ハイリスク分娩管理料が加算されるようになり、糖尿病合併妊娠や妊娠高血圧症など
ハイリスクと考えられる分娩に関しては3万円ほど加算されるようになったのです。
その趣旨としては、「病院のためではなく、せめてこのお金で勤務医にハイリスク分娩手当てをつけてあげてください」との狙いだったとききますが、えっと。もらった人いらっしゃいますか?・・・しーん。
という状況です。そのアンケートを日本産婦人科医会が調査されましたのでそのご報告です!
産婦人科勤務医の待遇改善に関するアンケート調査報告
平成19年3月 日本産婦人科医会
調査概要
1)調査期間 平成19年1月15日~1月31日
2)調査対象 全国分娩取り扱い病院1,281施設
3)回収状況 回収794施設(62.7%) 返送15件(分娩取り扱い中止等)
はじめに
産婦人科勤務医の現状は医療の高度化への対応、患者への説明、診療外の業務(院内委員会活動等)や研修医の指導等による勤務医の業務量の増加(過重労働)、大学医局の医師引き揚げによる同僚医師の減少(医師引き剥がし)、さらには民事・刑事訴訟の増加等患者とのトラブルの増加により、産婦人科勤務医の労働環境はますます悪化している。
そこで厚生労働省に対して「少子化対策並びに産科医療安全確保対策に関する要望書」を平成17年6月に提出したが、ここには「他科に比べ当直、オンコールが多い割には低収入であることが産科医不足の一因であり、当直は夜勤と認定し、翌日午後は休みにするなどの配慮をし、夜勤当直料を増額するよう、さらには分娩件数に応じたドクターフィーも考慮していただくことで、産科医を志す者もある程度増加することも期待できる。国からのご指導をお願いしたい。」
と坂元会長自ら記された。幸いにもハイリスク分娩管理加算の新設、ハイリスク妊産婦共同(管理)指導料(附:退院時共同指導加算)の新設、出産育児一時金の増額すべてが要望どおり認められ、平成18年度より実施されたが、国にお願いした勤務医個人への還元に関しての指導はなされない状態であった。
そのため勤務医部では、平成18年7月10日付けで全国の分娩取り扱い施設の産婦人科責任者と施設長宛に、それぞれ「ハイリスク分娩管理加算・ハイリスク妊産婦共同管理料新設の考え方と今後の産婦人科医療について」並びに「ハイリスク分娩管理加算・ハイリスク妊産婦共同管理料新設の考え方並びにお願い」と題して文書を送付し、勤務医の待遇改善を要望した。
そこで勤務医部では、前述の要望書の効果が現れているかどうか、すなわち産婦人科勤務医の待遇改善が進々でいるか否かを調査する目的にて、平成19年1月アンケート調査票を、すべての分娩取り扱い病院の産婦人科責任者宛に送付した。本小冊子はその結果をまとめたものである。徐々にではあるが産婦人科勤務医の労働環境や収入が改善されようとしていることが伺われる。
産婦人科勤務医は3Kの職場で働いており、それに見合った収入がないことは明らかである。その結果、満足感・達成感・やりがいを勤務医が感じていない。時間的・金銭的余裕(QOL)が保たれなければ産婦人科を専攻しない。時間的ゆとりを与えるためには、仕事量が一定なら医師数が増加しなければ一人当たりの勤務量は減少しない。そこで、医師が増加して一人当たりの勤務量が減少するまでは、勤務医の収入を仕事に見合ったものにすることが極めて重要である。今後とも関係各位のご尽力を期待したい。
(社)日本産婦人科医会
1,281施設にアンケートを送付し、分娩取り扱い中止等による返送分15施設を除く1,266施設中794施設から回答を得た。回答率は62.7%であった。都道府県別・施設分類別回答状況を表に示す。 4.産婦人科医師数 5.当直手当の増額について H18年4月以降の当直手当の増額については、「増額あり」は794施設中73施設(9.2%)、「なし」が706施設(88.9%)と1割未満に留まっていた。施設分類別では大学、厚生連、杜保が5%未満と少なかった。増額の金額は75%が2万円まで、3万円までが91.3%を占めており、平均は16,695円であった。 6.大学等からの当直の応援の有無 大学等からの当直応援の有無については、「あり」が46.5%、「なし」が50.5%であった。 7.常勤医と応援医の当直料の差 常勤医と応援医の当直科の差については、「常勤医の方が高額」は回答のあった378施設中1施設に過ぎず、「同額」が19.8%、「応援医の方が高額」が79.9%であった。施設分類別では都道府県立において同額の割合が低かった。 8 当直を夜勤とみなし翌日の勤務を緩和していますか 当直を夜勤とみなし翌日の勤務を緩和しているかについては、「緩和している」が7.3%にすぎなかった。施設分類別では国立、社保がO%であり、大学も77施設中2施設、2.6%の低率に留まっていた。常勤医師数別では1人、2人、5人、11人以上に少ない傾向がみられた。 分娩手当ての支給については、「なし」が794施設中617施設、77.7%であった。 希少手当て等特殊勤務手当ての有無については、「あり」が5.2%「なし」が92.2%であった。 他科医師との別賃金体系の有無については、「あり」が4.8%「なし」が92.8%であった。施設分類別では社保、私立に「あり」が若干多い傾向(「あり」がそれぞれ9.1%、9.5%、「なし」がそれぞれ90.9%、83.9%)がみられた。「あり」の場合の内容については、産科拘束料・自宅待機料の支給、時間外手当の割り増し、基本給等級の特別アップの外に、定額一律の業績給(年間1人当り250万円)、休日夜間手当て月20万円等があげられた。 1)分娩待機料 資格はあるが申請していない施設(4.5%)を含め調査対象の64.2%がハイリスク分娩管理加算の対象施設であり、ハイリスク分娩管理加算の算定は全調査対象施設中52.8%でなされていた。また、ハイリスク妊産婦共同管理料算定施設の届出は全調査対象施設の44.8%でなされていた。ハイリスク分娩管理加算およびハイリスク妊産婦共同管理料の産科医師への還元については、「還元あり」が794施設中未回答32施設を除いてわずか5施設O.6%にすぎなかった。施設分類別では済生会1施設、私立2施設、その他2施設であった。 今回の調査結果を総括すると、平成18年4月以降の当直手当の増額を行った施設が9.2%、金額は91.3%が3万円まで、当直翌日の勤務緩和を行っている施設は7.3%、分娩手当ての支給が全く行われていない施設が77.7%に上ること、希少手当て等特殊勤務手当て支給施設は5.2%、他科医師と別賃金体系を採用している施設は4.4%と、分娩手当ての支給を除けば産婦人科医に対する給与面からの支援がむしろ例外的であることが示された。分娩手当ての支給については、質問の不手際もあって回答に若干の混乱がみられたため、支給対象等の支給内容の詳細な分析が聊か困難であるが、8割近くの施設において分娩手当ての支給が全く行われていないことは明らかである。 施設群間の差異については、当直手当の増額において大学、厚生連、社保に少ない傾向、大学からの応援の有無について国立、都道府県立に少ない傾向、常勤医と応援医の当直料の差については都道府県立に同額の割合が低い傾向、当直翌日の勤務緩和については国立、社保がO%、大学が低率、分娩手当てについては大学、国立、都道府県立、日赤に「なし」が多い傾向、希少手当て等特殊勤務手当てについては市町村立に「あり」がやや多い傾向、他科医師との別賃金体系の有無については社保、私立に「あり」が若干多い傾向が指摘されるが、以上いずれも統計的に確証されたものではない。 常勤医師数による差異については、当直翌日勤務の緩和において医師数1人、2人に少ない傾向がみられ、それなりに首肯されるところであるが、5人、11人以上にも少ない傾向がみられた。その他、大学等からの応援の有無について8人以上の施設に少ない傾向が見られた以外、常勤医師数と待遇改善に関連傾向はみられなかった。 産婦人科勤務医は今疲弊している。産婦人科特有の過重労働と勤務医不足によりもたらされる過重労働とが積み重なって、益々疲弊している。その結果「立ち去り型サボタージュ」(開業や転科)が起き、残った勤務医はますます過重労働に陥っている。しかしそれに見合った収入はない。当直は元来「宿直勤務は週1回、日直勤務は月1回を限度とる」と、厚労省が2002年3月、日本病院会などに送った通知にはそのように明記されているという。さらに、医師に宿直や日直をさせるには、労働基準監督署長の許可が必要であるが、厚労省の通知は許可条件として、「病室の定時巡回など軽度・短時間の業務で、十分な睡眠時間が確保されなければならない」と記されているという。これに当てはまらなければ当直ではなく夜間勤務であり、夜勤手当が支給されるべきである。今回のアンケート調査でも当直料が増額された施設が約9%であり、翌日の勤務の緩和が約7%とまだ1割以下であり、まだまだ不十分である。 われわれ勤務医は「誰かがどこかで自分の勤務条件を改善してくれるであろう」と、棚ぼたを待っているのではなく、自ら行動して、自分たちの労働環境を改善する必要がある。昨年医会と学会の連名でお送りした産婦人科勤務医の待遇改善を要請する手紙を有効に利用して、自らが待遇改善を県や市町村と交渉した方々もおられると聞いている。どうかそれぞれの立場でそれぞれができることを行い、自らのまた後から続く若き産婦人科医のために是非とも待遇改善を勝ち取っていただきたい。 平成17~18年度の2年間、勤務医部の担当常務理事として部をお預かりし、最後に本アンケート調査結果をお送りすることができましたこと、勤務医委員会の栃木委員長を始めとする委員の皆様、また清川担当副会長・栗林主担当幹事を始めとする役員の皆様方のご指導ご支援に心より感謝致しております。本アンケート調査結果が産婦人科勤務医の待遇改善の晴矢となることが、勤務医部担当委員・役員一同の願いです。
施設分類別では国立、都道府県立に少ない傾向がみられた。常勤医師数別では8人以上の施設に少ない傾向がみられた。
施設分類別では、大学、国立、都道府県立、日赤に「なし」が多い傾向がみられた。厚生連に「あり」が多い傾向がみられた。
施設分類別では市町村立に「あり」がやや多い傾向がみられた。(「あり」11.9%「なし」87.0%)。12.他科医師との別賃金体系がある場合の内容
2)産科拘束料あり。時間外手当割り増し。
3)産科当直料部長・副部長21,500円、医師19,O00円
(産科以外当直休日11,500+4h、平日11,500+3h)
4)当直手当、休日手当
5)わずかに当直料のみ
6)自宅待機料
7)分娩・手術の費用の3%を3等分している。
8)年俸制医師によって様々
9)当直料で、産婦人科は二次救急としているので高い。
10)給与規定に定める額より、2号俸アップで給与支給。
11)当直料、日直手当などに産科手当の加算。常勤の場合は、調整額で加算。
12)当直回数が多いので、1回目は他科と同額で以後増額。
13)基本給の水準に差をつけている。
14)年間総収入(産婦人科)からの割合で増減する(年収制)。
15)分娩の有無に関わらず、待機手当の支給(他科にはなし)
16)オンコール手当て(待機)
17)院内、院外当直料が同額。
18)時問外手当を特別レートにて算定(麻酔科、産婦人科限定)。
19)常勤医も非常勤医と同額の当直料。当直帯のみ分娩手当(常勤医のみ)。
20)当院は年俸制ですので、毎年交渉によって給与が決まります。少なくとも他科より格段に
給与は多くいただいています。
21)業績給として年間一人当たり約250万円の増額。
22)待機手当10,OOO円/日(夜)、呼び出し手当十10,OOO円(他科同様)
23)産直手当
24)時問外手当に限度があり、それを慢性的に超過しているため、3万円の手当がある。
25)待機料を優先的に支給されている。
26)非常勤医師に対し、他科医師と格差あり。
27)小児科応援医師(健康診断が主)が産婦人科医師よりO~7,000円/半日、高い。
28)休日・夜間手当20万円/月
金額は30,O01円~40,OOO円が1施設、70,001円~80,000円が2施設であった。
まとめ
待遇に関する各質問への回答について施設群間の差異、産婦人科常勤医師数(人数の少ない施設は勤務環境が厳しいことが推測されるので、医師引止めのため待遇改善が積極的に行われているのではないか)による差異、年間分娩数(施設の活動度を示すと思われるが、活動度の高い施設は待遇改善に積極的か)による差異についても検討した。
年間分娩数と待遇改善にも関連傾向はみられなかった。
最後に、医師への還元を期待して導入されたハイリスク分娩管理加算およびハイリスク妊産婦共同管理料については、「還元あり」が僅か5施設に過ぎなかったことは残念な結果である。今後、医師への還元が広まってゆくか注目されるところである。あとがき
その他ご意見
1)医師が2人ではどうしてハイリスク分娩管理加算ができないのか?
2)現在2人体制ですが、ハイリスクを扱わざるを得ません。2人でも管理加算が取れるようにして下さい。地方には厳しすぎます。3人体制の病院には、冬は雪の山を越えなければ
なりません。
3)公立病院の当直料は厚労省が上限2万円と決めているので、それ以上に上げられない。上げたら闇給与となって問題になるというのが事務方のいつもの言い分で、ここを改善しないと公立病院から産婦人科医師は消えてしまうと思う。ちなみに大学からのアルバイト料は大学の言いなりにならざるを得ず、常勤医との差が3倍にもなっている。
4)せめて金銭面くらい考慮しないといなくなる。
5)待遇改善は掛け声としてあっても一向に進みません。医会として、自治体に要望を提出していただくわけにはいかないでしょうか。
6)医会は言うだけで何も変わりません。近々閉鎖する可能性大です。
7)このようなアンケートがしばしば送られてきますが、本当に圧力をかけていただけるのでしょうか。早くアンケートの整理を行い、しかるべき圧力をかけていただきたく思います。現場は切実です。
8)このような調査は事務宛にしてもらった方がプレッシャーになりませんか?
9)今までのデータが整理されて賃上げの資料とできることを期待します。
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