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(投稿: by suzan)
The Mainichi Mededical Journal 11
November 2007 Vol.3 No.11 p948
弁護士が語る医療の法律処方箋 第8回 病院対象暴力への対応
「医療に専念するには弁護士・警察との連携も」
井上清成
弁護士、医療法務弁護士グループ代表
○院内暴力犯の増加
医療者に対する暴力暴言が止まらない。医師や看護師に暴力をふるったり、医師に土下座を強要したり、看護師に罵声を浴びせたり、という類である。蛮行に及ぶのは患者のみならず、患者の家族が主であることも多い。
ところが、これら暴言暴力に対し、病院・診療所が厳然と対処する例は必ずしも多くないようである。もちろん、病気で苦しんでいる患者が苦しみに耐えかねて医療者に八つ当たりすることは昔からあったし、医療者もそれはそれとして気持ちがわかるので、どうというほどのことはないであろう。増加が問題になっている事犯は、単なる八つ当たり程度の話ではない。
悪質な暴言暴力の増加、そしてそれに厳然と対処できず苦しむ医療者の状況こそが大きな問題なのである。
○暴言暴力は犯罪行為
世の中の各種の暴言暴力には、いろいろな名称がつけられている。夫が妻に暴力をふるう家庭内暴力、借金取立てに際して暴力をふるう民事介入暴力など、枚挙にいとまがない。暴力を放置しておくと、家庭は崩壊し、債務者は自殺してしまう。そこで、それらはいずれも社会問題化したため、暴力には厳然と対処するのが当然という社会の風潮が形づくられた。
しかしながら、院内暴力、言い換えれば病院対象暴力については、今もって健全な社会の風潮が形づくられていないように思われる。医療者に対する暴力が黙認されていれば、医療が崩壊してしまうにもかかわらずだ。これも「医療不信」のゆえなのであろうか。
○暴言暴力と誠実な医療は別次元
有識者の一部には、「病院の対応が不十分だから医療不信を招いている。まずは誠実な医療を行うのが先だ」などという論調で、あたかも医療者は当面は暴言暴力に耐えるべきだとも言わんばかりの発言をする人もいるようである。家庭内暴力を阻止するより先に妻が誠実に対応すべき、民事介入暴力を阻止するより先にまず借金を返すべき、とでも言うかのようである。少なくてもそのようなニュアンスに受け取られても仕方ない発言のようにも思う。そもそも医療の不誠実さを前提とした論調自体に問題があるのだが、今しばらくこの点はおくとしても、暴言暴力と誠実な医療を関連づけること自体が不当であることは明らかであろう。なぜなら、暴言暴力は社会の最低限のルールにすら違反しているものだからである。
つまり、病院対象の暴言暴力と医療者の誠実な対応とは、全く別次元の事柄であることに留意しなければならない。
医療者への暴言暴力は、刑法222条に定める脅迫罪、刑法208号に定める暴行罪に該当しうるものである。また、病院・診療所にとっては、刑法261条に定める器物損壊罪、刑法234条に定める威力業務妨害罪に該当するかも知れない。
これらの犯罪に該当するのではないかと思った時には、勇気をもって厳然と110番通報すべきであると思う。医療機関自体を守ることももちろんであるが、何よりもまず、そこで働く仲間である医療者を守らなければならないからである。
なお、「御礼参り」を怖がることもあるかも知れない。しかし、それを阻止する最も有効で適切な手だては、警察や顧問弁護士を動員して、オープンかつ公式に対処することである。暴言に対しても全く同じに考えてよい。要領は、直裁的に、オープンに、公式に、そして厳然と、である。
○顧問弁護士と密に連携
もちろん、個別の事案ごとで微妙なニュアンスがあるので、対応方法に迷いが出るかもしれない。110番通報する時もそうであるが、顧問弁護士と常に密な連絡を取り合い、連携して対応するのが確実であり、安心でもある。そして、暴言暴力事犯では、病院・診療所自身で一度対処したら、あとは警察と顧問弁護士にすべて任せてしまうのが、後々のことを考えても無難であろう。
以上のような方法で、暴言暴力を排除し、早く、安んじて本来の医療業務に集中できるように復帰することが、医療者のみならず一般の患者、そして国民に望まれるところであろう。
先生、こんばんは〜 暴力暴言によって、傷ついている先生方のためにも、毅然と対処するきっかけを作らない限り、マスコミによって勝手につくられたと言ってもいい医療不信が、なくらないと思います。
コンビニだけでは、ありませんが、世の中便利になるにつれて、その便利さに甘え、便利さすべてが、人のためになるのかとも思います。便利さが、サービスとして当たり前だと勘違いして、色々なところで問題をおこしているような気がします。
医療もまさしくそうではないかと。医療、あるいは、すべてに、当てはめてしまっていいのかと… マスコミは、早く、医者をバッシングする偏った考えをもつのではなく、国民一人ひとりの問題だということ、医療を悪くするのもよくするのもマスコミの影響が大きいってことをわかってほしいですね。
M3の医者は、前向きな先生方が多いとある先生が、仰ってました。その気持ちが、無駄にならないようにといつも願ってます。
投稿情報: E | 2007年11 月28日 (水) 20:14
数々の裁判の体験から言えることですが、最悪な場合、裁判官が決まれば結果がわかってしまうことがあります。
弁護士のせんせいもピンキリです。
やはり、ヤメ検のせんせいは頼りになりました。
投稿情報: せんせい ありがとう♥ | 2007年11 月29日 (木) 15:31