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(投稿:by 僻地の産科医)
あんまり報じられないですけれど、
日本産婦人科医会は定期的に記者会見を行っていますo(^-^)o ..。*♡
医療への理解を深めてもらうためには、
報道の理解が根底になければ、正しい知識は伝わりません。
頑張ってるなぁとおもいます!
ではどうぞ!
先天異常モニタリングについて
第20回記者懇談会
H21.3.11 日本記者クラブ
(日本産婦人科医会報 2009年04月号 No.708 p7)
今回は平原史樹常務理事が、「データの蓄積こそ宝!生まれくる児のための先天異常モニタリング・サーベイランス機構」と題して日本産婦人科医会の外表奇形等調査(先天異常モニタリング)に関する解説を行った。
■モニタリングの歴史
1972年、当時の日本母性保護医協会(日母)森山豊会長主導により、本邦での先天異常モニタリングが開始された。これは1957年ドイツで市販(睡眠剤)され、さらに日本でも発売、妊婦にも服用されたサリドマイド剤による先天異常発生に端を発している。最終的には多くの被害児が見つかったが、当時は医師同士の情報交換システムもない上に、流行性疾患のように局所的に群発したわけではなく、結局、硯学の小児遺伝学者レンツ博士のサリドマイド剤による先天異常症例との警告が1961年11月に出され、ドイツでは薬剤の回収が徹底された。日本では1962年9月に回収指示が出され、その後も散発し、結局1974年の裁判で和解が成立した。この5年もの長きにわたり、催奇形薬剤が流
通し続けたことは世界中に深刻な反省を引き起こした。
WHO(世界保健機関)では日本から2年遅れて、1974年に国際先天異常監視研究機構(ICBDSR=International Clearinghouse for Birth Defects Surveillance & Research)を発足させ、医会のプログラムは1989年に正式加盟した。
■日本産婦人科医会のデータ蓄積が母児を護る
現在、日本産婦人科医会の先天異常モニタリングはわが国における唯一の先天異常モニタリング調査となっており、わが国の総出産児の約10%に当たる出産児を対象に調査が行われている。これは、日本産婦人科医会所属の全国約300の分娩医療施設の協力のもと、会員の地道な努力で大事な使命が果たされ、継続したからこそ、母児を護る宝となるデータが蓄積されてきた。各調査票は匿名化された集団データとして横浜市大国際先天異常モニタリングセンターに届けられたのちに集計、解析され(1992年以降)、疫学専門家も交えた検証がなされると同時にICBDSR においても情報解析交換を行い、先天異常の発生要因となり得る有害な薬剤・環境因子をはじめとする様々なリスク因子の早期発見を実施し、また実績を重ねてきた(表1、2)。
■世界と連携して
モニタリングの意義はICBDSR と連携し、胎児、新生児の健康を脅かす薬剤や有害因子の出現を疑わせる状況が生じた時点で直ちに、国、世界にむけて警告等の情報発信を行うサーベイランス機能を果たしているところにある。
すなわち「第2のサリドマイド事件は2度と起こさない」が私たちの基本理念である。いずれにしても、些細な変動推移から危険因子を超早期に発見する厳重な監視体制がとられているため、基本原則は“疑わしきは警告発布”となるのが通常である。
また、リスク因子を探索してきた先天異常モニタリング・サーベイランス制度は一方で、葉酸摂取により神経管閉鎖障害の発生の低減化が可能となってきたことも世界レベルで証明してきた。先進国の中で日本だけが二分脊椎症例が増加していたこともあり、2000年12月に当時の厚生省から妊娠1カ月前から妊娠後3カ月まで妊婦は葉酸を1日400μg 摂取するよう通達が出された。しかしながら、本邦女性の摂取率は10~20%にとどまり、その推進活動がまだまだ不足している状態である。
プレス側からはこの調査の支援機構でもある(財)日母おぎゃー献金基金の理念、活動についての質問や、葉酸摂取率の低いことへの改善策などについての質問、意見交換等があり、これらの推奨、推進にはマスメディアの協力も大切とのコンセンサスが得られるなど多くの成果があった。
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