(関連目次)→性感染症と中絶について考える
(投稿:by 僻地の産科医)
性感染症として有名な梅毒ですが、
残念ながら私は検査で引っかかった人でしか
お目にかかったことがありません。
なんとなく「性病」って
産婦人科領域な感じがするんですが、
実はバラ疹などが出るために皮膚科とかでも治療してます。
この前、初めて症状のある「梅毒」に出会って、
治療を始めたはいいけれど、
いつまでやっていいのかわからず、
困ったにゃん!と調べていたらたどり着きましたo(^-^)o..。*♡
梅毒の治療
臨床研修プラクティスVoL7 No2 2010 p67-69
滋賀医科大学皮膚科学講座 立花隆夫
スクリーニング検査で陽性であったときは,STSとTPHAの定量検査により,治療の必要性の有無を見極める.そして,顕症あるいは潜伏梅毒と診断したら,ペニシリン系抗菌薬による治療を開始する.
どのような病気なのか?
梅毒トレポネーマ(Treponema Pallidum subsp.Pallidum:TP)の感染により発症する性感染症(sexually transmitted infection:STI)です.また,これまで治療しないと治らないと考えられていましたが,治療をしなくても自然治癒し得る疾患です(CSD参照).
メモ 治療しなくても梅毒は治る?
無治療梅毒患者の長期観察を行ったオスロスタディでは,早期梅毒患者の2/3がその後進展することなく自然治癒したと報告している.
どのような臨床症状をとるのか?
必ずしも第1期潜伏,第1期顕症,第2期潜伏,第2期顕症というような経過はとらず,症例によっては第1期梅毒疹のみを生じたり,第1期梅毒を経ずに第2期梅毒疹を生じたり,あるいは,第1期,第2期梅毒を経ずに自然治癒することもあります.
どのように診断するのか?
STS(梅毒血清検査)やTP且A(TP血球凝集反応. FTA-ABS:トレ・ポネーマ蛍光抗体吸収検査とともに代表的なTP抗原法)の代わりに,それらの自動分析システムを採用している病院施設が増えているので,自分の病院,施設の検査部ではどのような検査法を採用しているかを前もって調べておきましょう.
自動分析システムによるスクリーニング検査で陽性の場合は,STSの一法(多くはガラス板法)とTPHAの定量法を追加(あるいは外注)して梅毒(早期,晩期)と陳旧性梅毒を鑑別します(表).また,感染初期が疑われる場合などでは2~3週間後に再度検査します.
メモ 陽性となる時期を知っておこう
感染後,約1週間でFTA-ABS,約2週間でSTS,約1ヵ月でTPHAが陽性になる.また,治療後はSTSが最も早く陰性化するが,TPHAとFTA-ABSの陰性化はともに遅い.
梅毒でもないのにSTSが陽性を示す生物学的偽陽性(biological false positive:BFP)例では,原因となり得る基礎疾患(膠原病妊娠など)や感染症(結核など)の有無を検索します.
どのように治療するのか?
1.抗菌薬の選び方・使い方は?
TPの死滅が目標であり,通常はペニシリン系抗菌薬を第一・選択とし,ペニシリンアレルギー患者には,テトラサイクリン系あるいはマクロライド系抗’菌薬を選択します.なお,ニューキノロン系,アミノグリコシド系抗菌薬は無効です!
メモ 抗菌薬投与の方法は?
世界的にはCDCの治療指針が採択されているが,ペニシリン系抗菌薬の筋注あるいは静注を推奨しているため,本邦ではなじまず,内服治療が頻用されている.
日本性感染症学会のガイドラインでは,第1期(感染後3ヵ月まで)に2~4週間,第2期(感染後3ヵ月から3年まで)には4~8週間,第3期以降には8~12週間の内服治療としています(例えば,サワシリン(250mg)6cap/分3/日など).また,CDCの治療指針では,早期梅;毒(感染後2年までを指し,第1期と第2期の大半が含まれます)には2週間,晩期梅毒(感染後2年以降)には4週間の内服治療となっています(ただし,ペニシリンアレルギー患者に使用するテトラサイクリン年魚’菌薬の内服期間であり,ペニシリン系の内服薬に関する記載ではありません).
メモ 治療はいつまで続ける?
早期に治療を開始しても,STSが陰性化するには1~4年かかり,TPHAは抗体価が低下しても陽性が長く続く.また,感染後1年以上経過した症例や再感染症例では,十分な治療を行っても抗体価の陰性化は期待できないので,抗体価がある程度下がったところで固定すれば治療を中止する.
2.パートナーや合併感染にも要注意
ピンポン感染を防ぐため,パートナーも同時に診断・治療します.また,他の性感染症の合併が疑われるときは,患者の了解を得て検査しましょう.なお,治療開始後に発熱とともに既存の病巣が増悪すること(Jarisch-H:erxheimer反応:死滅したTPによる中毒反応)があるので,前もって患者に説明しておきましょう.
●参考文献
1)立花隆夫:梅毒の検査MB Derma,2008,141:8-14
◆新人研修医へひとこと◆
梅毒は,感染症新法においても全数把握(報告)疾患であり,STSで16倍以上陽性の無症状病原体保有者を含め,7日以内の届出が義務づけられている.また,最近は皮疹を主訴に病院を受診する顕性梅毒患者は少なく,むしろ献血,集団健診,妊婦健診,入院や術前などの血液検査で偶然発見されることが多いが,その多くは陳旧性で梅毒治癒後の抗体保有者である.したがって,スクリーニング検査で陽性であったときは,STSとTPHAの定量検査により,陳旧性梅毒か潜伏梅毒(皮膚症状を認めない梅毒)かを見極めることが大切である.
Futher reading
①皮膚科サブスペシャリティーシリーズ
1冊でわかる性感染症,本田まりこ,他(編),文光堂,2009
⇒すべてのSTIについて詳しく解説している上級編の一冊である.
また,筆者はその中で梅毒の項を担当.
②皮膚疾患診療実践ガイド 第2版
宮地良樹,古川福実(編),文光堂,2009 D18
⇒教科書的ではなくハンドブック的な性格のため,
実地臨床に役立つ記述となっている.
筆者はその中で梅毒の項を担当.
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