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(投稿:by 僻地の産科医)
私も同感です(>▽<)!!!!!
文学的なことしたいなぁ(笑)。最近本も読めていません。
「日本経済新聞」夕刊(毎週火曜日号)
「プロムナード」2009/02/03
最後の砦の陥落--鹿島 茂
最近、おそらくはだれもきづくことはないだろう、ある事実を発見し、愕然とすると同時におおいに憂国の思いを深めている。
なんのことかといえば、文化の最後の砦であるはずの医者が、諸般の自浄から完全に無教養層に転落しつつあることだ。今の日本は文化的に危険水位に近づいている。
思い出していただきたい。森鴎外、木下杢太郎、斎藤茂吉、安倍公房、北杜夫といった例を挙げるまでもなく、文学史に名を連ねる作家の少なからぬパーセンテージが医学部出身者で占められていたことを。また、作家のかなり多くは医者の家から生まれてきたことを。さらにいうなら、文学の読者の相当数は医者およびその家族であったことを。
いや、話は文学に限らない。美術でも音楽でも、古書の世界、趣味・道楽の世界でも、ようするに金儲けと関係ないことの多くは、代々、医業を家業とする者とその家族によって支えられてきたという厳然たる事実があるのだ。
なぜなのか?単純な話、医者、とくに地方都市の開業医は、ある程度のインテリジェンスに加えて、金とヒマという財産があったからだ。この三つがそろっていれば、誰だって、道楽および文学・芸術に興味を持つはずなのである。
ところがいまはどうだろう?
全国の医者諸氏の中で、自分はこの三つを併せ持っていると自身をもって答えることのできる者がいたら、手を挙げていただきたい。まことにもって心もとない限りである。
まず、ないのがヒマ。厚生労働省の悪しき医療システムいじりが幾重にも重なったおかげで、ヒマのある医者というのが日本から干上がってしまった。ヒマがなければ本は読めないし、音楽も聴けない。いわんや、展覧会などに足も運べない。
では、インテリジェンスはあるのかといえば、これは、かなり前から憂うべき状態となっている。それを知りたければ、医院の待合室に置いてある雑誌を見るとよい。昔は『文芸春秋』・『中央公論』のような総合雑誌が置かれていたが、近年は「あったら奇跡」で、置かれているのは、モノの宣伝で埋め尽くされた金満家雑誌のみ。
これは、「医者は儲かる」という神話のおかげで医学部の偏差値が上がりすぎた反動である。All work and no play makes Jack a dull boy.という諺どおり、医者は高校時代に勉強しすぎてダル・ボーイ(強いて訳さないでおく)になってしまったのだ。
そして最後に可ね。統計が示すところでは「医者は金持ち」というのはすでに伝説にすぎなくなっているようだが、今回の恐慌で、その傾向は倍加する。会社を解雇され、企業健保から国民健保に切り替えになったが、その健康保険料が払えないために病気人であっても医者にかからないというアメリカ的無保険貧困層の拡大は必定だからだ。医療は不景気に関係ないと思っていたのは昔の話.恐慌で無職・無保険が増えれば、医者に循環する金も減るのである。
かくして、医者は三無的な存在に堕し、「文化の最後の砦」も陥落し、日本は非文化国家へと転落してゆく。
悲観的予測だが、これはたぶん当たっている。残念ながら!
うp 有り難うございます。
TBさせていただきました。
投稿情報: くらいふたーん | 2009年2 月 5日 (木) 11:57