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(投稿:by 僻地の産科医)
臓器移植について、考えましょうo(^-^)o ..。*♡
もうあまり時間が残されていません。
脳死移植10年 もう海外で臓器はもらえない
読売新聞 2009年2月27日
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090227-OYT8T00374.htm
臓器移植法にもとづいて、脳死した人から心臓などが初めて提供されたのは、1999年2月28日、高知赤十字病院でのことだった。それから10年がたとうとしている。だが、この間に日本で行われた脳死移植は81例にとどまる。
米国では毎年数千例、欧州の主要国でも年間数百例の脳死移植があるのに対して、あまりにも少ない。このため、幼児から大人まで大勢の日本人が移植目的で海外に渡航している。こうした日本の現状は臓器売買にもつながる「移植ツーリズム」と批判されている。世界保健機関(WHO)は5月の総会で、臓器移植は自国で完結させるべきだ、との指針を決定する見通しだ。国際社会の我慢が、10年の節目に限界を迎えた、ということだろう。日本がこの状況を続けることは、もうできなくなる。
日本の脳死移植が少ないのはなぜか。現行の臓器移植法が、脳死した人から心臓などの提供を受ける際に、世界で例のない厳しい条件を定めているからだ。
欧米などでは、本人の意思が分からない場合は家族の同意で臓器提供が可能である。ところが日本では、まず、本人がカードなど書面で提供意思を残していることが絶対条件だ。それでも家族が反対すれば移植はできない。提供意思の表示能力があるのは15歳以上とされているため、乳幼児は臓器の大きさが合わず、国内での移植はほぼ不可能である。このため、支援金を募って米国などで移植を受ける子どもが絶えない。大人も、中国で大半が死刑囚から摘出したと見られる臓器の移植を受けるなどしてきた。WHOの指針が決定すれば、外国で臓器をもらうことはますます難しくなるだろう。臓器移植法の改正が避けられまい。
内閣府の世論調査では、欧米並みの同意基準で脳死移植を認めてもよい、とする人が半数を超えている。子どもを脳死判定の対象にすることに慎重姿勢だった日本小児科学会も、方針を見直す方向で検討委員会をつくる。
しかし、政治の動きは鈍い。
国会には、欧米同様の基準で臓器提供を可能にする案や、提供意思を示せる年齢を12歳まで広げる案などが提出されてはいる。ところが、実質的な審議が一向に始まらない。WHOの指針決定を目前にしてもなお、国会は棚上げにし続けるのだろうか。「命のリレー」を早く、国内だけでできるようにしたい。
「臓器移植法の改正を」渡米移植成功の男児ら記者会見
MSN産経ニュース 2009年3月2日
http://sankei.jp.msn.com/life/body/090302/bdy0903021723001-n1.htm
米国で心臓の移植手術を受けた群馬県富岡市の高林京佑ちゃん(6)が2日、自宅での療養を認められ約1年半ぶりに帰宅するにあたり、群馬県庁で記者会見し、「ありがとうございました。(体調は)いいです」と元気にあいさつした。母親の真紀子さん(40)は「米国は言葉も食事も違い、慣れない環境での手術は精神的な不安もある。国内で手術ができるようになれば」と15歳未満の臓器提供を認めない臓器移植法の改正を訴えた。
真紀子さんによると、京佑ちゃんは真紀子さんと渡米し、昨年2月に手術。同9月に帰国後、東京女子医大東医療センター(東京)に約2カ月間入院するなどして治療を受けていた。今後は自宅から週1回程度、同病院に通い、小学校入学を目指す。
小児脳死移植「容認」65% 小児科医ら調査、慎重論変化の兆し
読売新聞 2009年2月27日
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090227-OYT8T00311.htm
臓器移植法が禁じる15歳未満の脳死臓器提供について、小児科医らの65%が「認めるべきだ」と回答したことが、日本小児救急医学会の調査でわかった。2005年に「時期尚早」と脳死移植に慎重だった日本小児科学会も、頼みの綱の海外渡航移植が難しくなる中、見解を見直す方向で検討委員会の設置を決めており、法改正論議に影響を与えそうだ。調査は、昨年、小児救急医学会員の小児科医や救命救急医ら1512人を対象に脳死移植の是非を聞き、467人(31%)の回答を分析した。
「小児の脳死臓器提供は必要か」との質問に対し、「はい」と回答したのは65%で、「いいえ」(6%)「わからない」(29%)を大幅に上回った。「小児の脳死を死と受け入れられるか」の質問でも「はい」と回答したのは56%で「いいえ」(15%)の約4倍だった。
小児の脳死臓器提供は、これまでは臓器を受ける側の患者団体、移植医らが中心となって実現を目指してきた。今回の調査結果は、「臓器を提供する側」でも、提供に慎重だった小児科医らが脳死容認に傾きつつあることを示す。ただ、実際の臓器提供を行う際の課題も見える。「子供の虐待を診断できるか」との質問に「はい」としたのは12%。「いいえ」の31%を大きく下回った。同学会は、6月にシンポジウムを開催し、脳死移植に対する見解を発表する。
脳死移植10年で81件 脆弱な救急医療、背景に
毎日新聞 2009年2月26日
http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20090227ddm003040172000c.html
◇年間10人前後、米国の1/100以下
臓器移植法(97年施行)に基づく国内初の脳死移植手術から10年。米国では年間数千人のドナー(臓器提供者)が臓器を提供しているが、81人の日本では年間10人前後で推移し広がりがない。背景には、脳死を人の死とみない死生観に加え、臓器提供に至るまでの負担が重い救急医療の脆弱(ぜいじゃく)性や課題、臓器提供・移植を支える体制の不備などがある。ドナーは事故で頭を打った人や脳出血の患者などが多い。10年前の第1例のドナー、高知県内の40代女性はクモ膜下出血だった。こうした患者は救急病院に運ばれる。治療だけでなく、患者の臓器提供意思表示カード(ドナーカード)をみて家族と話をし、脳死判定をするのも救急医の仕事だが、その現場は危機にある。
●医者不足
「地方には医師が集まらない」。第1例にかかわった高知赤十字病院の西山謹吾・救命救急センター長(50)は嘆く。高知県東部の救急医療の中核・県立安芸病院(安芸市)。08年12月に常勤の脳外科医が欠員となり、高知市から東の県域で脳外科に対応できる救急病院は事実上なくなった。
患者がドナーになると主治医は忙しい。脳死判定では、脳波の厳密な確認のため脳波計のノイズを除去するなど、不慣れな仕事が増える。西山さんは「数日間は通常診療ができない。負担を避けたい医師側が、臓器提供できることを患者の家族に言わない可能性もある」と話す。こうした実情は高知県に限らない。08年の毎日新聞の全国調査では、医師不足などの影響で05年以降、重症患者を診る「2次救急病院」の2割が救急診療を縮小した。
●患者集中
この影響で患者が残った病院に集中し、最重症患者を担当する3次救急病院(救命救急センター)の4割で、05年1月と比べ患者受け入れを断る回数が増えた。状況は悪化している。第1例5日前の99年2月23日。西山さんは広島で「今の救急医療のままでは脳死臓器提供はできない」と講演した。あれから10年。「救急医療体制が万全なら医師は手を尽くしたと思えるし、家族に臓器提供の話もしやすくなる。でも現実にはまだ課題が多い」
●所持8.4%
08年9月の内閣府世論調査によると、国民のドナーカード所持率はわずか8・4%。しかも、カードに提供意思を記入している人は約半数に過ぎない。また、所持しない理由として「カードの入手法を知らない」「臓器移植に抵抗がある」などが挙がった。
◇15歳未満禁止、法改正動き鈍く
第1例で肝移植を受けた遺伝性難病の50代男性は「同じ病気の患者が集うと、話は自分の子供が発症したらどうするかに帰着する」と、15歳未満の提供を認めていない臓器移植法のあり方に疑問を呈した。国内で移植を希望する患者は約1万3000人。厚生労働省研究班の調査によると、84年以降、海外で移植を受けたのは心臓が103人で、17歳以下が半数の54人を占めた。肝臓は221人、腎臓は198人。今も渡航する人は絶えない。国際移植学会は08年5月、臓器売買など不正な渡航移植を防ぐ目的で移植臓器の「自給自足」を各国に求めた。世界保健機関もこれを追認する方針で、15歳未満の臓器移植の門戸は、狭まるばかりだ。
法施行3年後をめどとする法改正も手つかず。日本移植学会の寺岡慧理事長は1月、「渡航移植に頼ってきた小児の脳死移植ができなくなる」と改正を求めた。「時期尚早」と反対してきた日本小児科学会も見解の再検討に乗り出した。国会には「小児からの提供を認める」など3通りの改正案が議員提出されているが、動きはない。厚労省は「国会審議を見守りたい」と静観している。
移植の普及啓発や家族のケアなどを担うコーディネーターも足りない。ネットワーク所属の約20人と、委嘱を受けた都道府県に計約50人。だが、山口県では10年以上務めた看護師が休職したため、昨年6月から不在が続く。04年以降、脳死臓器移植は増加傾向にある。あるコーディネーターは「今後増えると想定すれば、体制を強化する必要があるのではないか」と指摘した。
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◇初の脳死臓器提供
99年2月28日、高知県の40歳代女性が高知赤十字病院(高知市)で、臓器移植法に基づき脳死と判定された。女性はドナーカードを持ち、心臓、肝臓と両方の腎臓、角膜を提供した。心移植は大阪大病院、肝移植は信州大病院で実施された。
脳死
脳機能が完全に失われ、再び回復しない状態。人工呼吸器により呼吸が続き、心臓も動き続ける。臓器移植法は本人が生前に脳死での臓器提供意思を示し家族も提供に同意した場合に限り、脳死を人の死と位置づけている。
臓器移植のテーマを取り上げていただいて、ありがとうございます。
まず、臓器移植(脳死)がどれだけ行われているのかの資料です。
◎欧米、アジア各国と日本の臓器移植データ(トランスプラント・コミュニケーションのサイトから)
http://www.medi-net.or.jp/tcnet/data.htm
日本と先進国、あるいは近隣のアジアの国との差が歴然としています。
◎各国の臓器移植法(トランスプラント・コミュニケ-ションから)
http://www.medi-net.or.jp/tcnet/tc_5/TC5index.html
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2009年3 月 3日 (火) 17:59
次は、臓器移植に不安を抱いている一般市民のかたへの資料です。
◎一般向けの解説です。日本移植学会の臓器移植Q&A(日本移植学会)
http://www.asas.or.jp/jst/pdf/Q_A.pdf
外国人がからみた日本の臓器移植法の問題点を検討した文献です
◎日本の「脳死」政策への批判
『医療・生命と倫理・社会』 (オンライン版)Vol.5 No.1/2 2006年3月20日刊行
アリレザ・バゲリ
(京都大学大学院法学研究科リサーチ・アソシエイト、医学・医療倫理学)
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/eth/OJ5/alireza.pdf
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2009年3 月 3日 (火) 18:01
海外の宗教界が臓器移植をどうとらえているかの紹介です。
◎脳死臓器移植
海外の宗教界はどう考えるか
欧州・アジアを実地調査して
京都文教大学・生駒孝彰教授
http://www004.upp.so-net.ne.jp/chishu/ronron/ikoma02.html
最後はドイツで、心臓移植医療にたずさわれていらした南日大教授のインタビュー記事です。
◎脳死移植 日本でできる環境を 日本大医学部・南和友教授に聞く
(熊本日日新聞2008年11月14日朝刊)
http://kumanichi.com/iryou/kiji/transplant/40.html
投稿情報: 鶴亀松五郎 | 2009年3 月 3日 (火) 18:04
鶴亀松五郎先生(>▽<)!!!
いつもありがとうございます。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2009年3 月 3日 (火) 18:13