠った場合になんらかのペナルティはやむを得ないが、21条違反のような刑事処分ではなく、厚労省からの行政指導レベルであるべきである。また届け出るべき診療関連死の内容は具体的に定義すべきである。
C)警察に通報すべきとされる「刑事責任を追及すべき事例」について
警察に通報すべきとされる「刑事責任を追及すべき事例」についても、医療の不確実性とシステムエラーの観点から医療現場では明確に定義することは容易でない。個人の責任に帰すべき極めて悪質な、あるいは故意の重大な過誤などに限定されるべきものと考える。しかし、明らかに過誤である診療行為でも、システムエラーの視点から発生に至った原因分析や過程等の検討が必要であり、診療行為に関連して発生した死亡事例についてはまず全てこの委員会での医学的な調査、評価を受け、その専門的判断を踏まえて限定されたものについてのみ刑事責任が検討されるべきである。
D)患者遺族との関係について
この委員会は、事例の医学的調査のみならず、病院と患者遺族との信頼関係の悪化を防ぐための活動も併せて行うべきである。調査結果報告書が交付されるまでに約6ヶ月の時間を要し、その間に病院と患者遺族との信頼関係が悪化する例がモデル事業で散見されるからである。調整看護師は、この調査活動の開始時より遺族、病院の両者に接触する唯一の存在であり、調査報告書が交付されるまでの間に両者の信頼関係を悪化させないよう、出来ればそれを改善するようなメディエーター的活動を行うべきであり、そのための要員を確保し、その養成、教育システムを構築することが重要である。
E)医療審議会の設置について
再発防止のための処分に関しては、刑事処分ではなく再教育を中心とした行政処分が主であるべきと考える。行政処分については、行政処分を勧告するための医療関係者、法律関係者により構成される独立性のある「医療審議会」を設置する必要がある。不適切な診療行為に関わる行政処分はこの審議会から処分を勧告し、医道審議会はそれを尊重して速やかに実施する。診療行為に関連しない行政処分については従来通り医道審議会で行う。医療審議会は医療従事者の自律的活動として、日本医学会、日本医師会、日本看護協会などを中心とした広範な医療従事者の協力を得て、中立的、公正に行われる必要がある。 医療事故は個人の過失だけでなく、システムエラーとしても捉える視点が重要であり、そのうえで調査結果報告書を踏まえて速やかに再教育を中心とした行政処分が勧告される必要がある。また、医師のプロフェッショナル集団としての学会も独自に教育的な処分とシステム改善策の提案をすることが求められる。
平成19年12月20日付 賛同
特定非営利活動法人 日本気管食道科学会
有限責任中間法人 日本救急医学会
特定非営利活動法人 日本胸部外科学会
有限責任中間法人 日本消化器外科学会
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
有限責任中間法人 日本大腸肛門病学会
有限責任中間法人 日本乳癌学会
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