臨床研修病院における救急科専門医の分布に関する検討

（関連目次）→臨床研修制度の問題点       救急医療の問題

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぽち→ 

（投稿：ｂｙ　僻地の産科医）

医学教育　第39巻　第5号
2008年10月25日号からですo(^-^)o ..｡*♡

　

   

   

    

　                           臨床研修病院における

          救急科専門医の分布に関する検討

　

     　   蔵本　伸生　　森本　　剛　　窪田　愛恵　　高田　香織
　　     前田　祐子　　関　　　進　　北田　　雅　　伊藤　俊之
　　     平出　　敦　

     　　    　      （医学教育　2008,39（5）:325～327）

 

要旨：
１）マッチングに参加している施設，および日本救急医学会の救急科専門医（認定医を含む）の勤務する病院をリストアップし，上記専門医が勤務する臨床研修病院の割合を調べた.
２）マッチングに参加した臨床研修病院は全国で1072であったが，救急科専門医が勤務する臨床研修病院は546（50.8％）にすぎなかった．
３）救急科専門医が勤務する医療機関は都道府県別には沖縄県，徳島県，香川県等で多く，必ずしも大都市でこうした施設の割合が多いとはいえなかった．

　

はじめに
　平成16年に医師臨床研修制度が必修化され，わが国の医療に医師確保などをめぐって大きな影響かおよぶことになった．マッチングシステムなど制度上の問題を中心に議論が行われているが，肝心の研修の実質に関しては十分な検証が行なわれていない．新しい研修制度の理念では「医師が，医師としての人格をかん養し，将来専門とする分野にかかわらず，医学および医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ，一般的な診療において頻繁に関わる負傷または疾病に適切に対応できる」とされており，救急研修の充実は新しい臨床研修において最も重要な部分となった．臨床研修で救急部門は基本研修科目であり2），ほぼすべての病院で救急部門の研修が実施されている．救急研修において救急を専門とする医師の存在は基本的要件であるが，研修施設として指定された医療機関で充実した救急研修が実現できる状況かどうかについては十分に検証されていない．

    
　
救急科専門医が勤務する臨床研修病院の割合

　我々は研修医を受け入れている臨床研修病院の中で，日本救急医学会の定める救急科専門医が勤務する施設がどの程度存在するのか調べた．臨床研修マッチング協議会のマッチングに平成18年度に参加している施設を，協議会のホームページからリストアップして実際に研修医を受け入れている医療施設を確認した．次に　日本救急医学会のホームページより平成19年１月現在における救急科専門医（認定医を合む）を倹素して，マッチングに参画している施設のどの程度を網羅しているかを検討した．
　平成18年度マッチングに参加した臨床研修病院は現在全国で1,072存在した．日本救急医学会の定める救急科専門医は2,626人であった．救急科専門医が勤務している病院は546であり，マッチングに参加した臨床研修病院の50.8％にとどまっていた．都道府県別にみると，救急科専門医が勤務している病院の割合は21.4％から80％までと差がみられた．特に洋綴県，徳島県，香川県で在籍する医療施設の占める割合が大きく，必ずしも大都市でこうした施設が多いという結果ではなかった（表）．
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救急医療研修の質
　
　医師臨床研修に関する省令では，臨床研修病院の要件として「救急医療を提供していること」も挙げており，これは「救急告示病院又は医療計画上，初期救急医療機関，第二次救急医療機関若しくは第三次救急医療機関として位置付けられている病院であって，初期救急医療を実施しており，適切な指導体制の下に救急医療に係る十分な症例が確保できるものであることをいうこと」と具体的に示されている．しかし「適切な指導体制」については具体的に問われていない．救急医療を提供していることを求めながらその質を問わないことは、社会的理解の点で問題となるところである.救急科専門医は急性病態を横断的に診療する役割を担っているため，研修医にとっては頼りになる存在となっている．救急医療研修の現場で救急科専門医が存在することは，医療安全の点からも影響が大きい．
　救急科専門医の勤務する研修病院の割合は地域によって大きな差がみられるが，必ずしも大都市に集中しているのではなく，むしろ研修病院の数が限られた沖縄県，徳島県，香川県などで割合が高かったことは注目される．こうした地域では，地域の救急医療ニーズに応えている基幹病院が，同時に臨床研修病院として機能していることが関連しているものと考えられる．
　臨床研修病院の教や資格が見直されているが，救急医療の教育という点で必ずしも十分な体制をとってこなかった大都市の医療機関も数多く臨床研修病院として指定されている可能性がある．今後，さらに指導にあたる救急科専門医の存在だけではなく，専門医が分布している施設がどのような形で，救急医療や救急研修指導を展開しているのかといった視点からも検討を進める必要がある．

    

文　献

1）厚生労働省．臨床研修の到達目標．厚生労働省
　令弟百五号2003.
2）医師法弟16条の２第１項に規定する臨床研修に
　関する省令の施行について．医政発第0612004号

（関連目次）→臨床研修制度の問題点       救急医療の問題

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ぽち→ 

（投稿：ｂｙ　僻地の産科医）

医学教育　第39巻　第5号
2008年10月25日号からですo(^-^)o ..｡*♡

　

   

   

    

　                           臨床研修病院における

          救急科専門医の分布に関する検討

　

     　   蔵本　伸生　　森本　　剛　　窪田　愛恵　　高田　香織
　　     前田　祐子　　関　　　進　　北田　　雅　　伊藤　俊之
　　     平出　　敦　

     　　    　      （医学教育　2008,39（5）:325～327）

 

要旨：
１）マッチングに参加している施設，および日本救急医学会の救急科専門医（認定医を含む）の勤務する病院をリストアップし，上記専門医が勤務する臨床研修病院の割合を調べた.
２）マッチングに参加した臨床研修病院は全国で1072であったが，救急科専門医が勤務する臨床研修病院は546（50.8％）にすぎなかった．
３）救急科専門医が勤務する医療機関は都道府県別には沖縄県，徳島県，香川県等で多く，必ずしも大都市でこうした施設の割合が多いとはいえなかった．

　

はじめに
　平成16年に医師臨床研修制度が必修化され，わが国の医療に医師確保などをめぐって大きな影響かおよぶことになった．マッチングシステムなど制度上の問題を中心に議論が行われているが，肝心の研修の実質に関しては十分な検証が行なわれていない．新しい研修制度の理念では「医師が，医師としての人格をかん養し，将来専門とする分野にかかわらず，医学および医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ，一般的な診療において頻繁に関わる負傷または疾病に適切に対応できる」とされており，救急研修の充実は新しい臨床研修において最も重要な部分となった．臨床研修で救急部門は基本研修科目であり2），ほぼすべての病院で救急部門の研修が実施されている．救急研修において救急を専門とする医師の存在は基本的要件であるが，研修施設として指定された医療機関で充実した救急研修が実現できる状況かどうかについては十分に検証されていない．

    
　
救急科専門医が勤務する臨床研修病院の割合

　我々は研修医を受け入れている臨床研修病院の中で，日本救急医学会の定める救急科専門医が勤務する施設がどの程度存在するのか調べた．臨床研修マッチング協議会のマッチングに平成18年度に参加している施設を，協議会のホームページからリストアップして実際に研修医を受け入れている医療施設を確認した．次に　日本救急医学会のホームページより平成19年１月現在における救急科専門医（認定医を合む）を倹素して，マッチングに参画している施設のどの程度を網羅しているかを検討した．
　平成18年度マッチングに参加した臨床研修病院は現在全国で1,072存在した．日本救急医学会の定める救急科専門医は2,626人であった．救急科専門医が勤務している病院は546であり，マッチングに参加した臨床研修病院の50.8％にとどまっていた．都道府県別にみると，救急科専門医が勤務している病院の割合は21.4％から80％までと差がみられた．特に洋綴県，徳島県，香川県で在籍する医療施設の占める割合が大きく，必ずしも大都市でこうした施設が多いという結果ではなかった（表）．
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救急医療研修の質
　
　医師臨床研修に関する省令では，臨床研修病院の要件として「救急医療を提供していること」も挙げており，これは「救急告示病院又は医療計画上，初期救急医療機関，第二次救急医療機関若しくは第三次救急医療機関として位置付けられている病院であって，初期救急医療を実施しており，適切な指導体制の下に救急医療に係る十分な症例が確保できるものであることをいうこと」と具体的に示されている．しかし「適切な指導体制」については具体的に問われていない．救急医療を提供していることを求めながらその質を問わないことは、社会的理解の点で問題となるところである.救急科専門医は急性病態を横断的に診療する役割を担っているため，研修医にとっては頼りになる存在となっている．救急医療研修の現場で救急科専門医が存在することは，医療安全の点からも影響が大きい．
　救急科専門医の勤務する研修病院の割合は地域によって大きな差がみられるが，必ずしも大都市に集中しているのではなく，むしろ研修病院の数が限られた沖縄県，徳島県，香川県などで割合が高かったことは注目される．こうした地域では，地域の救急医療ニーズに応えている基幹病院が，同時に臨床研修病院として機能していることが関連しているものと考えられる．
　臨床研修病院の教や資格が見直されているが，救急医療の教育という点で必ずしも十分な体制をとってこなかった大都市の医療機関も数多く臨床研修病院として指定されている可能性がある．今後，さらに指導にあたる救急科専門医の存在だけではなく，専門医が分布している施設がどのような形で，救急医療や救急研修指導を展開しているのかといった視点からも検討を進める必要がある．

    

文　献

1）厚生労働省．臨床研修の到達目標．厚生労働省
　令弟百五号2003.
2）医師法弟16条の２第１項に規定する臨床研修に
　関する省令の施行について．医政発第0612004号