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(投稿:by 僻地の産科医)
医療安全上、取り違え防止策は必要でしょう。
香川の件に関して、学会の処分なしという判断は妥当かと思います。
一方、代理母問題は、やはり社会的コンセンサスが一番重要なのでは?
とどうしても思ってしまいますが。。。。子供の法的問題もクリアされていません。
受精卵取り違え 学会が防止策
NHK 2009年02月28日
http://www3.nhk.or.jp/news/k10014469391000.html
香川県の県立病院で不妊治療を受けていた女性が別の女性の受精卵を移植された可能性が高いとして人工中絶した問題で、日本産科婦人科学会は複数の患者の受精卵を同じ作業台で扱わないなど、再発防止対策の徹底を通知するとともに、学会が不妊治療を行っている医療機関に対して実施している審査の際、安全管理の講習を受けているかどうか確認することを決めました。
この問題で、日本産科婦人科学会は担当した香川県立中央病院、産婦人科の川田医師から27日、取り違えの原因や患者への対応などについて説明を受け、28日の理事会で再発防止策について検討しました。その結果、複数の患者の受精卵を同じ作業台で扱わないことや、複数の医師らで確認し作業を行うことなど、受精卵を取り違えないようにする再発防止対策の徹底を産婦人科の医師に通知することにしました。また、質の高い医療を提供することを目的に学会が導入している不妊治療を行う施設の認定制度で、書類審査の項目に医師などが安全管理についての講習を受けているかどうかを新たに加えることを決めました。一方、川田医師については、再発防止に努めているとして、学会としての処分は行わないということです。記者会見した星合倫理委員長は「人工中絶を受けた夫婦や、受精卵の本来の両親である夫婦の無念を察するにはあまりあり、あってはならないことだ。再発防止に全力をあげていきたい」と話しています。
受精卵取り違え:産科婦人科学会が川田医師を聴取 /香川
毎日新聞 2009年2月28日
http://mainichi.jp/life/edu/child/news/20090228ddlk37040619000c.html
複数受精卵「もうやらない」…取り違え医師
読売新聞 2009年2月28日
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20090228-OYT8T00336.htm
受精卵取り違え 患者ら「辞めさせないで」 学会事情聴取 処分の影響不安
読売新聞 2009年2月28日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kagawa/news/20090227-OYT8T01088.htm
受精卵取り違え:担当医、処分せず 日本産科婦人科学会の理事会で決定 /香川
毎日新聞 2009年3月1日
http://mainichi.jp/life/edu/child/news/20090301ddlk37040238000c.html
代理出産:続行で根津院長、2度目の厳重注意処分に
毎日新聞 2009年2月28日
http://mainichi.jp/life/edu/child/news/20090301ddm041040156000c.html
日本産科婦人科学会は28日、学会の会告に反して姉妹や実母による代理出産を実施している諏訪マタニティークリニック(長野県)の根津八紘(ねつやひろ)院長を、同日付で厳重注意処分にしたと発表した。日産婦は07年4月にも根津院長に同じ処分をしており、厳重注意は2度目。日産婦は03年に代理出産を禁じる会告を出しており、「前回の厳重注意後も代理出産を続けている」と判断、処分を決めた。
根津院長は夫婦以外の卵子や精子を使った非配偶者間体外受精を行ったとして98年に日産婦から除名され、04年、会告の順守を条件に再入会している。
根津医師を再度厳重注意 日本産科婦人科学会
47NEWS 2009年2月28日
http://www.47news.jp/news/2009/02/post_20090228201812.html
日本産科婦人科学会は28日、長野県の諏訪マタニティークリニック院長の根津八紘医師が、学会の厳重注意を無視して代理出産を継続したのを確認したとして、再び厳重注意処分にすることを決めた。学会は倫理指針で代理出産を禁じている。だが根津医師はこれに違反して代理出産の実施を数回にわたり公表。学会は2007年4月に厳重注意していたが、根津医師は昨年8月に、日本受精着床学会で新たな実施例を発表するなどした。
日本産科婦人科学会側は根津医師本人から実施の事実を確認。前回の厳重注意より重い処分も検討したが「処分を重くするより、注意を繰り返す方が抑止効果が期待できる」との意見が大勢を占め、今回の処分を決めた。
代理出産の根津医師を厳重注意 日産婦
朝日新聞 2009年2月28日
http://www.asahi.com/national/update/0228/TKY200902280167.html
こればかりは、産婦人科医が、中絶を余儀なくされた妊婦よりも、ダメ医者を大切にする身内びいきの印象があります。
周産期の妊婦死亡は不可抗力で、産科医が刑事責任や民事責任を負うのは筋違いですが、この場合、医師の受精卵の扱いが杜撰すぎますね。
医療現場に司法の介入を反対するのであれば、こういう医療事故こそ、医師が身内に厳罰な社会的制裁を課すべきであると思います。
だから、身内に甘い、信用ならないといわれる。
妊娠中絶した女性のことを考えると、この医師を処分をしないなんて、結局、日産婦自らが産婦人科医の信用を自ら貶めているのではないかと思います。
投稿情報: 苦労婆 | 2009年3 月 2日 (月) 16:25
お気持ちはわかりますが、やっていたことがある身として、意見を言わせていただければ、(もちろん、どちらの気持ちもわかるのですが)受精卵の取違え、少なくとも手術部位の取違えや人間の取違えよりももっと容易に起こりうる事なのですよ。
一人で、人工授精や、体外受精をやっているような施設では、もっとヒヤリとすることは多いでしょう。
私のやっていた施設なんかよりも。
不注意とかそういう問題だけではない、何かがあると思います。だってもう「名前」が離れてしまえばもう確認しようのないものです。
アメリカでは、一番最初に
「静注してしまった薬剤はもう戻らない」ということを学ぶそうです。
体外受精、人工授精も同じです。
同様の事故は、公にされていないだけで、実は他の施設でもおきているのではないかと私は思っています。
個人を責めておしまいにするよりも、次にむけて、全国に警告を発し、防止するための聴取を行うのは、WHOの医療事故防止に対するマニュアルにも添った形での対応ではないかと思えます。
なお、不妊治療は東京でこそ望めば容易に受けられるのですが、
実のところ、地方での崩壊は著しく、人工授精でさえ
山あいの地域では受けられません。
香川での状況がどうなのかはよくわかりませんが、60歳を過ぎた退職後の先生以外にこの業務をしてくれるDrがいない状況というのは、非常に理解できるというか、それだけでも
「香川では容易に、不妊治療は受けられないんだな」
と想像できます。
もちろん想像の範囲内で、どのような状況なのかわかりませんが、
癌の治療でさえ、産科崩壊を受けて、各地で受けづらい状況になっています。
不妊治療もまた同様なのだろうと私は思っています。
「産婦人科」は
「産科」
「腫瘍(癌・良性腫瘍)」
「不妊」
の3本柱で成っています。
多くの産婦人科医は一応、すべてができ、
そのために一番人数が多く必要とされている「産科」に
忙殺されています。他の部門はおろそかにならざるをえません。
もともと不妊専門でも
「もう10年は不妊治療なんてやっていない」
先生なんていくらでもいます。
香川県のこの医師の場合、この医師を処分すると、この施設では不妊治療が出来なくなるという背景があります。切実な問題ではないでしょうか?
「かばいあい」などと言ったレベルの話ではない、と私は思っています。
投稿情報: 僻地の産科医 | 2009年3 月 2日 (月) 17:17
医者個人を処分したからって、何にもならない問題だと思います。
もちろん、医者に責任がないとは言わない。
でもこのお医者さま、地元ではとても感謝されていたのではないでしょうか。
そのお医者がいたからこそ、子供を授かったお方も多いのでは?
だからミスしていい、とは言いません。
ただ、人間なら誰しも必ずミスをする。
絶対にミスしない人間などいない。
複数の人間が、ダブルチェック、トリプルチェックをかけても、ミスする可能性はゼロにはならない。
それを知っていながら、たったひとりで受精卵を扱わなくてはならなかったこのお医者の立場、状況は、悲惨、の一言です。
投稿情報: suzan | 2009年3 月 3日 (火) 14:18
病院は「再発防止のためにマニュアルを作成」するそうですが、人手を増やす気ははいようです。公立病院にありがちな話ですね。はあ~。
本気で再発防止したいならば、最善は産婦人科医を増やすことですが、このご時勢ではそう簡単ではないでしょうから、不妊専従スタッフや、専任エンブリオロジストを雇用するぐらいはできないのでしょうか。「ただでさえ疲弊している現場の医者に、書類仕事を追加してマンパワーの応援はなし」という、病院側の態度に脱力感をおぼえます。
病院Hpを拝見すると、常勤医5名(+パート女医?)のようですね。問題の先生は不妊だけでなく。60代にして産科当直もやってたんじゃないかと思いますよ。
投稿情報: clonidine | 2009年3 月 3日 (火) 20:17
本当ですよね。
真摯に受け止めていない病院の姿が目に浮かぶようです。
「所詮、不妊治療だろ?」
とか思ってるんでしょうね。
「命にかかわらないじゃん」
「人手?何馬鹿なこと言ってるんだ。医療安全ッたってそんな、大層なことじゃないだろ?」
みたいな。
そもそもそういう態度の病院でしか、こんな事件起こりようがないもの。
こういう事件が起こる現場ですよね。本気で!
投稿情報: 僻地の産科医 | 2009年3 月 3日 (火) 21:01