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(投稿:by 僻地の産科医)
新年明けましておめでとうございます(>▽<)..。*♡
(遅いわっ!と言われそうですが、
当直にPCを持っていくのを忘れておりましたw)
あいたたたた。。。
と言うわけで、かなり辛い当直になりましたです。
最近、
「授乳中なんですが、避妊はどうしたらいいですか?」
という質問を受けることが良くあります。
ネットで調べてみると、でるわでるわ!!
様々な説が飛び交っていて
苦笑してしまいましたo(^-^)o..。*♡
さて、「ペリネイタルケア」
という助産師さん向けの雑誌で、
読みやすくわかりやすい記事が
ありましたのでご紹介します。
また、それに加えてピルの副作用について、
今月、日本産婦人科医会から送られてきた冊子に
いい表がありましたのでご紹介しますね。
まず、ペリネイタルケアから!
Q ピルを服用した場合,赤ちゃんに母乳を
与えてはいけないのでしょうか? そもそも
ピルを飲むと母乳量が減るのでしょうか?
ペリネイタルケア 2007 vol.26 no.2 P52-53
横浜市立大学附属市民総合医療センター
母子医療センター準教授 関 和男
Answer
●授乳中のピル服用の是非に関する文献の検討
現在使用されている「ピル」とは,経口避妊薬(oral contraceptives;OC)で低用量ピルと言われるものです.これは,合成エストロゲンと合成ゲスターゲンの合剤であり,エストロゲンが乳汁分泌抑制作用を持つため,授乳に影響する可能性のある薬剤となります.乳汁への移行が乳児の成長に影響する可能性があるとする報告や1 ),移行は微量で乳児に影響するほどではないという報告2 )もあります.
日本において2005年に発表された「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版)」3 )は,WHOのガイドライン4 )に基づいています.これによると,授乳していない場合でも分娩後21日間は血栓症のリスクが高まるとしてOCの使用を勧めておらず,母乳を主として授乳している場合は分娩後6カ月以内のOCの使用は勧めず,いずれも相対的禁忌としています.WHOの授乳と薬剤についての推奨5 )では,合成エストロゲンの含まれる低用量ピルは乳汁分泌を抑制する可能性があり,可能なら服用を避け,ホルモン療法以外の避妊法を選択すべきであるとしています.しかし,AAP(米国小児科学会)の方針声明6 )では授乳可能な薬剤に入っており,Briggsら7 )も同様の判断をしています.一方,Hale 8 )は,分娩後6 週以降なら投与可能としているものには根拠がなく,分娩後数カ月以降でも乳汁分泌に問題を生じた例があるとし,分娩後60~90日以降で乳汁分泌が十分なときに,合成エストロゲンが35~50μgの低用量の製剤のみを使用することを提案しています.日本で販売されている低用量ピルの合成エストロゲンの含有量はすべてこの範囲です.さらにWHOのガイドライン4 )とHale 8 )は授乳中の母親には合成ゲスターゲンのみのOCを推奨し,分娩後6 週以後に服用可能としていますが,日本では発売されていません.
● 授乳中のピル使用についての一案
さて,以上はそれぞれ文献的な根拠から検討されたものですが,結論が異なっており非常に混乱します.
授乳中のピル使用の判断に関する一案として,日本のガイドライン3 )を考慮して,低用量ピル以外の避妊法を第一選択とすることを提案します.どうしても低用量ピルを選択する場合は,分娩後21日以内は避け,できるだけ分娩後60~90日以降で乳汁分泌量が十分になっているときに使用することとし,母親に低用量ピルによる乳汁分泌抑制の可能性をよく説明しておくこと,乳汁分泌が抑制されたときの対応についてよく話し合っておくことなどが必要でしょう.
参考文献
1 )World Health Organization(WHO). Low-dose combined oral contraceptives. Medical eligibility criteria for contraceptive use. 3rd ed. Geneva, WHO, 2004.
http://www.who.int/reproductive-health/publications/mec/
2 )Nilsson, S. et al. d-Norgestrel concentrations in maternal plasma, milk, and child plasma during administration of oral contraceptives to nursing women. Am. J. Obstet. Gynecol. 129, 1977, 178-83.
3 )日本産科婦人科学会.低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(改訂版).2006年2月.
http://www.jsog.or.jp/kaiin/pdf/guideline01feb2006.pdf
4 )前掲書1.
5 )BREASTFEEDING AND MATERNAL MEDICATION. Recommendations for Drugs in the Eleventh WHO Model List of Essential Drugs.
http://www.who.int/child-adolescent-health/New_Publications/
NUTRITION/BF_Maternal_Medication.pdf
6 )American academy of pediatrics. Policy statement. The Transfer of Drugs and Other Chemicals Into Human Milk.Pediatrics. 108, 2001, 776-89.
http://www.aap.org/policy/0063.html
7 )Briggs, GG. et al. Drugs in pregnancy and lactation. 7th ed. Philadelphia, Lippincott Williams & Wilkins, 2005, 1212-5.
8 )Hale,TW. Medications and Mother’s Milk. 12th ed. Amarillo, Hale Publishing, 2006, 677-8.
さて、ピル内服のリスクに関してです。
こちらは今月でき立てほやほやの
ホルモン療法のすべて 研修ノートN0.88
P7-8より抜粋してご紹介します。
ホルモン療法によるリスク
1)発癌
・OC(低用量ピル:ブログ管理者註)
健常な女性が使用するため、長期的な安全性が重要である。OCにより乳癌・子宮頸癌の発症リスクが高まるといわれていたが、最近の大規模調査では両者ともリスクは上がらないとされる。OCの使用により、卵巣癌、子宮内膜癌(子宮体癌とも言われます:ブログ管理者註)、大腸癌の発症リスクは半減する。
2)血栓症
・エストロゲンの長期投与やOCの使用により、血栓症の発症リスクが高まる。OC服用者は非服用者に比べ、静脈血栓塞栓症(VTE)の発症リスクは3~5倍に増加する。
・日本ではOC非服用者の絶対的VTE発症リスクは低値(女性10万あたり年間5例)であるので、副効用を考慮するとハイリスク症例でなければ使用を控える理由はない。
・OCによるVTE発症リスクの増加は使用開始後4ヶ月以内に認められるので、投与初期には慎重に観察する。
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