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[週刊東洋経済]医療特集を読む
東京日和@元勤務医の日々 2007.04.24
http://blog.m3.com/TL/20070424/1
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世諭調査から見る国民が望む医療制度
低負担と平等性を志向 自己負担はメリハリ重視
(週刊東洋経済 2007.4.28 p116-119)
調査からは、低負担で平等な給付を志向する世論がうかがえる。その一方で、必要性の低い医療での患者負担増には賛成している。制度設計の講論が必要だ。
わが国の医擦制度は、いま大きな岐路にある。国民の健康への関心が高まる一方で、技術革新と少子高齢化が進行し、医療費は増加の一途をたどっている。
増え続ける医療二ーズを、限られた財源で賄うためには、医療制度の設計理念をめぐる根本的な議論が不可欠である。多くの国民は現在の医療制度に不安を抱えており、局所的な対策を施しつつ負担を徐々に増やしていく従来の手法は、限界に達しつつある。設計理念を明らかにして、医療制度をつくっていくことが求められている。
国民が求めている医療制度を明らかにすべく、日本医擦政策機構では全国の有権者を対象に医療についての世論調査を実施した。
国民は「低負担」と「平等」を重視
まず、医療制度を三つの類型に整理した。
これら三つの類型は、医療費の全体規模をどの程度とするのか、そしてどこまで公費で医療費を負担するのか、という二つの切り口に基づいて導かれたものである。
第一の類型は、「高負担高給付・平等」型である。高い水準の公的医療を国民に等しく給付する代わりに、その費用を賄うための税や社会保険料等の負担も重くなる。北欧諸国がこの類型の代表であり、手厚い医療を公的に給付し、私費による医療の範囲は小さい。
第二の類型は、「低負担低総付・平等」型である。標準的な公的医療を国民に等しく給付し、税や社会保険料の負担を抑える。G7の中で、対GDP比の医療費が最も低く、公費の割合が最も高い英国やわが国はこの類型に入る。
第三は、「低負担低給付十自己選択」型である。標準的な公的医療を国民に等しく給付して税や社会保険料の負担は抑えつつ、標準以上の医療は個人が選択して私費(私的保険・旨己負担)で受けるという制度で、米国はこの類型に準ずる。
これら三つの類型は、その設計理念において大きく異なるものであり、どれを選択するかによって、日本の医療の方向性もおのずと変わってくる。
今回の世論調査では、これら三つの類型の中で最も望ましいと考える制度を尋ねた。
その結果、57%が2番目の「低負担低給付・平等」型を、25%が「低負担低給付十自己選択」型を、そして12%が「高負担高給付・平等」型を選択した(Q1の円グラフ)。
多くの国民が平等な医療制度を重視し、負担増には抵抗感が強いことが確認された。
経済力で異なる理想像 今こそ国民議論が必要
ただし、この緒果をより詳細に検討してみると、理想とする医療制度のあり方は、回答者の経済状態によって大きく異なることがわかる。今回の調査では、回答者に所得と資産も尋ねており、その所得、資産状況に応じて、「高所得・高資産層」(世帯収入800万円以上・純金融資産2000万円以上一全体の6%)、「低所得・低資産層」(世帯収入も純金融資産も300万円未満一全体の16%)、およびそれ以外の「中間層」(全体の78%)に分類して分析を加えた。
望ましい医擦制度として全体で最も支持率が高かった「低負担低給付・平等」型は、低所得低資産層では圧倒的な支持があるが、より経済力がある層では「高負担高給付・平等」型や「低負担低給付十自己選択」型を望む人々が増える。
最も経済力のある昔黒川得・高資産層では「自已選択」
の支持を集めた。型が最多の44%昨今、社会のさまざまな「格差」が注目を集めているが、労働条件や生活実態のみならず、求める医療制度にも経済力によってこれほど明確な違いが表れていることは、政治的に重大な意味合いを持つ。
医療制度の設計理念について根本的な議論を行わずして、なし崩し的にいずれかの方向に進めば、階層間の政治的亀裂を深めるおそれが強い。今、医療制度について国民的議論を行うことが極めて重要である。
公的医療の範囲について メリハリが必要
では、わが国の医療はどのような方向に進むべきなのか。すでに見たように、高負担高給付の北欧型医療制度や自己選択重視の米国型の医療は、高所得・高資産層を中心に根強い支持者はいるものの、大多数の支持を得るに至ってはいない。回答者の最大の支持を集めたのは「低負担低給付・平等」型の医療制度であった。
ただし、「平等な医療制度を求める」ことと、「すべての人のすべての医療費をすべて公費で給付すべき」こととは、必ずしも一致しないことに注意が必要である。
すべての人に公費で給付すべき医療と、そうでない医療とを、どのように区別すべきかについて昨今さまざまな案が出されている。今回の調査では、こうした案の中で代表的な九つを取り上げ、それぞれをどの程度支持するかを尋ねた。
その結果、九つの案のうち、五つの案について過半数が支持を示した(Q2)。
貴重な公費を、対象とする人や医療の内容によってメリハリをつけて大切に使っていくことが望まれているのである。
具体的には、どのようにメリハリをつけることが望まれているのであろうか。第一に、高額所得者の自己負担を上げることに8割以上の回答者が賛成している。興味深いのは、高所得・高資産層でも66%が賛成していることである。
第二に、医療上の必要性が低いにもかかわらず患者が付加価値を選択する場合(たとえば「救急性の低い
症状での夜間救急の利用」)には、自己負担を増やすことを有権者の過半数が支持している。
第三に、生活習慣病については本人による健康管理が報われる仕組みへの支持が多数を占めた。「予防可能な生活習慣病の医療費」について自己負担を増やすことには56%が賛成した。また、生活習慣の予防のために努力した人が報われるようにする仕組みとして「一定期間病気にならなければ保険料の一部が返ってくる」制度や「タバコ・酒類の税金を上げる」という案には、経済状態によって違いがみられるものの、それぞれ7割近い回答者が賛成した(Q3)。
医療制度の目指すぺき方向性(提言)
以上の結果を踏まえると、わが国で目指すべき医療制度は、以下の設計理念に基づいて設計されるべきだと考えられる。
①基礎は「低負担低給付・平等」型とする
回答者の意見を踏まえると、現状の医療制度と大きく異なる北欧や米国のようなモデルに急激に移行することは、多数の支持を得られない公算が大きい。医療のセーフティネットを「低負担低給付・平等」型で構築し、基礎を固めることが原則となる。
②高額所得者の保険科率を上げる
高額所得者の医療費自己負担の増加については、回答者の大多数のみならず、高所得・高資産層も過半数が支持している。今回の調査では、経済力の低い層ほど医療への不安を強く感じている実態が浮き彫りとなった(Q4)。
また、経済力が低い層ほど医療費を理由にして受診を控える実態も明らかとなった。経済的弱者もアクセスできる医療を広く整備するために、経済力のある人に現在以上の負担を求めていくことも検討しなければならない。
③医療上の必要性が低いにもかかわらず患者が付加価値を選択する場合、患者負担を上げる
(例一「救急性の低い症状での夜間救急の利用」)
真に必要な医療には公的保険を給付すべきだが、必要性の低い診療行為までにも公費を使い続ける余裕は、先進諸国で最も厳しい財政状況にあるわが国にはもはやない。
医療上の必要性が低くても、本人が医療サービスを受ける自由は残すべきだが、その場合のコストは本人が負担するのが適切である。こうして、貴重な公費を医療上の必要性が高い領域に集中させる。
④生活習慣病に対する健康管理が報われるインセンティブを導入する
(例一「一定期間病気にならなければ保険料の一部が返ってくる」「タバコ税を上げる」)
日本人の死因の6割を占める三大疾患(がん・心疾患・脳血管疾患)はすべて生活習慣病であり、こうした疾病の予防と治療には、本人の健康管理が不可欠である。
わが国の医療制度の原型は、結核や肺炎等の感染症が疾病構造の中心であった時代に設計されたものである。しかし、現在の疾病構造の中心は生活習慣病であり、そうした時代に合った仕組みが必要となっている。
現在の保険制度は、自助努力によって健康を維持した人が払った保険料や税金で、健康管理を怠って生活習慣病にかかった人の医療費を賄う構造になっている。これでは、公正な制度とはいえない。
健康管理へのインセンティブの導入は、日本人の健康増進、医療財政の改善、そして公正な制度の実現のためにも、重要な視点である。
こうした設計理念の議論を踏まえて、もう一度、最初に取り上げた「望ましい医療の類型」(Q1)について考察してみたい。
望ましい医療の類型としては、回答者の57%が「低負担低給付・平等」型を選択したことはすでに述べたとおりである。この57%の人たちを、公費の使い方にメリハリをつける上記の設計理念に賛成する人と、反対する人とに分けてみた。
具体的には、Q2およびQ3で、「賛成」は2点、「どちらかといえば賛成」は1点、「どちらかといえば反対」はマイナス1点、「反対」はマイナス2点として、全質問への答えの合計がプラスの人を「賛成派」、ゼロ以下の人を「反対派」とした。
こうした分析を加えると、「低負担低給付・平等」型を選択した57%の内、31%が「賛成派」であることが確認された。この31%という数字は、「反対派」の26%より、そして「高負担高給付・平等」型の12%よりも、さらに「低負担低給付十自己選択」型の25%より大きく、回答者の最大セグメントである。
つまり国民世論としては、「低負担低給付・平等」型を基礎として、セーフティネットは公費で整備する。そのうえで、経済力がある人、医療上の必要性が低い人、健康管理を怠る人にっいては自己負担を増やす。このようなメリハリの効いた医療制度が、最も支持される医療制度なのである。
現在わが国では「格差」について活発な政治議論が展開されており、その焦点は、多くの場合、世代内の格差を対象としている。
負担先送リが最大の「格差」を生む
しかし、医療をはじめとする社会保障制度において、真に深刻な格差は、現在世代と将来世代との世代間格差にある。
わが国は、国と地方を併せてGDPの約1.5倍に上る長期債務を抱えている。医療制度の本格的な改革を先送りし、財源を確保せずに給付を増やせば、将来世代にさらに大きなツケを回すことになる。
将来世代は高度成長の見込みもなく、所得も伸び悩む。その所得は、現役世代が積み上げた累積赤字の返済に使わざるをえないが、それだけではない。高齢化が本格化する中で、現役世代の将来の社会保障費の多くを支えることが期待されている。
そのうえに、現役世代の現在の医療費のツケまで上乗せするような愚だけは、断じて避けなければならない。「格差」の最大の問題は、将来に対する希望を失わせることにある。いま行われている改革の先延ばしは、将来世代の希望を失わせるものである。現役世代の見識がまさに問われているのである。
世代間格差の拡大を防ぎ、世代を超えて公平な医療制度を実現するためにも、医療制度の設計理念を根本から議論し、国民が求める医療制度を実現することが急務である。
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