女性セブンに医療ネタの特集が上がっている!
「しかもけっこうまとも」ということをドロッポ先生から教えていただきました..。*♡
女性週刊誌。。。私普段買いません。
というわけで、どんな記事??と好奇心からいってみます♡
救急車はもう助けてくれない
女性セブン 5月3日号 p39-41
“6分30秒"。この数字が何を表すだろうか。
これは、東京消防庁管内における、119番通報から救急車の現場到着までにかかった平均時間だ(平成17年)。救急軍の現場到着時間は年々遅くなっており、5年前の5分30秒から1分も延びている。
この数字の持つ意味はきわめて大きい。東京消防庁救急部救急指導係の大久保隆主弘主任はいう。
「心配停止など重篤の場合、処置が一分遅れるごとに生存率が7~10%も下がります。ですから救急車の、遅れは生命にかかわるんです」
横浜市安全管理局警防部救急課の菊池清博救急課長によれば、この原因は救急車の出動件数の増加にあるという。
「昨年こそわずかに減りましたが、ここ数年はずっと出動件数が増加傾向にありました。件数が多いと大気車が減り、結果として現場から遠く離れた部隊が向かうことになり、当然時間がかかってしまいます。
高齢化により、お年寄りが増えて救急車の件数が増えたことに加え、核家族化で家庭内に祖父母がいない家庭が増え、子育てを相談できる相手がおらず、子供が少し熱を出しただけでどうしたらよいかわからずに救急車を呼んでしまう母親も出てきているんです」
昨年4月末に横浜市が調査したところ、救急車が出動した軽症事案の約4割が“呼ぶ必要がなかったのでは"と疑われるものだった。
現場は医師の犠牲で成り立っている
実際、非常識な事例が数多く報告されている。
「病院に検査入院するのだけれど、荷物が多いから連れていって」とタクシー代わりに通報。「寒気がする」というので急行すると「ストーブのつけ方を教えてくれ」といわれた、など枚挙にいとまがない。
また、春のこの時期は新社会人らが無理にお酒を飲んだり、大学新入生が未成年にもかかわらずサークルの新入生歓迎会で無理にお酒を飲むなどして、救急車を呼ぶことが多い。新宿・歌舞伎町には毎晩のように救急車が出動している。
節度をもって飲んでいれぱ呼ぶ必要のない救急車だ。
「“うちの子が病気なのですぐ来てくれ”と119番通報があり現場に急行したが患者が見当たらない。母親に尋ねると“このワンちゃんです”というケースもありました。また共働きのため昼間に子供を病院へ連れて行けず、かといって夜間診療をしている病院を自分で調べるのが億劫で、ならば救急車を呼んで夜間も開いている病院に連れていってもらおうとする人もいます」(菊池課長)
昔は具合が悪ければ病院には自分で行っていたし、子供の具合が悪くなれば母が病院に連れていった。よほどのことがないと救急車は呼ばなかったが、いまは驚くほど気軽に使われているのが実情だ。しかしこんな救急車の“コンビニ化”は深刻な深刻な影響をもたらす。本当に必要とされている人たちが後回しになるからだ。
しかし問題はそれだけでは改善できない。救急車が迅速に現場に到着したとしても、患者を受け入れる病院側が疲弊しているからだ。横浜市立脳血管医療センターの永山正雄神経内科部長はこう話す。
「当直日は通常の昼間の勤務をこなしたのち、夕方から続けて当直勤務に入るというのが救急医療現場の医師の日常となっています。次々と運ばれてくるため仮眠は取れないことが多く。当直が明けるとそのまま一睡もせず、通常勤務が始まります」
夕方5時まで、32時間ぶっ続けの超ハードワーキングだ。
「これが月6回あるところが普通です。体力的に若くないとつらいとおもいますが、人手不足で40-50代のベテラン医師が担当することもあります」(永山部長)
医療ジャーナリストの油井香代子氏は、こんな過剰な勤務による危険性を指摘する。
「48時間一睡もせずに働く医師や、子供の顔は休日しか見ない、3日間風呂にはいれないという医師もいるほどで、現場は医師の犠牲的労働で成り立っています。救急医療にはとっさの判断や素早い処置が必要ですが、医師が忙しくて疲労困憊している。そのような状況下では医療ミスが起こっても不思議ではありません」
3月末、大阪府吹田市にある国立循環器病センターの集中治療室(ICU)専属の医師7人が次々に退職した。病院側は退職理由を明らかにしていないが、背景に過酷な労働環境があったと指摘する声は多い。
同じく先月、都内の立正佼成会付属佼成病院の小児科医師(享年44)が99年に自殺したのは「過労が原因だった」と東京地裁が認定した。過去には横浜市立大学や関西医科大学でも医師の過労死が問題になったことがある。
「もともと救急医療は内科や外科に比べて歴史が浅く、昔から現場には人が足りなかった。研修医もはいってはきますが、あまりの忙しさに残る人は少ない。そのため現場の負担が一向に軽くならず、多くの医師は疲れきっています」
これは「救急システム全体の問題」と指摘するのは愛知医科大学大学院医学研究科の野口宏教授だ。
救急医療体制は、風邪や腹痛などの軽度な患者に休日夜間診療所などが応対する「第1次救急医療」、入院や手術が必要な中程度患者に救急指定病院などが応対する「第2次救急医療」重篤患者に救急救命センターなどが応対する「第3次救急医療」に大別される。
「最初はすみ分けができていましたが、15年くらい前から1次救急を請け負うはずの開業医の間に“夜まで働いてもお金にならないから嫌だ”といって夜は診察しないケースが増えた。また中規模の病院が請け負う2次救急では“救急はもうからない”と民間病院は次々にやめてしまい、公立病院ばかりが対応することになりました。1次・2次の病院が弱体化してしまったことにより、本来重度の患者だけを扱う救急救命センターに軽度や中程度の患者まで押し寄せるようになってしまったんです」(野口教授)
近年では軽度から重度まですべての患者をひとつの窓口で受け入れるER(救急室)も増えてきている。救急隊員が現場で軽度か重度かを判断する必要はなく、ERで医師が判断するためロスが少ないのがメリットだ。
東京都では石原都知事が1期目に「東京ER構想」を推進し、墨東、広尾、府中の3都立病院にERを開設した。だが、それでも「実際は半数以上がER受診の必要のない患者」(ある救急専門医)が殺到する結果となり十分に機能していない。
医療費が安く医師が少ない日本
より深刻なのは、地方の惨状だと油井氏は指摘する。
「当直医が専門外」「手術中」「ベッドに空きがない」などと患者の搬送を断る病院は未だ多い。
「地方では大学病院さえも人手不足で、施設はあっても医師がいないので、救急患者を受け入れられないことも多い」(油井氏)
患者をたらい回しにすることによる悲劇も起きた。昨年8月に奈良県で、分娩中に妊婦が意識不明になった。高度な治療を必要としたため、主治医はより大きな病院への転送を試みた。しかし妊婦の受け入れを18もの病院が拒否し、6時間後に約60キロ離れた病院に収容されたが、1週間後に妊婦は死亡した。この事件は報じられ社会問題ともなったが、状況はなかなか改善されないのが現実だ。
神奈川県では昨年末、大腿骨骨折した90台女性が病院に40回以上断られ、搬送に5時間10分かかった例もあった。
さらに救急対応そのものを取りやめる病院も出てきている。青森県五所川原町の公立金木病院は医師不足で今年から救急指定取り下げ、救急車受け入れを休止した。高齢化の進む土地だけに、周辺住民の不安は深刻だ。地元の「金木病院の救急体制を維持する会」事務局担当の一戸彰晃氏はこういう。
「金木病院は近隣住民計4万人もの命を預かり年間搬送数が700件もあります。周辺に一般の開業医もありますが、救急はやりません。住民はもしもの時の不安でいっぱいです」
神戸市立西市民病院でも医師不足を理由に救急医療体制を縮小した。今後全国の地方都市で同様のケースが続出することが懸念される。
アメリカでは人気ドラマ「ER」で、救急医療に従事する医師たちの活躍ぶりも描かれ、現実も日本より先を行っているという。いったい何が違うのか。
「日本はアメリカに比べて医師の数が少ない。ある調査では、同じ規模の国立病院100床あたりの医師数は米106人に対して日本はわずか13人。ただその分アメリカの医療費は高額で、内科の検査費用は日本の十倍といわれますが、確かに日本が先進国のなかで救急医療が遅れているのは事実です」(油井氏)
アメリカの場合、GDPに対する医療費の比率は15%と高いが(03年、OECD調査。日本は7・9%)その分、より多く人件費がかけられ、たくさんの医師を用意できる。
重労働を重ねる救急専門医への待遇が悪すぎることも救急医減少の理由のひとつなのだ。
「救急で休む間もなく働いても、給料は大してもらえず、アルバイトしている医師も多い」(油井氏)
専門家の間では、人手不足解消のために救急専門医の待遇改善と負担軽減が必要という声も多い。
「救命センターには補助金が出ますが、大学付属病院など大きな病院の中の救命センターでは収益は本院に吸収されてしまい、救急専門医の待遇になかなか反映されない。これでは疲れ果てた中堅医師は病院を辞め、クリニックを開業して、“救急はやりません”となり、人手不足がさらに進む。この悪循環を断ち切るには、救急医療の保険点数を上げ医師の数を増やす必要があります」(前出野口教授)
また利用する側としては、不必要な救急車の利用を控えることが大切だ。前出の菊池課長が訴える。
「救急には市民の理解が必要です。市民には、自分たちの姿勢が救急の行く末を左右するという意識を持ってほしいですね」
東京では自力で通院できる患者向けに04年から民間救急コールセンターの運用をスタートしている。
ここでは民間の有料の民間の救急車を紹介している。事業者により料金体系は異なるが、事業者が車庫を出て搬送し、車庫に戻るまでが料金の対象となる。大体一時間で7000円くらいだ。
「タダだから」という理由でじゃんじゃん使えば119番のシステムは破綻する。
いつどこで自分、または家族が急病となり、救急車に頼る身になるかは誰にもわからない。その時安心して119番をダイヤルできるためにも、ひとりひとりの意識を高めることも必要だ。
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