(関連目次)→性教育について考える
(投稿:by 僻地の産科医)
とまあ、前項での記事の続きでして、
今日は「緊急避妊ピル」についてお話ししたいとw。
【関係ないけれどおすすめブログ】
沈黙しない臓器たち
kameの いい味出してね 2011/12/22
http://drkame.at.webry.info/201112/article_8.html
↑ 季節がら、暴飲暴食には気をつけましょう(>▽<)..。*♡
特に妊婦さん!!体重と塩分には気をつけて。
正月明けの妊婦健診はどどーんとくる方が多いです。
緊急避妊法の適正使用
日本家族計画協会家族計画研究センター所長
北村邦夫
日産婦医会報 No.734 平成23年8月1日p8-9
緊急避妊薬「ノルレボ錠0.75mg」(以下levonorgestrel emergency contraception pill:LNG―ECP)が2011年2月23日に承認され、5月24日に発売された。
アジアでの未承認国が北朝鮮と我が国だけだったというほどに、世界的に普及している薬剤であるにもかかわらず、承認に際してはパブリックコメントが求められた。それに対し、我々産婦人科医も多数賛成意見を提出してバックアップの一翼を担ったことは記憶に新しい。また、医会、学会に対して本剤の適正使用への協力依頼が通知されるなど社会から注目されている薬剤でもある。本剤の適正使用に十分心してあたることが求められている。
問 緊急避妊(emergency contraception:EC)はどのような時に用いられますか?
答 避妊をしない性交後、低用量経口避妊薬の服用忘れや下痢などによる吸収障害、レイプや性的暴行後、コンドームの破損・脱落・不適切な使用、その他の避妊具の不適切な装着・破損・脱落や無防備な性交があった場合に適用されます(図1)。
問 日本では長い間、プラノバール配合錠を緊急避妊目的で使用してきましたが、LNG―ECP との違いは何ですか?
答 プラノバールはノルゲストレル0.5mgとエチニルエストラジオール0.05mgの配合薬であり、効能・効果は機能性子宮出血・月経困難症・月経周期異常などです。これをEC 目的で転用してきたのは、あくまで我が国でLNG―ECP が未承認だったための緊急避難として我々産婦人科医の独自の判断と責任によるものでした。広くヤツペ(Yuzpe)法として知られており、性交後72時間以内に2錠、更にその12時間後に2錠服用する方法がとられていました。これに対してLNG―ECP はEC としての適用が認められた我が国初の薬剤であり、性交後72時間以内に2錠1回経口投与します。ヤツペ法に比べて悪心・嘔吐などの合併症発現率が軽微であり、なおかつ1回投与ということで、服薬コンプライアンスが高く、結果として避妊効果も高いことが特徴です。表1にECP のマイナー・トラブルを提示します。LNG―ECP は有意に有害事象が少ないことがわかります。ヤツペ法では高率に悪心・嘔吐を来すため、制吐剤を合わせて投与することがありましたが、LNG―ECP では不要です(服用2時間以内に嘔吐した場合にのみ再度投与します)。
問 EC の避妊効果は?
答 我が国で行われた臨床試験は例数が少ないので、海外における成績を紹介します。性交後72時間以内の女性1,198例にLNG―ECP1.5mgを1回投与した際の妊娠率(妊娠例数/評価症例数)は1.34%、妊娠阻止率は84%でした。ちなみに妊娠阻止率ですが、LNG―ECP 服用者の排卵日(0)が月経周期14日目であると仮定した場合、妊娠の可能性についてWilcox らは図2のように排卵5日前から当日までであるとしています。それぞれの日の妊娠予定数を計算した上で、妊娠阻止率=(妊娠予定数-実際の妊娠例数)÷妊娠予定数×100(%)として求めます。
問 LNG―ECP の作用機序は?
答 LNG―ECP の作用機序は十分に解明されていません。先行研究からは月経周期のいつ投与されたかによって作用機序が異なりますが、着床の阻害よりも排卵の抑制、遅延による作用が大きいものと考えられています。
問 LNG―ECP の服用にあたっての注意点は?
答 本剤はあくまでECP であり、IUD や低用量経口避妊薬(OC)などの計画的な避妊に比べて失敗率が高いことは周知・指導する必要があります。LNG―ECP は原則として性交後72時間内に服用することとされていますが、それ以降に急激に効果が消失するわけではないので、120時間までは適用外ですがある程度の効果が期待できると言われています。また、日本産科婦人科学会による「緊急避妊法の適正使用に関する指針」(学会HP 参照)によれば、十分な説明を行った上で同意書に署名することが求められている点も注意を要します。
問 LNG―ECP の服用禁忌は?
答 添付文書上、「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある女性」、「重篤な肝障害のある患者」、「妊婦」との記載がありますが、仮に妊婦が服用しても妊娠経過や胎児に悪影響が及ぶことはありません。したがって、妊娠が疑われない限り、投与前の検診や妊娠検査は不要です。
問 LNG―ECP投与後に注意すべき点はありますか?
答 LNG ―ECPが排卵の抑制または遅延を避妊の機序と考えられているため、服用後に妊娠が否定されるまでに性交が行われると妊娠阻止率が低下することが知られています(表2)。したがって、性交頻度が高い女性ではEC 使用の翌日から低用量経口避妊薬(OC)の服用が勧められます。その際、OC 服用後7日間は、OC 以外の避妊法をバックアップとして使用する必要があります。日本産科婦人科学会の「緊急避妊法の適正使用に関する指針」で提唱された緊急避妊法選択のアルゴリズム(図3)や記載内容も参考にしてください。
問 LNG―ECP は繰り返し使用してもいいですか?
答 LNG―ECP は避妊効果に限界があり、常時使う避妊法としてはお薦めできません。ちなみに我が国で行われた治験結果によればOC を1年間使用した場合の失敗率は0~0.59%でした。あくまでEC としての使用のみに限定するべきで、厚生労働省からの本剤の適正使用への協力依頼にもあるように、避妊に対して無計画な風潮が生まれることのないように女性に啓発・指導することが望まれています。また、緊急避妊法として、経妊女性の銅付加子宮内避妊具(Cu―IUD)の緊急挿入については、エビデンスが少ないものの、失敗率が1%未満という報告もあり、LNG―ECP 処方前に情報を提供することも考慮します。
コメント