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(投稿:by 僻地の産科医)
一産科開業医先生からコメントをいただきましたo(^-^)o ..。*♡
ありがとうございます!!!
「出産育児一時金の医療機関への直接支払制度」な一例o(^-^)o..。*♡
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簡単に言うと、
「制度が変わったから、10月から2ヶ月は分娩費収入は無くなりますよん。」
ということです。
もちろん毎月の経費は変わらないので、月次では大幅な赤字が予想されます(産科診療所では7〜8割が分娩関連の売り上げです)。
もし、この間経費の支払いに充分な現金を用意していなければ、不渡りが出て倒産しかねません。したがって文中の開業医さんは
「現金で支払ってくれないと、ウチは倒産しちゃいます。」ということです。
で、運転資金の足りないところは医療福祉制度による融資を利用せよ(金利は低めですが)、とのお達しです。厚生労働省は右手で収入を絞り上げておきながら、左手で借金を背負わせるわけです。で、天下り組織が金利分肥え太っていくと。
医療側としては何も悪いことをしていないのに突然収入を取り上げられ、なおかつ赤字なら借金して利息を払えと命じられた(しかも金利は低めに設定してやった、と恩を着せられている)わけで、なかなか納得しがたいものがあるでしょう。
また、4月から導入された妊婦健診の公費負担でも同様にサイトの問題があって現金が減少しています。加えて12月には賞与の支払いがあります。
「制度改悪のために賞与なし!」
・・・スタッフみんな辞めちゃうかな〜。
これらの政策は自民党の選挙対策として非常に速やかに立案実行されました。
自民党は選挙中
「我々は妊婦健診を無料化(正確には補助)しました。また、10月からは出産費用もほとんど妊婦さんの負担無く子供が産めるよう制度を改革します!」
と連呼していたわけです。
この制度がこのまま導入されると、体力のない(現金の持ち合わせのない)医療機関は、倒産するか撤退するか、イヤでも融資を受けるしかありません。また、借金をして開業した先生方も、その返済計画を見直さなくてはなりません。
もちろん、昨年9月以降の不景気で、同様の状況に追い込まれた中小企業も多いと思います。まじめに仕事をしていたのに、直接関係のないアメリカ発の金融バブル崩壊に巻き込まれ、売り上げが激減し倒産や撤退を余儀なくされた企業も多いでしょう。融資が受けられるだけマシなのかもしれません。
しかしまあ、これが「少子化対策」だというのはもう皮肉を通り越して笑うしかありません。産む場所をさらに減らすような施策を打ってどうするのでしょう?
まあ、それだけの経営体力のない医療機関は市場から退場すべし、かもしれませんね。それが資本主義の論理ですし。ただ、そうなると産科医療機関の寡占化が進み、アクセスは悪化するわけですが・・・(あ、国や学会は「集約化」って呼んでいましたっけ)。
もっとも、政権交代したので先行きは不透明です。民主党は出産一時金の55万円への増額をマニフェストに入れていますし、来年度予算はとりあえず組み直しになりそうですしね(来年度までは、この制度変更にあわせて出産一時金の42万円までの増額が予定されて予算が確保されていた)。
半年でまた変更になってばたばたするなら、現場としてはとりあえず10月の導入はペンディングして欲しいですけれど。
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なんとなく、この制度はつかわない!という動きが
開業診療所の方で始まるようなら、それでいいと思います。
変な制度ですよね~。
>なんとなく、この制度はつかわない!という動きが開業診療所の方で始まるようなら、それでいいと思います。
この制度を使わなくても、資金繰りがやりくりできるぐらい余裕のある開業医の先生は良いでしょうが、そうもいかない先生のところが殆どではないでしょうか?
そこに付け込んでいるように見えるのが、この問題の根底に流れている部分ではないかと思います。
投稿情報: 風はば | 2009年9 月 7日 (月) 09:49
出産育児一時金の直接支払制度は、法令に根拠を有する制度として、10月より施行される予定です。
従って、分べんそのものを受け入れた以上は、保険医療機関に於いて公的医療保険制度の被保険者である産婦が、直接支給制度を利用した出産を希望すれば、直接支給制度の利用を拒絶するという選択肢は、保険医療機関には存しません。
要するに、保険医療機関にとって直接支払制度を一切導入しないという選択肢は無いのです。
勿論、産婦さんが従来通りの方法を希望なさる場合には、その希望が優先され、この場合直接支給制度は利用しないことになります。が、あくまでも産婦さんに選択権があります。
投稿情報: 秘匿希望。 | 2009年9 月 9日 (水) 10:51
直近の拙投稿で、”保険医療機関では完全な拒絶は難しいだろう”という主旨の投稿を致しましたが、保険医療機関でない医療機関であっても、産婦さんの明確な意思に拘わらず制度を利用しないというのは、法令に抵触すると思われます。
先刻の拙投稿で、敢えて保険医療機関を強調したのは、実は意図したものでしたが、結果としてミスリードだった様に思います。お詫び申し上げます。m(__)m
本日時点で、関係政令や省令が公布されていないらしいので、自説について説得力に欠けなくもないのですが。
投稿情報: 素人の浅知恵 | 2009年9 月 9日 (水) 17:29
うーん。これ、いつその法案が通ったんです???
ただの厚労省の通達ですよ。
いつもの。
とりあえず、民主党政権に変わりましたし、政権に働きかけていくしかないとは思っていますが、補正予算かなにか凍結された中に入っていないのかな♪
と思っています。
開業医や民間病院は自営業ですし、分娩は保健医療じゃないんですよね。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2009年9 月10日 (木) 18:29
わはは(大笑
僻地の産科医先生に、ざぶとん五万枚!!
お産は保険医療じゃないですよね~。
産婦自身に選択権があるって言ったって、
自分とこじゃ生めない、他へ行ってくれっていう理由なんか
いくらでもつけられますよね~。
投稿情報: suzan | 2009年9 月10日 (木) 19:28
公務員でも医療者でもない人間として思うのですが。この話に限らずそもそも論として、保険適用でない通常分娩について保険制度から金銭給付を行うという、出産育児一時金という制度自体が色々と話をこじれさせるのだろうと思っています。
で、今回の直接支払制度ですが、確かに現状では通知ばかりが発出されていて、法令(法律及び政令・省令)上の根拠が明白ではありません。周知や事前準備の為という名分でしょうが、本来は法令の改正が先行する筈なのですが。(トホホ。
まず、10月からの改正点の一つである金額の増額ですが、これは現行の健康保険法等(健康保険法・船員保険法・国民健康保険法・各共済組合法)の規定によって、”出産育児一時金の金額は政令で定める”とされています。従って、増額するには政令を改正する必要があるのですが、これは5月の時点で10月以降の増額の為の政令の改正が行われています。
つづいて、直接支払制度の根拠ですが、私が想像するには現行の健康保険法等には、例えば健康保険法第207条のように”各種手続きや制度執行のための細かいところは省令で定める”という規定があります。おそらくこの省令の改正によって法令上の根拠を用意する意図があると思っています。おそらくは新政権発足の後に9月30日までには、こうした省令の改正が行われるだろうと想像しています。
このような訳で、出産育児一時金の支給や手続きの方法は法令上の根拠が用意されると見込まれると想像しています。そうしましたら、法令による制度であるので、保険医療機関であるか否かを問わず医療機関である限りは、法令に違反する訳にはいかないだろうというのが私の考える話です。産婦さんの希望によって直接支払が為されるというのが制度の趣旨なので、産婦さんの自発的希望を拒絶は出来ないだろうと、そういう理屈で考えているんです。
この変更を法律でなくて、省令を根拠として行って良いのか?という疑問は抱かないではないのですけれど、レセプトオンライン化を省令で行おうとするよりは、まだ許せる範囲かな?と。(嘆息
投稿情報: 秘匿希望。 | 2009年9 月11日 (金) 11:06
suzan 様ご指摘の点については、論じる以前の問題として当然の話じゃないですか。医療機関で、分べんそのものが行われなければ、直接支払制度で悩む必要も無いですし、踏み倒しも生じないですし。私としては、分べんが行われた後の支払の段階での話をしてる訳ですし。
もともとの話として、自民党・公明党の少子化対策として、年度当初に急造された制度変更ですし。医療機関の経営問題などの観点についても、もう少し慎重に検討されて良かったと思っています。が、決まってしまいましたし、広報も為されていますし、次期政権も事案の性質上反対は難しいんじゃないかな?と。。
私自身の賛否の判断は別として、おそらく厚生労働省の公式見解としては、経営問題には福祉医療機構の融資制度の新設という方策で対処したという事なのでしょうし。
投稿情報: 秘匿希望。 | 2009年9 月11日 (金) 19:46
> 次期政権も事案の性質上反対は難しいんじゃないかな?
まぁ、じゃあ、産婦人科は分娩から粛々と撤収ですね。それでいいんじゃないかな?
現場がそれでなんとか従ってくれるだろうという読みは甘いでしょう。
地域の分娩はあふれかえっています。
「つかいません、うち。手続きやる事務員も雇えないので」とお断りしても、現金払う一定数の分娩さえ確保できればいいのですから。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2009年9 月11日 (金) 23:58
> 産婦人科は分娩から粛々と撤収ですね。
私は淡々と制度の導入の是非は医療機関の任意でない旨を、事実に基づき主張したのみで、それ以上の価値判断には踏み込んで来ませんでしたが、その点を改めて表明するとするなら、
”はい、それで宜しいかと思っています。出来ないものは、出来ない。物理的・生理的・経営的・医学的限界を超越することは出来ない。当然じゃないですか。”
と思っています。
結局今回の施策は、分べんの後に出産育児一時金の支給が為されるまでの資金繰り負担を、産婦の側から医療機関の側に移し替えただけで、産科の疲弊に対処する目的でないのは自明ですからね。
分べんに伴って一時的に纏まったお金を用意できずに妊娠を躊躇う夫婦に対して、直接支払制度を用意すれば、そうした目先の金策という心理的負担というハードルが下がるだろう。。。つまり子育て支援に繋がるだろうという、そうした側面からしか焦点を当てられてないですから。
分べん時に纏まったお金を用意できない・医療機関に支払った後に出産育児一時金が支給するまでの生活ができない。。。という主旨の産婦側の声というのは昔からあったのも事実で、今回は政治としてそちらに目配りしたという事でしょう。
それに比して産科医療の疲弊は、行政というより政治のレベルで目配りされてませんから。選挙する有権者の側が事態を理解してないのですから、政治が鈍感なのも当然ですけどね。医療を受ける側の自業自得でいいんじゃないですか。
投稿情報: 秘匿希望。 | 2009年9 月12日 (土) 09:51
今までも事前申請をしたら窓口でお金は要らないのです。ですから今度の制度はただ産科医療機関を痛めつけて淘汰することと2ヵ月後という保険診療のルールにあわせていずれは自費診療から保険給付に持っていく流れだと思います。ついでに医療福祉機構に融資をさせて1ヶ月480億円くらいをこれで金利を取って稼ぎ、ここを天下り先に使う(現に年金で追われた青柳君が九州から戻ってきました)
やはり厚生官僚は頭が良いです。
しかも最近お話では、融資はほとんど無理だそうですから産科崩壊はもう少しです!!
投稿情報: ガロ | 2009年9 月27日 (日) 16:06
確かに直接支払制度の話は去年からありましたが、まさか2か月遅れで振り込まれ、しかも全妊婦を対象にするなって話になるとは思ってもみませんでした。
わずか1か月ちょっとの準備期間で運転資金の2か月分(当院では5000万以上になります)を用意しろなんて、憲法違反なのではないでしょうか?
天下のトヨタやパナソニックだって売上をすべて現行より2か月遅れに突然されたらどうなるのでしょうね。
出産の取扱を止める時期を考えていましたが、いい機会になりそうです。
投稿情報: 匿名産科医 | 2009年9 月29日 (火) 15:24