(投稿:by 僻地の産科医)
平成23年10月12日に日本記者クラブで行われた、
日本産婦人科医会の記者会見での発表内容です。
なお、前年度までのも含めて、
こちらにたぶんその時用いられた
スライドが載っています。
【参考資料】
平成20年 報告事例の集計結果 - 日本産婦人科医会
http://www.jaog.or.jp/know/kisyakon/28_091209.pdf
偶発事例報告事業 平成21年の事例解析結果
http://www.jaog.or.jp/know/kisyakon/37_101013.pdf
偶発事例報告事業 平成22年の事例解析結果
http://www.jaog.or.jp/know/kisyakon/48_111012_1.pdf
偶発事例報告事業~平成22年の事例解析結果
(平成23年11月1日 日産婦医会報p4)
平成16年から、偶発事例調査を行ってきた。これは全国で発生した医療紛争になり得る事例の実態を把握し、事例の第3者的視点での評価を行い、同種事例の再発を予防し、より安全な産婦人科診療の実現に資する事業として行われてきたものである。偶発事例報告の基準としては、
①妊産婦死亡(妊産婦死亡評価委員会;平成22年より独立して運用開始)
②満期新生児死亡
③新生児脳性麻痺(産科医療補償制度)
④産婦人科死亡例(異状死を含む)
⑤医事紛争事例
⑥前各項目に準ずるような医療事故および医療過誤などである。
平成22年の事例解析結果
産科医療補償制度
平成23年8月に第1回再発防止に関する報告書が公表された。ほとんどの新聞社が同様な記事を掲載したが、一般に脳性麻痺は分娩周辺に起こるという誤解、またガイドライン違反が原因といった誤解を招くような論調であった。
平成24年4月の第2回の報告書では100例以上を分析することにより、詳細かつ正確な報告書となる予定である。
妊産婦死亡報告事業
平成22年の1年間では51例、平成23年9月までは24例が報告されている。症例検討で原因として疑われた疾患では、羊水塞栓症が35%と最も多いことが解析された(図1)。
一方、解剖状況をみてみると、解剖を実施したのは半数で、そのうち55.2%で病理解剖、44.8%で司法解剖が行われていた。病理解剖は、病理解剖報告書が作成され、臨床医・遺族にその結果が報告される。また、妊産婦死亡解剖マニュアルが作成されこれを準用している。他方司法解剖は、報告書の入手が基本的には不可能で、臓器保存の義務がないこのことは、原因分析を不可能とし将来に資する手段とはなりにくい。解析結果をもとに母体安全への提言2010を作成し、平成23年7月に医会報に同梱した。
偶発事例報告事業
偶発事例報告施設の推移として、平成17年は61.1%であったが、平成22年には80.3%と協力施設数が増加した。
報告事例分類別症例数(平成16~22年)(表)では、分娩に伴う新生児異常28.4%、分娩に伴う母体異常21.7%、産婦人科手術事例15.9%であった。平成21~22年周産期死亡(92例)の原因として、妊娠中は常位胎盤早期剥離、分娩中は胎児機能不全、新生児としては新生児突然死が多い。
乳幼児突然死症候群(SIDS)は、「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」と定義されている。平成21~22年に13例の新生児が産科入院中に突然死しており、新生児管理についてその問題点を提示した。
これらの状況を踏まえて、会員への研修会実施状況(平成22年)は、報告分のみで会員研修会が20回、個別研修が3回行われた。
まとめとして、①妊産婦死亡事例の大部分が医会に報告されている。②各事例から周産期医療のいろいろな問題点が抽出されてきており、日本の周産期医療の向上および医療安全の向上に向けた提言がなされている。今後も積極的に推進していきたい。
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