(関連目次)→病院の赤字・倒産 地方医療の崩壊 実例報告
(投稿:by 僻地の産科医)
県立病院の診療費未払い、3億超す 裁判で徴収検討
神戸新聞 2009年3月31日
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0001787651.shtml
兵庫県立の十二病院で診療費の未収額が、時効分を除き今月末で三億円を超える見込みであることが分かった。八年前の二倍以上で、県は「滞納は年々増えており、悪質なケースも目立つ」などとして、民事訴訟を起こすなど強制徴収に乗り出す方針を固めた。県によると、医療制度改革で患者の医療費負担が増え始めた二〇〇二年度、診療費の年間滞納額は八千万円台に。その後いったん減ったが、〇五年度には一億円を超え、〇七年度は一億三千万円に増えた。
期限を二十日過ぎても診療費を収めなかった場合、県は督促状を送付。その上で、専門員五人が患者の自宅を訪れるなどして診療費の徴収に当たる。だが、さまざまな事情で住所が確認できないことも少なくなく、年間徴収率は〇一年度以降、40%以下にとどまっている。〇五年度からは、一年以上の滞納者への徴収を民間会社に委託したが、それでも徴収率は6%弱と低迷。生活に困窮していたり、支払う意思がなかったりする患者が目立つという。
診療費徴収には時効があり、昨年度末までの七年間で三億円以上が徴収不能に。〇五年度には時効が五年から三年へと短縮され、景気の悪化なども背景に今後さらに増えるとみられている。
このため県は、滞納が一年以上の患者らを対象に提訴を検討。裁判結果によって財産を差し押さえた場合、徴収期限の時効が中断されるといったメリットもあるという。県病院局は「資産が把握できれば分割徴収などにも応じたい」としている。診療費未収は全国的にも増加傾向で、国立病院機構が運営する百四十六病院では計約十九億三千万円(〇六年度末)。大阪府立の五病院でも約三億七千万円(〇七年度末)に上るという。
未払い診療費の徴収 医療機関は医師法に基づき、正当な理由がなければ所持金がない患者でも診療の求めを拒否できない。厚生労働省の未収金問題検討会は2008年、医療機関による訪問徴収▽保険者が督促や差し押さえをする「保険者通報制度」の実施-などを提言した。
京都市の医療法人に保全命令―医師不足などで収益悪化
キャリアブレイン 2009年3月31日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/21336.html
京都市内で病院を経営していた医療法人竜王会(京都市山科区、小澤利夫理事長)は3月27日に京都地裁へ民事再生法の適用を申請、同日保全命令を受けた。帝国データなどによると、負債総額は約16億円。竜王会は弁護士を通じて、資金繰りに行き詰まった理由について、▽医師と看護師不足▽医療行政の中小病院に対する締め付け▽諸費用の高騰化―などと説明。その上で、「民事再生手続きにより、病院再建を目指すことが最善の策と判断した。医療活動を継続するために、引き受け先、支援先を見つけて、病院の再生を目指す」とコメントしている。
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帝国データなどによると、竜王会は1964年4月に「小沢医院」として個人創業。70年4月に法人設立し、「小澤病院」(一般100床、療養49床)を経営していた。内科、循環器科、消化器科、放射線科をはじめ計13科目を手掛け、89年には10億円の資金を投入して新館を開設するなど積極的な設備投資を行っていた。特に、人工透析センターは97年に増床し、透析ベッド26床を運用していた。2003年3月期は年収入高約16億5900万円を計上していた。
しかし、06年以降は外来、入院患者数が減少傾向にあり、08年3月期は訪問介護、在宅介護支援センターの廃止による来院者数の減少などで、年収入高約14億9600万円にとどまった。医療材料や消耗品などの仕入れ価格の上昇、介護人員の増加による経費の増加に加え、過年度損益修正額の計上で当期損益は約2億1300万円の赤字となり、債務超過に陥っていた。
06年2月には社有不動産を売却するなどして、債務の弁済を進めてきたものの、過大な金融債務を抱え、多忙な資金繰りを余儀なくされる中、その後も減益が続き、自主再建を断念したという。関係者によると、「病院の運営は同じ状態で続けるので、93人の入院患者、透析に通う通院患者や病院で働く180人の職員などに影響が出ることはない」という。
竜王会は弁護士を通じて、「裁判所に選任された監視委員の指導・監督の下、再建に全力を尽くす」とコメントしている。
医業収支:病院の赤字、過去最大 100床当たり月1261万円--08年調査
毎日新聞 2009年3月31日
http://mainichi.jp/select/science/news/20090331ddm002040064000c.html
全国の病院の医業収支(医療での収入と経費の差)の赤字が08年に、ベッド数100床当たり月約1261万円に上ったことが、全国公私病院連盟(竹内正也会長)と日本病院会(山本修三会長)の調査で分かった。67年の調査開始以来最も赤字が大きかった。コストカットを優先する病院が多い中、診療報酬だけで経費を賄えない現状があるとみられる。
全国の病院の約4割にあたる3412病院に対し、08年6月1カ月の医業収支などを尋ね、1206病院(回収率約35%)が回答した。
医業収入は100床当たり約1億3609万円で、対前年比1・1%の減少。内訳は、入院収入が約9063万円(対前年比0・1%増)でほぼ横ばいだったが、外来収入は3・6%減の約3995万円と落ち込んだ。必要経費に当たる医業費用は約1億4870万円で、1・2%増。給与費の伸びが目立ち、1・3%増の約7791万円。100床当たりの赤字額は月約1261万円で、過去10年で最少だった00年(月約475万円)の倍以上に膨れ上がった。また、医業外を含めた総収支でみると、黒字の病院は23・8%にすぎず、76・2%は赤字だった。
公立病院、7割が赤字 医師不足で利用率低下/長野
読売新聞 2009年3月31日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nagano/news/20090330-OYT8T01014.htm
県内の公立病院の7割以上が赤字経営となっていることが、県市町村課などのまとめで分かった。
県内の公立病院は、県立病院5施設と、市町村か一部事務組合が設置した病院20施設。計25病院のうち、19病院の経常収支は2005年度から07年度まで3年連続で赤字だった。07年度の赤字額の合計は50億円で、03年度の約3倍となっている。赤字のおもな要因は医師不足による病床利用率の低下。県内の公立病院の平均利用率は77・3%(07年度)で、採算ラインの80%を下回っている。各病院は新年度から、総務省のすすめる公立病院改革プランを実施し、黒字化を目指す。
医療クライシス:コストカットの現場で/1 総務省「3年で経営改革」要求
毎日新聞 2009年3月31日
http://mainichi.jp/select/science/news/20090331ddm002040058000c.html
◇「黒字化」苦しむ公立病院
「予算計上を認めていただきたい」。今月6日の岩手県議会。達増(たっそ)拓也知事が議員に向かい、じゅうたんに額をこすりつけるように土下座した。
県立の1病院と5診療所の入院用ベッドを休止(無床化)するなどとした、県立病院・診療所計27施設の経営改革計画。反発した議会は、関連予算を認めなかった。無床化した診療所から、入院の必要な患者を病院へ送るマイクロバスの購入予算だった。
県の狙いは27施設の黒字化だ。経営に年141億円を出しているが、合計収支は年10億円余りの赤字。県の試算では、6施設の無床化で年約12億円の節減になる。他の策も合わせ13年度には県の支出を123億円に減らし、10億円の黒字にするという。議会は土下座後もバスの予算を認めなかったが、結局は無床化を容認した。
北海道に次ぐ広さで過疎地も多い岩手県。診療所周辺の住民は「開業医もなく、夜間・休日は無医村になる」と反発した。4万2653人の反対署名を知事に出したが、県は「医師不足が危機的で医師負担軽減も必要だ」と強調し、バスの代わりにタクシーを借りて計画を進めるという。
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総務省は07年12月に出した「公立病院改革ガイドライン」で自治体に対し、病院経営を3年程度で黒字化する案を08年度中に作るよう求めた。小泉内閣から続いた構造改革路線の一環だ。総務省によると、07年度は全国957の公立病院に自治体から計約7000億円が支出された。それでも計約2000億円の赤字。公立病院はコスト意識の薄さを指摘され、効率化は欠かせない。だが、救急、へき地など不採算医療を担い、黒字化は簡単ではない。
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兵庫県北部の但馬地区。豊岡市と朝来(あさご)市で作る「公立豊岡病院組合」が5病院を経営し07年度は約19億円の赤字だった。3年での黒字化は無理とみて、17年度までの9年で黒字化する計画を立てた。
赤字の主因は医師不足という。組合の試算では、医師1人が年約8000万円稼ぐが、03年度に113人いた常勤医は07年度には102人に。医業収支(医療での収入と経費の差)の赤字は、03年度は約8000万円だったが、07年度には約17億円に拡大した。
計画によると、10年度から毎年、組合の奨学金を受けた医師が5病院に順次着任する。17年度に15人に達し、黒字化を見込む。
だが、前途は険しい。手厚い看護体制にすると診療報酬が増えるため、08年度に看護師70人の確保を目指したが50人にとどまった。医師の突然の退職もある。昨秋、公立豊岡病院の麻酔科医5人のうち3人が辞めた。4月にやっと4人に戻る。同病院の竹内秀雄院長は「地方は不便で子供の教育にも困り、医師が定着しにくい。経営は大事だが、(総務省には)医療の質という視点がない。小児科など不採算な科も縮小はできない」と訴える。
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先進国で最も厳しいコストカットにさらされてきた日本の医療現場。相次ぐ公立病院の閉鎖や、産科・救急を巡る問題の続発に象徴されるように、厳しい状況は一向に改善に向かわない。現状と改善策を追う。
黒字化要求ねぇ…市民マラソンで3時間未満での走行を主催者が「誰か」に「要求」するのは止められませんが、給水所もAEDも準備せずにはちょっと、って感じでしょうか。
DPCは「全国平均タイムの1/2以下になったらペナルティ」という終わりないレースだし・・・
投稿情報: T | 2009年4 月 1日 (水) 16:20