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(投稿:by 僻地の産科医)
日経メディカル2008年11月号からo(^-^)o!!
なんか後ろのほうで宣伝に隠れちゃって、
全然目立たない所にあるので、気がつきませんでしたが、
それなりに面白いです(>▽<)!!!!
もしお持ちの方、ぜひぜひ読んでみて下さいませ。
ではどうぞ ..。*♡
医師のためのパフォーマンス学入門
患者を怖がらせないアイコンタクト
日本大学芸術学部教授博士(パフォーマンス学・心理学)
佐藤綾子
言葉遣いや態度には、隠れたメッセージがあります。知らず知らずのうちに、自己表現しているわけです。患者と良好な関係を築くために、医師にはどんなパフォーマンスが求められるのか。医師たちから寄せられた質問に、佐藤綾子氏が答えます。
(Nikkei Medical 2oo8.11 p204-205)
Q 「先生は目が怖い」と、患者さんにもナースにもよく言われます。友人や家族からはそう言われたことは一度もないので、不思議で仕方ありません。診察中は、とても目つきまで気にしていられないというのが正直なところですが、何か良い方法はありますか?(40代、眼科勤務医F)
A 話をするときに相手の顔を見つめることを、アイコンタクトと言います。アイコンタクトは医師にとって、実に大切で、かつ難しいテーマです。
医師は、患者に伝えなければならない情報が多ければ多いほど、真剣で、緊迫した気持ちになるものです。一方の患者は、病気を抱えて不安になっています。つまり、両者の立場感情は、大きく異なっているわけです。その両者が見つめ合うのですから、注意が必要なのは当然です。
F医師が普段通りにしていても、患者さんから「目が怖い」と言われるのには、次のような理由が考えられます。通常、医師は診察室で、次の患者を待つ間、カルテに目を通します。その直後に患者が入室すると、医師は着席した状態で、立っている患者の顔を、やや下から見上げる形になります。
その際、医師の視線が強すぎると、まるで「にらみ上げる」ような表情になってしまうのです。ちなみに「にらむ」という言葉には、ただ着眼するだけでなく、相手を威圧するという意味があります。
医師に下からにらみ上げられると、患者は「怖い先生だ」と感じます。その途端に心が萎縮して、医師に伝えたいことすら十分に言えなくなってしまうのです。
アイコンタクトに関しては、私自身も忘れられない経験があります。7年ほど前に、一身上の大きな出来事があり、極度に落ち込んだ状態で都内のメンタルクリニックを訪ねたときのこと。初診時に、医師から射すくめるような強い目でにらまれたのです。その後の医師の話が厳しい内容だったこともあり、私はすっかり落ち込んでしまいました。アイコンタクトが患者に与える影響は、実に大きいものなのです。
アイコンタクトの3要素
ここで、私が行ったアイコンタクトに関する実験結果をお伝えしましょう。私が長年継続している、世界でも貴重なデータです。
アイコンタクトには、
①長さ
②強さ
③方向性
―の3つの要素がありますが、以下は長さに関する実験です(詳細は、拙書『自分をどう表現するか―パフォーマンス学入門』講談社現代新書、p59を参照のこと)。
まず、学生2人の単純な会話の場面を設定レ向かい合って話をしてもらいました。組み合わせの性別によらず、相手を見つめている時聞か長かった男子学生上位5人と、女子学生上位5人を抽出した上で、EPPS心理テストという性格テストを行いました。
するとどうでしょう。見つめている時間が長かった男子は顕示欲求および変化欲求が強く、女子は顕示欲求および養護欲求が強いことが分かったのです。一方で、相手を威圧したいという支配欲求の強さは、アイコンタクトの長さとは相間関係がみられませんでした。
では、支配欲求(患者の側からすれば威圧感)は何と関係するのでしょうか。それはアイコンタクトの強さです。
顔の表情筋の一つである上眼瞼挙筋は、放っておけば下がってきます。しかし、相手を射すくめてやろうというときは、上眼瞼挙筋に力が入り、カッと強く目を見開くのです。
それに加えて、相手の瞳の中心を見つめ続けるという方向性の問題があります。長さ、強さ、方向性の3相子がそろうと、患者は本当におびえてしまいます。
多くの患者は、不安を抱えて診察を受けに来ています。患者へのアイコンタクトは、強くもなく、かといって弱すぎもせず、あまり長くもなく、かといって短すぎもせず、方向も瞳の中心よりは少しずらして見つめてあげた方が、患者は安心感や親近感を抱くのです。
三角形の“安全地帯″を見る
方向性に関して、アイカメラを装着して得た私の実験データがあります。二者が対面する場面において、必ずしも瞳の中心を見つめていなくても、両目と鼻筋の2分の1あたりの点の3ヵ所を結んだ、扁平逆三角形の中に視線があれば、見られた側は「私を見つめてくれている、関心を持っている」と感じることが分かりました。
医師はこれを利用すればいいのです。患者の瞳の中心をギュッと見るのではなく、この三角形の安全地帯を、上眼瞼挙筋の力を少し抜いて、あまり長すぎず、しかし短すぎると思われない程度に見つめましょう。
一般の会話においてのアイコンタクトの長さは、1分当たり32秒、全休の会話時間の53%を占めるのが理想です。つまり、医師はカルテ記入の時間を除いて、会話中の半分強の時間を、ソフトな、愛情のこもった目で患者を見つめていればよいということになります。
そうすれば、患者とのコミュニケーションが良くなり、会話もテンポ良く進むはずです。結果として診察時間も短縮され、医師のストレスも軽減されるでしょう。
さとうあやこ氏
1947年、長野県生まれ。米国ニューヨーク大学大学院でパフォーマンス学を学ぶ。現在、日大芸術学部教授。社会法人パフォーマンス教育協会理事長。「佐藤綾子のパフォーマンス学講座」主宰。http://www.spis.co.jp/
佐藤氏へのご質問は、日経メディカルオンラインの中のお問い合わせフォームからお送りください。
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