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(投稿:by 僻地の産科医)
診療所の医療安全対策の強化を
キャリアブレイン 2009年3月9日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/20969.html
厚生労働省科学研究班が主催する「中小医療機関における患者安全のためのシンポジウム」が3月8日に開かれ、京大医学部附属病院医療安全管理室の長尾能雅氏が、診療所のタイプによって3段階で教育を実施するなど、大規模病院だけでなく医科、歯科診療所や中小病院の安全対策を強化する必要性を訴えた。
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長尾氏は、「中小医療機関の医療安全研究の考え方(試案)」のテーマで講演した。
この中で長尾氏は、横浜市立大医学部附属病院で起きた患者取り違え事故(1999年)や、京大病院のエタノール吸入事故(2000年)などをきっかけに、国による大病院中心の安全対策が本格化する一方、近年は中小規模の医療機関で事故が相次いでいる状況を指摘。「300床以上の病院は、数だと0.9%にすぎない」などと述べ、小規模な医療機関での安全対策を担保することが今後の課題になるとの認識を示した。
小規模医療機関の特徴として長尾氏は、
▽施設形態が多様で、ハイリスクな医療行為があったりなかったりする
▽内視鏡検査など特定の領域に特化するケースが多く、安全教育が偏る可能性がある
▽医療安全に対する施設長の認識の度合いによって対応が左右される
-などを列挙し、これらの施設形態などに応じて教育プログラムをつくる必要があるとの認識を示した。
特に診療所について、具体的には
▽有床かスタッフ20人以上(タイプA)
▽無床かスタッフ20人未満で、侵襲性の高い医療行為、危険薬剤使用、高度医療機器使用のいずれかを実施している(タイプB)
▽無床かスタッフ20人未満で、侵襲性の高い医療行為、危険薬剤使用、高度医療機器使用のいずれも実施しない(タイプC)
―に分類し、3つのタイプに共通する基本プログラムと、診療所の特徴を踏まえたオプションプログラムとを組み合わせるなど、安全教育を3段階で実施する形を提案。これらプログラムの具体化を今後の課題に位置付けた。
長尾氏はまた、「(中小医療機関では)開設時の資格認定が全くないので、スタート時点で(対策が)ばらついている」と問題視した。さらに、開設後の状況を監視するシステムの不十分さも指摘。「医師会や学会、保健所が監視するにしても、どちらかと言えば持ちつ持たれつの関係がある。自分たちの利益を求める団体が、自分たちをドライに評価できるのかという利益相反の問題が浮かび上がってきている」と述べた。
またシンポジウムでは、日本医師会医療安全対策委員会の北原三夫委員長が、診療所レベルでの医療事故防止システムの検討状況を紹介。日本歯科医師会歯科医療安全対策委員会の助村大作委員長は、日歯が07年にスタートさせた「歯科医療安全対策ネットワーク事業」の状況を説明した。「Uクリニック五十嵐歯科」(仙台市)の五十嵐博恵院長は、日歯のものをベースにした独自のマニュアルづくりなど、自院による医療安全の取り組みを紹介した。
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