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(投稿:by 僻地の産科医)
地震も、新型インフルエンザも、
突発的に起き、ライフラインに異状を来たし、
受診希望者が多くなり、
医療従事者自身やその家族にもダメージを与えるという点で
おなじようなものかな、と思っています。
日ごろの備えが大事ですよね(>▽<)!!!
新潟中越沖地震と病院のロジスティクス
MTpro 記事 2009年3月23日
桜井 信哉
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0903/090320.html
わが国では自然災害が多発するため,各自治体がさまざまな防災計画を立てているが,病院が具体的に行うべき対処については対策が遅れている。東京大学病院における佐川急便グループからの寄附講座「ホスピタル・ロジスティクス講座」では,2007年7月16日に発生した新潟中越沖地震に際して,発生から1週間後に現地に赴き,災害時のロジスティクスに関して実態調査を行っている。東大病院と佐川急便グループとの5年間にわたる協同研究活動の総括として出版された『病院のロジスティクス―物流の効率化と患者サービスの向上―』(白桃書房)のなかで,その詳細がまとめられている。
災害時に不足する電気,ガス,水道水―日ごろから対策を
同書によると,病院において,電気は輸液ポンプ,生体モニター,人工呼吸器,体外循環装置などの医療機器を稼動させるために不可欠である。中越沖地震に際しては,地震発生後,刈羽郡総合病院などの病院への電気供給が停止した。その間,それらの病院では非常用の自家発電を行ったが,自治体の要請により優先的に電気供給が行われたため,7時間後に復旧した。自家発電を行うには燃料の備蓄が不可欠であるため,日ごろから準備しておく必要性が示唆される。
病院で使用されているガスには,燃料用ガスと医療用ガスの2種類がある。燃料用ガスは,冷暖房,調理器具の稼動のほかに,医療器具の殺菌に使われるオートクレーブでも使用される。また,医療用ガスとしては,治療や診断用に利用する酸素,亜酸化窒素(笑気ガス)・窒素が挙げられる。
中越沖地震では都市ガスが停止し,刈羽郡総合病院への供給再開は9日後であった。その間,エアコンやオートクレーブが使えず,同病院内は蒸し暑くなり,医療器具の滅菌ができなかったため,手術ができなくなった。対策としては,燃料の備蓄に加えて,代替燃料の確保を考える必要があるだろう。
水道水は,透析治療を行う際や検査機器・滅菌機器を使用する際に大量に必要となる。同病院では地震から1週間たっても水道が復旧しなかった。同病院では,地下に150t,屋上に80tを貯水できる貯水槽を設置しており,地震発生当時は合計約80tを貯水していたが,それは平時の1日分にも満たない量であった。
そこで,同病院では,水洗トイレを禁止し,仮設トイレを設置した。またコインランドリーの使用も禁止した。幸い,自治体などが専用の給水車を割り当てるなどの措置を取ったため乗り切ることができた。
十分な水確保できず2日間透析を中止
刈羽郡総合病院では,災害用の備蓄倉庫を設けていたが,在庫量はおおむね通常時の5~7日分であった。地震発生直後,傷病者の治療に生理食塩水,ラクテック,酢酸リンゲル液などの輸液が大量に使われたため,在庫では足りなくなった。
しかし,新潟県が災害に備えて50種類の医薬品と57種類の医療材料を備蓄していたため,同病院は生理食塩水と縫合セットの供給を依頼したところ,業者によって輸送された。また,医薬品卸売業者に電話して医薬品の在庫を確認し届けてもらった。業者は休暇中の社員が自主的に集まって医薬品の供給を行うなど協力的な対応を行った。
同病院では,地震が発生した16日と翌17日は十分な水の確保ができなかったため,透析治療を中止した。そこで,この2日間は予定していた透析患者を被災地外の病院にバスで送迎した。18日からは給水車が専用で割り当てられたため,透析治療を再開することが可能になった。
また,他病院への患者搬送は当初救急車で行っていたが,道路の混雑によりヘリコプターに切り替えた。同病院にはヘリポートが併設されていないため,近くの駐車場を臨時のヘリポートとして利用したが,1kmほど離れていたため大変手間取ったという。
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