(関連目次)→新型インフルエンザについても集めてみましたo(^-^)o
(投稿:by 僻地の産科医)
パンデミック時は一般病床の1割が新型インフル患者に
患者の不安は「普段の医療の確保」
医療従事者の体制維持が課題
村山みのり
2009年2月13日 m3.com編集部
http://www.m3.com/iryoIshin/article/91695/
2月3日、厚生労働省で「新型インフルエンザ患者会ミーティング」が開催された(主催:平成20 年度厚生労働科学研究費補助金〔新興・再興感染症研究事業〕「感染症情報国民コールセンター設置と実施に関する研究」研究班)。厚労省側が現在進めている対策・実際に新型インフルエンザが発生した時の行動計画などを説明し、それについて喘息、アレルギー、透析、がんなどの患者会側の出席者と、新型インフルエンザに関する不安や心配、希望する情報提供、対策への希望を巡り意見交換を行うことが目的。
まず、厚労省健康局結核感染症課・新型インフルエンザ対策推進室の高山義浩氏から、(1)新型インフルエンザの基礎知識、(2)インフルエンザ予防の基礎知識、(3)政府の想定と戦略の概要、(4)今後の取り組みと課題について、プレゼンテーションが行われた。高山氏はパンデミックの規模と患者数等の推計について、下表のように紹介。なお、2004年のインフルエンザ流行時の患者数が1770万人であったことも参考として示された。
*罹患率については第7回ヨーロッパインフルエンザ会議(1993年)の勧告に基づく
新型インフルエンザの流行が生じた場合、感染が疑われる患者は、まずかかりつけ医や発熱相談センターに電話相談を行い、感染症指定医療機関の開設する「発熱外来」を受診することとなる。なお、発熱外来は常設ではなく、必要に応じて適宜立ち上げられる。
入院については、上記の推計では、一般病床の10床中1床が新型インフルエンザ患者に充てられる計算となる。パンデミック時には、入院機能については原則としてはすべての医療機関が対応に当たる計画となっているが、産科、新生児、透析、がん専門病院などについては例外とする考え。また、例えば、
(1)がん専門医療については大学病院などで集約的に行い、市中病院はパンデミック対策に当たる
(2)医療機関が重症患者で満床となった場合、介護力の問題などで退院できない人については一時的に公共宿舎などを入院施設として整備・利用する
(3)既存の病室に例外的にベッド増を認める(6床の病室を8床で利用するなど)
などの対策が検討されている。なお、病床増のためのエキストラベッドについては、既に自治体などへ配布が始まっている。
一方で、医療機関従事者については4割への感染が見込まれ、その中で必要な医療体制の維持が可能か否かも大きな課題であるとした。なお、パンデミック時に患者の絶対数が増える事態に対し、医療従事者確保への特段の対策はなされていない。現役の臨床医でもある高山氏は、「これはパンデミックではなく地域医療崩壊の問題。既に日本の医療はぎりぎりのところで回している状態で、何か特別の事態が起きた時にそれを吸収する余裕や弾力がないのが実情。実際に非常事態になった際に、現在の医療に潜在しているむだや非効率性が排除されてどうにかなるのを期待するしかない」と述べた。
患者会との意見交換
参加した患者会は喘息、アレルギー、透析、がん患者団体など。日ごろから頻繁に医療機関を受診する機会の多い立場から、不安や疑問点、希望について意見が交わされた。以下に主な意見と回答を紹介する(回答は高山氏)。
Q.パンデミック時における、普段使っている薬の確保、持病が重篤化した時の入院が可能かどうか不安である。
A.必要な医療・医薬品については、パンデミック時であっても確保できるように努める。入院が必要な人が入院できないという状況は作らないようにしたい。薬の生産については、常に必要となる薬については各製薬企業が事業計画で策定しているが、運送・流通を担う業者の確保などは大きな課題。かかりつけ医と相談の上、パンデミック期間をしのげる分は備蓄できるようにする、慢性疾患については海外で流行が始まった段階などで非常用に2-3カ月分長期処方を行っておく、などの対策も検討している。緊急の場合に取り寄せる方法は整備する予定。
Q.抗がん剤治療などで抵抗力が弱くなっている人は、新型インフルエンザにかかると重篤になってしまう。都市部の専門病院への通院のために人混みへ出るのも心配。
A.パンデミック期間は、出歩かず家にこもることが安全なのは確か。状態が安定している場合は、かかりつけ医と相談の上、当該期間中は外出の必要を減らすため例外的な長期処方や電話・FAXでの処方せんの発行、医薬品を届けるサービスなども検討する。
Q. 透析のため、2日に1度通院しなければならないが、必要な医療が確保できるのか。
A.透析医療確保については、現在全国腎臓病協議会がガイドラインを策定中。また、透析患者は、インフルエンザを罹患した場合にも、透析のレベルなどによって薬の量やタイミングにかなり個人差が出ると考えられる。かかりつけ医からの電話・FAXなどによる情報提供や、発熱外来への同行など、地域の医療特性に応じて検討していただきたい。
Q. 呼吸器疾患を持っていると抵抗力が弱く、病気にも罹りやすい。有効な予防策は。
A.新型とはいえインフルエンザはインフルエンザ。うがい・手洗いなど通常の予防方法をより徹底してもらうことが大事。感染は、空気感染だけでなく手を介したものも多い。例えば、外出時に手すりなどを触った手で自分の顔に触れたりしないようにする。ウイルスという意味で自分の手が不潔か清潔かを常に意識し、こまめに手洗いをする。自分は感染症医として診療に当たる際、自分の手が不潔な場合は手を洗うまで絶対自分の体に触らないということを徹底したら、病気に感染することがほとんどなくなったので、ぜひ実践してみてほしい。
【参考】厚生労働省・新型インフルエンザ対策関連情報
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html
新型インフル対策なしなら…首都圏半数感染の予想
朝日新聞 2009年2月24日
http://www.asahi.com/science/update/0224/TKY200902240180.html
海外で新型インフルエンザに感染した人が帰国して東京都内でウイルスを広げた場合、何の対策もとらなければ首都圏に住む人の半分以上が感染するという分析を、国立感染症研究所の大日(おおくさ)康史主任研究官らがまとめた。国が新型インフル対策の前提として想定する感染率25%以下に抑えるには、全学校を休校にし、出勤する人を4割減らす必要があるという。 国土交通省や東京都でつくる東京都市圏交通計画協議会が、都と神奈川、埼玉、千葉各県、茨城県南部の住民(計3400万人)の移動方法や昼間の所在などを追跡したデータを参考に試算。感染の広がり方を解析した。
海外で新型インフルに感染した会社員1人が帰国して感染を拡大させる想定。感染3日目に東京・八王子の自宅に戻り、4日目に東京・丸の内の勤務先に出社してから発症。病院で新型インフルと診断され、7日目から自治体などの対策が始まるというシナリオ。感染拡大は25日目ごろにピークを迎える。 外出自粛要請などの対策を何もとらなかった場合、通勤や通学などを通じてウイルスが広がり、最終的には首都圏住民の51.6%が感染するとみられる。
保育園から大学まで休校にした場合はわずかに減り、47.4%。休校措置に加えて、全面的に外出自粛を求め通勤人数が4割減った場合、感染率は19.1%に下がる。通勤人数が6割減れば、通常の季節性インフルエンザの感染率並みの9.5%まで下がるという。 国の対策にも休校や通勤自粛の推進などが盛り込まれている。大日さんは「こうした外出規制策がどれだけ浸透するかが感染拡大防止のカギ」と話している。
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