(関連目次)産科一般
(投稿:by 僻地の産科医)
MMJ2008年11月号からですo(^-^)o ..。*♡
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しっかりしたスタッフ教育によって、
分娩管理が改善するというデータです。
つまりしっかり勉強しろ。
そしてきちんとスタッフを教育しなさいってことよね(-_-;)。。。。
産科スタッフヘの多角的介入で分娩管理が改善
産科ケア改善のための行動介入
A Behavioral Intervention to Improve Obstetrical Care
(MMJ November 2008 vol.4 No.11 p940-941)
〈背景〉
エビデンスに基づく産科診療の実施は、依然として重要な課題である。このような診療の普及と実施に向けた有効な戦略が必要とされている。
〈方法〉
アルゼンチンとウルグアイの19病院を、分娩第3期における会陰切開の実施と管理に関するガイドラインを作成・実施するため多角的な行動介入(オピニオンリーダーの選考、双方向型研修会、手技の訓練、病院の産科スタッフに対する1対1の学術的訪問指導、注意喚起、フィードバックなど)を行う群と、非介入群のいすれかに割り付けた。主要転帰は、分娩第3期におけるオキシトシンの予防的使用率および会陰切開率とした。主な副次的転帰は、分娩後出血、および産科スタッフに分娩第3期の会陰切開と管理に関して対応を変える態勢ができていることとした。転帰の評価は、ベースライン、18ヵ月間の介入終了時、介入終了後12ヵ月の時点に行った。
〈結果〉
オキシトシンの予防的使用率は、介入を受けた病院ではベースライン時の2.1%から介入終了後には83.6%に上昇し、対照病院では2.6%から12.3%に上昇した(変化の差に関するP=0.01)。会陰切開の実施率は、介入を受けた病院で41.1%から29.9%に低下したのに対し、対照病院では変化がなく、介入前は43.5%、介入後は44.5%であった(変化の差に関するP<0.001)。また、介入は分娩後の500ml以上の出血率の低下(相対的低下45%、95%信頼区間[CI],9~71)、および1,000mL以上の出血率の低下(相対的低下70%、95%CI,16~78)に関連していた。対応を変えることに対する産科スタッフの受け入れ態勢もまた、介入を受けた病院では向上していた。会陰切開の実施およびオキシトシンの予防的使用に対する影響は、介入終了後12ヵ月の時点でも持続していた。
〈結論〉
多角的な行動介入により、分娩第3期におけるオキシトシンの予防的使用は増加し、会陰切開の実施は減少した。
ChcalTrials.gov番号:NCT00070720.
CurrentControlledTrials番号:ISROTN82417627.
2008 Massachusetts Medical Society.All rights reserved.
Translated with permission.
解説
基本的分娩手技にもエビデンスが必要
慶應義塾大学医学部産婦人科准教授
末岡 浩
産婦人科領域におけるEBMは必ずしも多くないと言われている。特に産科領域では、分娩にかかわる予知できない対応などのエビデンスをcontrol studyで解析評価することがなかなか困難である。そのために経験に基づく医療がいまだに多く行われている。分娩は本来自然の経過に基づいて進行するものであり、その進行の妨げとなるような要因に対する原因の究明や対処の方法が、必ずしも比較対照に基づく研究によって明確なエビデンスを求めるのが現実的に困難である場合が少なくないことも大きな要因となっている。
その中でも、分娩の基本的手技について検討がなされた研究は、近年あまり存在しなかった。具体的には、教科書的にも、分娩に立ち会ううえでの会陰切開や陣痛促進効果のあるオキシトシンの使用方法、その厳密な適応基準も明確に提示されてはこなかった。これは経験的に伝承されながら行われてきた医療行為であり、この中に必ずしも必要とされない、合理的とはいえない手技も合まれていることは否めない。本論文は従来、当たり前に行われてきた一般診療行為に焦点を絞り、その妥当性を改めて検証することで「エビデンスに基づく真の適応」を導き出すことの重要性を示唆した論文として注目すべきである。
陣痛を促進し娩出力を高めるためのオキシトシン投与や、多くの分娩に対して娩出を容易にし、会陰保護を目的として行われている会陰切開が必要な行為であるのか否かなど、必ずしも議論されてこなかった点について、エビデンスを求めた研究を対象としている。南米に存在する19分娩施設を対象として、指導や注意の喚起などの医療介入を構造的に行った群と行わなかった群とを比較検討し、実際に指導された医療行為によってもたらされた出血量などへの影響を解析している。
介入試験がエビデンスに基づくコンセンサスの得られた内容によって行われたか否かについては議論すべき点として今後の評価が待たれるが、この一定の基準に基づく介入によって、本研究は産科のもっとも基本的な手法である分娩管理について、分娩成績へ明らかな影響が及ぼされた効果について報告がなされている。このことによって、不要な会陰切開が減少し、陣痛促進剤の投与が減少し、その効果として多量の産後出血の発生の減少効果も得られたと報告している。
これらの対象手技は、分娩時の安全度を高めるために実施され、きわめて一般的に行われている処置である。しかし、適応によっては、その具体的な使用法の基準と是非を含めての効果に対する評価がなされない、不必要な手技と考えられる部分があり、しかもそれが必ずしも効果につながらず、出血についてはかえって減少するという皮肉な効果を示唆する結果を得たことになる。
本論文は従来、経験的に行われてきた基本的医療技術に対するエビデンスを検証し、今後の医療のなかで必要とする医療基準を決定することの重要性を改めて示している。
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