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(投稿:by 僻地の産科医)
「日本版救急蘇生ガイドライン2010に基づく新生児蘇生法テキスト」
からです(>▽<)!!!!!
最近、新生児の蘇生講習会が
日本のあちこちで
行われるようになって来ました。
また、昨今話題になっているカンガルーケアでも、
日本産婦人科医会が
<出生直後に行う「カンガルーケア」について>
と言う文書を出しており、
その中の一行に
・「カンガルーケア」実施に携わる医療者は新生児蘇生に熟練している必要がある。
と盛り込まれていることから、その重要性は高まってきています。
さて、テキスト第5章の「その他の新しい推奨」から、
出生児その他のケアについて、お届けします(>▽<)!!
I 出生児のその他のケア
(新生児蘇生法テキスト MEDICAL VIEW 2011p98-99)
1.臍帯結紮のタイミング
ILCORのConsensus 2010では,蘇生を必要としない新生児では,少なくとも1分以上の臍帯遅延結紫を推奨している。欧米人を対象にした正期産児での報告では,臍帯遅延結紮によって乳児期早期まで鉄貯蔵が改善するが,新生児期の黄疸に対する光線療法の頻度が高い。
一方,早産児では,臍帯遅延結紮が行われた児は安定化を図っている時期の血圧が高い傾向にあり,脳室内出血の頻度が低く輸血の頻度も低かったが,正期産児同様に光線療法を必要とする児の頻度も高かった。
わが国では人種的に新生児期のビリルビン値は高く,ビリルビンウリジン2リン酸グルクロン酸転移酵素遺伝子変異の頻度が高いことが黄疸と関係があることがわかっている。
これらのことから臍帯遅延結紮を導入した場合,光線療法の頻度の増加とそれに伴う児の入院期間の延長が危惧される。わが国で臍帯遅延結紮を導入するかは,質の高い臨床研究の結果を待って判断する必要があるので,それまではわが国での採用は保留することになった。
活気のない児についての臍帯遅延結紫の有益性および危険性に関しては,エビデンスが限られている。
(細野茂春)
2.母体発熱
母親の高体温によって,新生児蘇生が必要となる頻度が増える可能性がある。
発熱した母親から生まれた新生児は,新生児期の呼吸障害,痙攣,脳性麻痺の率が高く,死亡率が高いことが報告されている。熱そのものか,それとも他の原因が新生児の危険を増加させているのかについての科学的根拠は存在しない。
新生児の死亡率を下げるために,ルーチンで母親の体温を下げることを支持または否定する科学的根拠は不十分である。しかし,母親の高体温によって新生児蘇生が必要となる可能性があることは,認識しておくべきである。目標は正常体温に保つことであり,医原性の高体温は避けるべきである。
(正岡直樹,田村正徳)
3.帝王切開立ち会い
正期産児の,区域麻酔下での帝王切開による出生では,蘇生中の気管挿管の必要性の頻度は正常経膣分娩に比較して増加しないという報告があるので, リスクのない児が正期産で区域麻酔下に帝王切開で娩出される場合は,バッグ・マスク換気ができる人が立ち会うご十分であろう。
(正岡直樹,田村正徳)
4.倫理
Consensus 2005では,蘇生の差し控えの対象としで“在胎23週未満”,“体重400g未満”,“trisomy 13", “trisomy 18" などの具体的な病名があげられていた,
しかし, Consensus 2010では,生存限界の新生児に対する治療方針は。地域や医療資源の状況よって大きく異なるという考えから,「在胎期間,出生体重,先天奇形から早期死亡や受け入れがたい重篤な転帰がほぽ確実に予測されるときには,蘇生を差し控えるのは論理的である。」という一般論に留まった。これは日本の現状に歩み寄った表現である,
その他の状況では,ほぼ常に蘇生を実施するべきである。生存できるかどうかの境界で,比較的高い確率で垂篤な後遺症の可能性があり,児の負担が強い状況では,両親の蘇生への考え方が尊重されるべきである。
適切な蘇生処置を実施しても,出生直後から10分以上心拍がない状態が続く児では,死亡するか重度の神経学的後遺症が残る可能性が高いので,心停止の原因・在胎期間・その状況の可逆性・予想される予後に対する両親の考え方などを考慮して,蘇生努力を継続するかどうかを決定するのが妥当であろう。
(田村正徳)
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