(関連目次)→病院の赤字・倒産 地方医療の崩壊 実例報告
(投稿:by 僻地の産科医)
民間病院の4分の1が昨年度赤字
キャリアブレイン 2009年3月23日
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/21180.html
国内にある民間病院(法人)の約4分の1に当たる25.7%が2007年度決算で赤字だったことが、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)が行った分析結果で分かった。赤字経営の病院の1医療機関当たりの平均医業収益高は13億4682万円で、黒字経営の病院に比べて4656万8000円少なかった。一方、民間診療所(法人)では全体の33.8%が赤字だった。
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一般病院の4割超が赤字-福祉医療機構調べ
データ分析は1、2月、税理士や公認会計士でつくる「TKC全国会」が発行する「TKC医業経営指標(M-BSAT)平成20年度版」に掲載された全国685の法人病院と3178の法人診療所の決算データを基に行われた。
黒字と赤字経営の病院を比較したところ、全体の74.3%(509病院)が黒字だったのに対し、25.7%(176病院)は赤字だった。一方、診療所では、66.2%(2104診療所)が黒字だったが、約3分の1に当たる33.8%(1074診療所)は赤字だった。
また、各医療機関の平均従業員数、平均医業収益高、平均総資産をそれぞれ比較したところ、赤字経営の病院では、平均従業員数が146.5人、平均医業収益高13億4682万円、平均総資産15億3425万4000円で、いずれも黒字経営の病院の数値を下回った。赤字経営の診療所でも、平均従業員数は13.5人、平均医業収益高1億2667万1000円、平均総資産1億1635万円5000円で、すべて黒字経営の診療所より少なかった。この結果、赤字経営の病院、診療所は共に、黒字よりも事業規模が小さいことが分かった。
黒字と赤字経営の病院の売り上げ原価率は、黒字が20.0%だったのに対し、赤字は24.1%。診療所では、黒字が20.4%、赤字22.9%で、いずれも赤字が黒字を上回った。さらに、黒字と赤字経営の病院の従業員1人当たりの売上高、売り上げ総利益、人件費をそれぞれ比較したところ、従業員1人当たりの売上高は赤字が黒字を1.7%上回ったが、売り上げ総利益は黒字が赤字より3.5%多かった。さらに人件費は、赤字が黒字よりも6.9%多かった。
従業員1人当たりの売上高は赤字病院の方が多かったことから、日医総研では「赤字病院の生産性が、黒字病院のそれを下回っているわけではない」と指摘した上で、「赤字病院は、仕入れ面と人件費面でのマネジメントにおいて、黒字病院と比べて、その効率性を損ねていると思われる」と分析している。
地域医療はいま 命の現場に経営視点 /岩手
朝日新聞 2009年3月23日
http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000000903230005
「過疎地の病院は絶対に必要だ。しかし、全国の自治体病院の中には、赤字のところが非常に多い。税金を投入して存続させるためには、自助努力もしてもらわないと。そこを考えてもらう『きっかけ』にしたかった」
今月上旬、増田寛也元知事は朝日新聞の取材に、総務省が07年12月、全国の自治体病院に経営改善の改革プラン策定を求めた「公立病院改革ガイドライン」の意義をこう説明した。増田氏は当時、総務大臣を務めていた。
「総務省から通知を受けるのは初めてだったと思う」。県医療国保課の柳原博樹総括課長は振り返る。
本来、医療行政を担う国の機関は厚生労働省。地方自治を担当する総務省が病院経営に切り込むのは異例だ。背景には、「夕張ショック」を契機に、07年6月成立した地方財政健全化法がある。ガイドラインにはこう記されている。「(同法の施行に伴い)地方公共団体が経営する病院事業は、事業単体としても、地方公共団体の財政運営の観点からも、一層の健全経営が求められる」
人の生命を守る医療現場に「経営改善」の視点が持ち込まれた。
県や市町村など自治体が運営する病院は全国に約980。そのすべてが、今月末までに経営改善の改革プランを策定しなければならない。
県内の自治体病院は県立22、市町立8。県はガイドラインを受け、この30病院の役割分担を示した公立病院改革推進指針を策定した。05~07年度の経営実績を指標に、赤字が目立つ施設には病床削減や診療所化の検討を迫った。07年度末までに138億円の累積赤字を抱えていた県医療局。2月に正式決定した地域診療センターの無床化などを含む「県立病院の新しい経営計画」は、改革プランそのものだ。医療の提供体制の縮小は、医師不足に加え、合理化による経営収支の改善の狙いもある。
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「健康に暮らすため、沢内病院を守ろう」「現状より後退しないよう強く望む」
今月1日、西和賀町内で開かれた「沢内病院を守る町民大会」では、集まった約250人の町民から次々に声が上がった。主催者は老人クラブや婦人会など町内の住民団体。住民主導で病院の意義を確認する初の大会だ。
地域医療の先駆けと称賛される沢内病院(40床)だが、経営は苦しい。転機となったのは06年。この年、3人体制だった医師のうち2人が相次いで退職。入院や救急の受け入れを制限せざるを得なくなった。患者は盛岡や北上、秋田県横手市など近隣に流れた。「ここでは十分な医療が受けられない」。住民と病院の信頼関係が薄れ、「沢内病院離れが起きていた」と佐々木一・沢内病院事務長は言う。
経営収支も悪化。07年度は町の一般会計から病院会計に約1億7900万円を繰り入れたが、それでも赤字が出た。歳出総額約70億円の町には少なくない額だ。県の指針は沢内病院に、「病床削減あるいは診療所化について検討が必要」と改革を迫った。
町は昨年11月だけで、15回を超える住民説明会を開いた。繰入金のうち、国からの交付税約1億1千万円を除く6000万円余りが、町の一般財源からの支出。人口約7千人の西和賀町民が病院のために「自腹を切る」額は、1人当たり年約9千円だ。対話を通じ、病院規模を維持する方向が固まった。南北約50キロ。盛岡―北上間に匹敵する距離を持つ西和賀町に病院がなくなれば「自分が患者になったとき」の不便さは計り知れないからだ。
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一方、洋野町国保種市病院が病床削減と介護施設の併設を決めるなど、改革の方向性は病院によってまちまちだ。
「大事なのは住民に病院の置かれている状況を開示すること。負担も含めて、病院のあり方を選ぶのは住民なのだから」。佐々木事務長は強調する。
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