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医療安全 No.12 4/2 2007年6月号の特集が
「診療関連死の死因究明等」の問題を読み解くでした!!結構いろいろなバリエーションがあって読みやすいのですが、とりあえず気に入ったのからあげていきます。
こちらもよろしくお願いしますo(^-^)o ..。*♡
死因究明検討会6 ロハス・メディカルブログ 2007年07月26日
http://lohasmedical.jp/blog/2007/07/post_765.php#more
厚生労働省試案の要点と制度化への検討課題
厚生労働省医政局総務課医療安全推進室長 佐原康之氏
(医療安全 No.12 JUNE 2007 p32-33)
医療独自の事故調査システムの必要性
―試案の反響はいかがですか?
3月9日に試案を公表し4月20日の第1回「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」を開催するまでに,パブリックコメントを募集しました.コメントは全部で140通いただきました.学会など団体としてのコメントも多いので,意見を寄せた実人数はもっと多いでしょう.
個人では医師が多く,患者遺族からのものもあります.みなさんが真剣に書いていることがひしひしと伝わるものばかりでした.これらのコメントは,5月の第2回検討会に資料として提出し,それらも踏まえながら議論を進めていただきたいと考えています.
―医療事故を調査する組織はこれまでなぜ創られなかったのですか?
航空機や鉄道事故は発生すれば誰にでもわかりますが,医療事故は患者さんにすらわからない.1O年程前には医療事故についてほとんど語られませんでしたが,その後状況は大きく変わり,今や医療事故がないという医療機関はきわめて少ないでしょう.しかし,医師法や医療法といった法律は,医療事故があることを十分ふまえてつくられておらず,届出や調査のあり方を含め,現行制度の見直しが必要なのかどうか,議論が必要な時期にさしかかっていると思われます.
―調査組織は,「行政機関または行政機関の中に設置する委員会を中心に検討する」とありますが.
モデル事業について指摘される重要な課題のひとつは,調査権限がないことです.たとえば遺族からの事案を受け付けるべきだという意見もありますが,病院側が拒否すれば調査はできません.医療機関でも,遺族でもない,第三者的立場で,公平な調査を行おうとすれば,事故調査に関する調査権限等が必要になります.たとえば国土交通省には航空・鉄道事故調査委員会があります.国内法で規定された権限を有しかつ独立した機関という位置づけです.
診療関連死の調査をいかに進めるか
―調査の手順はモデル事業がべースになると思います.死因究明の基本は解剖になりますか?
モデル事業では解剖を基本にしています.法医・病理医・臨床医の三者立ち会による解剖スタイルがとられていますが,モデル事業の解剖従事者に調査を実施したところ概ね好評で,「三者で解剖所見に照らしながら議論をすることで解剖の質が向上した」という
意見が多かったです1).またこれまで遺族に対応することが少なかった法医や病理医から,「遺族の真剣さを肌で感じた」「死因に納得できない,死を受け入れたくないという気持ちの遺族を前に,科学的・客観的な説明で対処することには限界があると感じた」などの意見もあがりました.ただ,検討会委員の堺先生もおっしゃっていますが,解剖だけですべてがわかるわけではありません.カルテや心電図から患者の状態を見て適切な医療が提供されたか,という臨床医の視点が非常に重要になります.解剖がべースだがそれだけでは死因究明にならないというのが診療関連死調査の特徴です.
―異状死届出間題の解決が急がれます.
検討会で議論すべき課題のひとつです.診療関連死について調査組織への届出義務を課すのであれば,医師法21条に基づく警察への届出との関係を整理する必要があるでしょう.そのためには,診療関連死とは何かを明確にしていく必要があります.「医療事故情報収集等事業における報告を求める事例の範囲及びその具体例」(医政発0921001号)で,具体的なケースが例示されているので,試案ではこれを参考に検討してはどうかと提案しました.
―院内調査報告書が重要な情報源になると思います.
モデル事業では,依頼医療機関が院内事故調査報告書を提出することを必須としていますが,提出された報告書の質はさまざまで,評価に活用できるものもあればできないものもありました.モデル事業では,本年4月に「院内調査委員会の報告書のひな形」を作成しています.今後はこれを参考に,最低限必要な項目を記載するよう医療機関側に依頼することになります.院内調査報告書を調査組織でどう活用するかも課題のひとつです.
調査結果の活用と満足度
―調査結果は裁判などの資料として使われるのでしょうか?
医療機関にとって,再発防止に資するよう調査の過程で反省点等を話すことが重要である一方,のちのち調査結果が裁判で使われるなら,不利な事実は話したくないとも思うでしょう.刑事手続きにおいては,調査緒果報告書は活用されないようにすべきとの意見もあります.議論されるべき重要なポイントでしょう.また民事では,こうした中立・公正な観点からの評価結果があることで,医療機関とご遺族との話し合いがスムーズにいくし,裁判やADR(裁判外紛争処理)でも大いに活用可能という意見もあります.
―行政処分にも活用されますか?
現在,医師免許停止等の処分は厚労省の医道審議会に諮って決められますが,医師の業務上過失致死罪などが確定した時点で判断されるのが通例です.医師側には刑事罰に対する強い抵抗感がありますが,故意や重大な過失に対する刑事罰をもなくすことは困難でしょう.それ以外のケースについて,刑事罰,民事訴訟,行政処分のバランスをどうして考えていくのか,検討会でも再考すべきとの指摘がありました.リピーター医師等について,刑事で罰金50万円というのではなく,行政処分で再教育を受けなさいというほうが,再発防止や患者の納得にもつながるという意見もあります.医道審議会と調査組織からの報告書との関係も検討課題だと思います.
―モデル箏業において,依頼医療機関や遺族は満足していますか?
いま,その調査に着手したところです.
遺族からは,「病院側に対し強い不信感があり,医療過誤が明確に指摘されない結果の場合も,その思いは変化しなかった」という声もありますが,モデル事業に参加したこと自体には概ね肯定的で,死因究明と医療の質改善のために中立的第三者機関の設置を望む声が見受けられました2).
―最後に,医療安全管理者に向けて.
モデル事業に参加する場合も,院内調査委員会を立ち上げることが前提です.医療事故調査の第三者組織ができたとしても,すべて丸投げして終わりということにはならないと思います.
今後は院内調査委員会のあり方がますますクローズアップされていくと思いますし,院内調査の手法を確立していくことが必要でしょう.また,死因調査に先立ち,医療機関側からご遺族への十分な説明や対話も重要でしょう.そうした一連の取り組みのなかで,医療安全管理者にはリーダーシッブを発揮してほしいと思っています.
参考文献
1)中島範宏,武市尚子,吉田護一:モデル事業の評価依頼医療機関とモデル事業解剖従事者の視点から.厚生労働科学研究費補助金医療関違死の調査分析に係る研究,2006.
2)武市尚子,中島範宏,岡野憲一郎,吉田護一:モデル事業の評価――遺族の視点から.厚生労働科学研究費補助金医療関連死の調査分析に係る研究,2006.
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