(関連目次)→死産・胎児死亡 目次 今月の産婦人科医会報
(投稿:by 僻地の産科医)
2月号の産婦人科医会報からo(^-^)o ..。*♡
VBAC事例について載っていましたので。
興味深い判決ですが、かなり医師側に厳しいものだと思われます。
VBAC(帝王切開後経膣分娩)が廃れていく
後押しをする判決ではないでしょうか?
あとその前の記事も資料的に面白かったので、また今度だします!
既往帝王切開妊娠に対する
経腟分娩(VBAC)により子宮破裂を生じた事例
〈F地裁H20・5・20〉
(日本産婦人科医会報 2009年04月号 No.708 p6)
〔事案の概要〕
X は、本件分娩(平成7年)の約2年前、Y病院において、帝王切開により双子を出産していた。本件分娩に関し、Y病院の医師は「経腟分娩の方法で大丈夫である。もし何かあった場合は帝王切開に切り替える」等説明をして経腟分娩を選択した。
X の出産は5月17日の深夜から行われた。午前3時、X が下腹部の痛みを訴えたので助産婦は内診を施行、午前3時10分頃、子宮口が全開大、性器出血がみられた。午前3時32分、助産婦が人工破膜を施行、午前3時35分、陣痛と同時に児心音が低下、助産婦がX に酸素を投与し、体位変換をさせたが、児心音は回復せず。医師が吸引分娩を試みたが児を娩出できず、午前3時40分頃、エコー検査を実施し子宮破裂を確認し帝王切開手術を決定、午前4時12分、児が重度の新生児仮死の状態で出生した。新生児は、その後重症脳性麻痺となり平成12年3月5日死亡した。
帝王切開では、X の子宮破裂の部位は前回の帝王切開創であること、児心音低下は子宮破裂により臍帯が圧迫されて生じたとの所見であった。
Y病院は大学医学部附属病院で、当直の医師もおり、直ちに手術室に移動して手術も行えるよう準備がされていた。Y病院は、吸引分娩の際に子宮破裂の確定診断がなされ、それから30分で児が分娩されており、子宮破裂30分程度で児の分娩ができることはVBAC を行う医療機関としての水準を満たしていたから過失はないなどと主張した。
〔主たる争点〕
①分娩監視上の注意義務違反
②帝王切開移行準備義務違反
〔判決要旨〕
判決は、VBAC の選択には注意義務違反はないとしつつ、VBAC は通常よりも子宮破裂に至る率がかなり高く、子宮破裂に至れば30分程度で分娩できても児に重度の障害が残存する可能性が高かったことから、病院としてはそれを前提とした注意義務を負っている。陣痛が強い、下腹部の奥に痛みがあるなどのX の訴えや胎児の状態などに注意を払い、より注意深い分娩監視等を行うべきであり、また子宮破裂後、短時間に帝王切開が行えるよう準備をしておくべきであったとした。
①については、児心音が低下した時点では臍帯圧迫が起こっていたとみられるところ、酸素投与や体位変換によっても改善しなかったことからすれば、この頃には既に子宮破裂に至っていたと認めることができる。そうすると、X が一定の部位の痛みを訴えた頃に医師が診察(内診、検査)をし、注意義務を果たしていれば、切迫子宮破裂を早期に判断でき結果を回避できた。
②については、試験経腟分娩では一般的には帝王切開決定後の手術着手までの時間は30分以内が望ましいとされていたが、胎児の状況により、より迅速に帝王切開を行うべきものであり、30分の基準はそれを遵守したからといって医療水準を満たしているとは言えない。試験分娩開始後に、陣痛が強いことが認められ、限局した部位である「下の奥の方」の痛みを訴えていたのであるから、子宮破裂を確認する以前から直ちに緊急帝王切開が行えるように準備していれば、帝王切開をより早期に行うことができ本件事態は回避できたとして、医師の注意義務違反を認めた。
本事案は、VBAC における子宮破裂は予見性が高いので、分娩監視を厳重にし、子宮破裂の徴候を確認した場合、直ちに帝王切開すべきとの厳しい判断である。産婦がVBACを希望した場合の対応は『産婦人科診療ガイドライン産科編2008』111頁を参照されたい。高裁は、別の事案(平成9年;既往帝切なし)で、子宮破裂の発症は非定型的突発的であることから、帝王切開や筋腫核出術後の分娩、子宮収縮剤の乱用、など特段の事情がない場合は、子宮破裂の予見の可能性はないとしている。
九州の某病院で助産師をしております。
いつも拝見させていただいており、大変勉強になります。
良ければ教えていただきたいのですが、一般的に分娩時に臍帯動脈の血ガスは採るべきなのでしょうか?
昔働いていた病院の医師からは、新生児への適切な処置のためにも、裁判で不利にならないためにも採るべきと教育されてきましたが、その後働いた病院では採っていませんでした。
その病院の医師に聞いたところ、血ガスを検査する器械が高額なのと、状態の悪いベビーはすぐ搬送するので検査しても意味が無いと言われました。
どうなのでしょうか?教えてください。よろしくお願いします。
投稿情報: つばき | 2010年3 月31日 (水) 23:12
もしも(というかおそらく入っておられるとおもいますが)産科医療補償制度にご加入の医療機関であれば、臍帯血ガスは何かあったときに必ず提出しなければならないものだと認識しています。
「そのように聞いた」という風に、マイルドに申し出てみればいいのではないでしょうか?補償が受けられなくなる可能性はおおごとですから。
ただ、緊急時にとってる暇なんてない!!!!!!!どああああああっ!という瞬間ももちろんあります。
特に帝王切開の時には、出血の一番多い時期に採取せねばならないので、私としては胎盤を下ろしてからそこでとってもらってもいいのではないかと個人的にはおもっていますが、ただ数値は悪くなる可能性が(検証したことはありませんが)あるので、みんな嫌がりますし、結局術野でとる羽目になります。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2010年3 月31日 (水) 23:27
お返事、ありがとうございます。
やはりできるものなら採取すべきってことですよね。
お話した病院は、産科医療補償制度ですが、これには加入していない病院でした。
この制度、加入している方が患者にとっては安心なようい思うのですが、病院側から見るとどうなのでしょうか?
病院側の過失がない場合だけ支払われるということは、この制度元からも患者側からも二重に調査され針のむしろになるってことはないのでしょうか?
投稿情報: つばき | 2010年4 月 1日 (木) 00:01
>お話した病院は、産科医療補償制度ですが、これには加入していない病院でした。
現在の加入率は病院で99.5%.加入していない病院は9都府県に17病院のみ...
投稿情報: Level3 | 2010年4 月 3日 (土) 22:18