(関連目次)→「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」
(投稿:by 僻地の産科医)
以前お伝えした検討会レポート!
MT Proからもでていましたのでお伝えします(>▽<)!!!!
周産期医療と救急医療の確保と
連携の改善は事業主負担が前提?
MTpro 記事 2009年2月6日掲載
篠原 伸治郎
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0902/090206.html
2月3日,厚生労働省(厚労省)「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」の第6回会合が開催された。国会では,第2次補正予算も通過,現在,政府の本予算審議に入っており,今後国会の承認を得れば,厚労省が同検討会の資料として示した「救急医療対策平成21年度予算案」に基づいて,検討会の報告書案各項目に対する財源獲得も勘案することになる。しかし,検討会の報告書に基づく改善策の実施には,事業主や自治体のさらなる出費が付帯条件となっている実態が明らかになった。
平成21年度予算案で救急医療対策の事業予算額が示されたが…
前回の第5回では,用意された報告書(案)をめぐり,文面の用語の使い方,あるいは解釈について指摘が相次いだため,再度,各構成員から指摘を集めた。
今回は,その内容を受けて修正した報告書(案)(概要)が提出された。
今回の懇談会も予定時間が終わりそうなところで,添付されていた資料「救急医療対策平成21年度予算案」に目を通していた昭和大学(救急医学講座)主任教授の有賀徹氏から疑問の声があがった。
「各事業の金額の部分だが,これは国の負担3分の1で残りは都道府県何分の1,市町村何分の1ということですよね」
平成20年度予算100億円から平成21年度予算案は205億円という増額が示され,報告書案に記載されているドクタ-フィーなどの金銭的な措置もこの予算案に基づいて支払われることになる「はず」であった(報告書案のなかから該当部分抜粋)。
例えば救命救急センター運営事業の,救命救急センター(20~30床型)に対しては「医師・看護師等の確保に係る人件費,材料費等」の経費に対して,総額約48億という財政措置があることになっている。
問題は補助率「1/3(負担割合:国1/3,都道府県1/3以内,市町村1/3以内,事業主2/3以内)」というような記述のなかにあった(厚労省の配付資料より抜粋)。
つまり事業主,都道府県が支払うことが前提の国の補助という実態が,文脈に潜んでいるというのだ。
補助制度の事業主負担は実情無視
赤字で苦しむ医療機関にさらなる出費を?
有賀氏は「現在,ほとんどの医療機関がどう赤字を削減するかという状況のなかで,お金が払えない事業主がたくさんあって(医療問題のおおもとにある医療現場の改善対策ができなく)困っている。そうしたなかで行ってきた議論ではなかったのか。どうやってさらに人件費を捻出しろというのか。救命救急センターは,診療報酬体系で赤字を余儀なくされていることはご存じのはずだ。私も副院長であり院内の予算も見ている。勤務医に支払いたいという“心”はある。しかし先立つお金がなくて困っている。逆立ちしてもどうにもならない」と実情を無視した財政支援方法であることを指摘した。
山形大学医学部長の嘉山孝正氏も「この予算を実際に勤務している医師に支払えるようにしてもらう必要がある。そうでないと,予算を使って非常勤を新たに雇用するよう指示が出たりする。今までがそうだった。新たな勤務医を探すこと自体も困難だが,現場で働いている勤務医にとって何らのインセンティブにもならなければ意味がない」と続けた。
埼玉医科大学総合医療センター・総合周産期母子医療センター長の田村正徳氏は「休日夜間救急患者受入医療機関支援事業(新規)の部分には『※都道府県,市町村が負担しない場合でも補助が可能』と注で表記がある(厚労省の配布資料参照)」ことを指摘した。そのうえで「ドクターヘリ導入促進事業関連の財政措置のように負担額が巨額になるわけではない部分はすべて『※都道府県,市町村,事業主が負担しない場合でも補助が可能』と記せないのか」と訴えた。
厚労省の担当者や渡辺孝男厚生労働副大臣からは「補助金というのは,現在のルールでは事業主が医師に支払う部分について,では国として補助しましょうというもの」との回答があった。
また,平成21年度予算案はすでに固まっており,これから文面を変更することは不可能であることが伝えられた。
嘉山氏は「本当に国家はやる気があるのかという試金石になる」と述べ,「赤ちゃんとお母さんを助けるために,医療現場の状況をなんとかよくしようと検討会で議論してきたうえでの提案だ。ルール,つまり法律上の障壁があってそれが実際に行えない状況があることが分かった。法律を変えられるのは国会であり政治家だ」と指摘した。
この懇談会が開催されることになった発端は,都立墨東病院など周産期医療と救急医療の問題だった。今年(2009年)1月20日には,兵庫県において交通事故で重傷を負った69歳の男性が死亡し,県内外の14病院で救急搬送の受け入れが不能だったことが先日報道されたばかりだ。医療費抑制策に基づく診療報酬抑制などで医療機関の多くが赤字に苦しんでいる。
一方で,公立病院にまで市場原理の導入を推し進めたため,事業主は廃院の危機を常に意識し,無駄とは言えない部分まで切り詰めざるを得ない状況が作られている。周産期や救急の確保・連携では,医療訴訟のリスクを抱えるなか,こうした二律背反する政策を進めてきたことが,今回のような医療問題の要因となっていることは否めない。
結局,実際の改善を行う段になって,実質的に事業主や各自治体の善意に委ねるという国の姿勢に疑問が呈された形だ。報告書の各提案を実行困難なまま終わらせることを国民は望んでいるのだろうか。
付.平成21年度予算案「救急医療対策関係」の財政措置で指摘された問題点
[1] 救急医療対策関係の平成21年度予算案は,あくまでも単年度予算で22年度予算からどうなるかは不明。
[2] 勤務医に対する手当てと明記されていない部分は,実際には手当てにはならず,今回の検討会の議論は反映されない形となっている。→危険手当(ハイリスク診療手当)のように,ドクターフィーに使うよう明記すべき。
[3]周産期医療対策事業で,母体搬送コーディネーターに積算予算として,2962万5.000円/1都道府県と記されているが,これも補助(1/2負担割合:国1/2,都道府県1/2)であるため,各自治体の財政状況によっては補助負担に難色を示す可能性がある。各都道府県が手をあげることが前提。→全都道府県で行うことを明記すべき。
※構成員名簿(敬称略,第6回配布資料より。欠席者含む)
阿真 京子 「知ろう!小児医療 守ろう!子ども達」の会 代表
有賀 徹 昭和大学医学部救急医学講座 主任教授
池田 智明 国立循環器病センター周産期科 部長
海野 信也 北里大学医学部産婦人科学 教授
大野 泰正 大野レディスクリニック 院長
岡井 崇(座長) 昭和大学医学部産婦人科学 主任教授
嘉山 孝正 山形大学医学部長 脳神経外科学教授 救急部長
川上 正人 青梅市立総合病院 救命救急センター長
木下 勝之 順天堂大学医学部産婦人科学講座 客員教授
杉本 壽(座長代理) 大阪大学医学部救急医学 教授
田村 正徳 埼玉医科大学総合医療センター 総合周産期母子医療センター長
藤村 正哲 大阪府立母子保健総合医療センター 総長
横田 順一朗 市立堺病院 副院長
〈参考人〉
有馬 正高 東京都立東部療育センター 院長
岡本 喜代子 (社)日本助産師会 副会長
迫井 正深 広島県健康福祉局長
佐藤 秀平 青森県立中央病院総合周産期母子医療センター長
照井 克生 埼玉医科大学総合医療センター 産科麻酔科診療科長
揚げ足取りツッコミ。
> 問題は補助率「1/3(負担割合:国1/3,都道府県1/3,市町村1/3,事業者1/3)」というような記述のなかにあった(厚労省の配付資料より抜粋)。
例示ということですが、数値が妙ですね。
国に1/3、都道府県に1/3、市町村に1/3、事業者に1/3の金額を出させたら、合計は4/3となり1を超えます。
お金が余ってしまうではないか!
元の厚労省資料
◆救急医療対策関係平成21年度予算案
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/02/dl/s0203-6c.pdf
>●休日夜間救急患者受入医療機関支援事業(新規)
>(補助率)1/3(負担割合:国1/3、都道府県1/3以内、市町村1/3以内、事業主2/3以内)
「以内」が付いております。これなら合計が1に納まりますね。
投稿情報: YUNYUN | 2009年2 月17日 (火) 21:06
YUNYUNさま、ありがとうございました!
記者の方からご連絡があり、文章を治しましたとのことでしたので、こちらでも訂正させていただきました!
投稿情報: 僻地の産科医 | 2009年2 月18日 (水) 23:28