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(投稿:by 僻地の産科医)
MMJ2009年1月号よりo(^-^)o ..。*♡
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この記事、説明されないとわかりにくいと思うのですが、
従来から
「不妊治療でできた子が、ちっちゃくって早産で、
周産期死亡リスクが高い」
ことが指摘されていたのです。
それが
「不妊治療を受けたせい」なのか、
「そもそも不妊治療を受けなきゃいけない人のリスクが高い」
のかわからなかった。
それを示した文献といえます。
要するに、
「不妊治療をそもそも受けなきゃいけない人自身に
リスクが高く、不妊治療のせいじゃない」
っていう論文なのです。
生殖補助医療技術は周産期リスクに関連せず
生殖医療技術および母体側因子が補助受精後の周産期転帰に及ぼす影響:一般住民対象のコホート研究
(MMJ January 2008 vol.5 N0.1 38-39)
〈背景〉
生殖補助医療(ART)による補助受精(assisted fertilisation ;体外受精や顕微授精)後の単胎児出産例では(周産期に)有害転帰が多いとする研究が報告されている。しかし、これらの結果は、妊孕性と妊娠転帰の双方に影響する交絡因子の影響を受けている可能性もある。そこで本研究では、自然妊娠あるいは補助受精後に単胎児を妊娠した女性における妊娠転帰(アウトカム)を比較検討した。
〈方法〉
ノルウェー医療出生登録(Medical Birth Registry of Norway)を用いた一般住民対象のコホート研究において、自然妊娠後の出生児1,200,922例および補助受精後の出生児8,229例の母親を検索し出生体重、妊娠期間の差、SGA(small for gestational age)児・早期産・周産期死亡のオッズ比(OR)を比較した。さらに、自然妊娠で1児以上、補助受精でも妊娠した女性(>20歳)2,546人から生まれた単胎児(妊娠期間≧22週または出生体重≧500g)を特定し、これら同胞問で同様な比較を実施した。
〈結果〉
対象集団全体では、補助受精による妊娠では自然妊娠に比べ、出生児の平均出生体重が小さく(差25g;95%信頼区間[CI],14~35g)、妊娠期間が短く(差2.0日;95%CI,1.6~2.3日)、SGA児の出産リスクが高く(OR,1.26; 95%CI,1.10~1.44)、周産期死亡のリスクも高かった(OR,1.31 ;95%CI,1.05~1.65)(表)。同胞間で比較した場合、自然妊娠例と補助受精妊娠例では、出生体重の差が99(95%CI,-18~36g)、妊娠期間の差が0.6日(95%CI,-0.5~1.7日)しかなかった。この同胞間の比較において、自然妊娠に対して補助受精による妊娠ではSGA児のオッズ比は0.99(95%CI,0.62~1.57)、周産期死亡のオッズ比は0.36(95%CI,0.20~0.67)であった。
〈結論〉
自然妊娠例と補助受精後の妊娠例からの出生児には、出生体重、妊娠期間、GA児出産のリスク、早期産のリスクに関して差はみられなかった。したがって、一般集団での自然妊娠と比較して、本研究で指摘した補助受精妊娠に関連した周産期の有害転帰は、生殖補助医療に関連した要因というよりも、母体の不妊原因となる要因によるものと考えられる。
解説
母体要因が周産期の結果に影響
国立成育医療センター・周産期診療部 不妊診療科医長
斉藤英和
近年、ライフスタイルの変化により、妊孕性の低下してくる高齢になってから早見を希望する夫婦が増加している。体外受精・顕微授精などの生殖補助技術は急速に進歩し、このライフスタイルの変化により、生殖補助医療による治療頻度は高まっている。わが国においても2006年に生殖補助医療で妊娠し、出生した児の数は約19,000人であり、これは年間の出生数の約1.7%にあたる。本論文の著者の国(ノルウェー)では5%を超える児が生殖補助医療で出生していると報告されている。
生殖補助医療に関連する問題の1つとして、この方法で妊娠した周産期における予後が悪いことが指摘されてきた。その主たる原因は多胎妊娠によるもので、単胎妊娠に比較し多胎妊娠では、この不妊治療法を用いない自然の多胎妊娠でもリスクが高いことが知られている。多胎妊娠率は2006年に生殖補助医療で妊娠した患者の約13%と、自然妊娠の1%弱に比べるとかなり高頻度となっている。このため、わが国を含め全世界で、単一胚移植の実施が急務となっており、わが国でも2008年の日本産科婦人科学会の総会で、原則単一胚移植とすることを議決している。これにより、生殖補助医療が高頻度に引き起こしていた多胎妊娠による、周産期のリスクは回避されると思われる。
しかし最近、単胎妊娠においても、生殖補助医療で妊娠した症例は、自然に妊娠した症例よりも周産期のリスクが高いとの報告が相次いでなされた。早産が多く、低出生体重犯を出産しやすく、出生体重も妊娠週故に比較し低い児の割合が高く、周産期死亡率が高いことが、生殖補助医療で妊娠した症例のリスクとして指摘された。しかしこれらの報告では、このようなリスクの差が、生殖補助医療の手技そのものが原因なのか、この治療を受けた患者自体が自然に妊娠できる人と異なり、もともと周産期のリスクを引き起こす素因があったのかが、明確にされていなかった。
そこで本研究では、2つの方法を採用して検討を行っている。1つは、従来のように自然妊娠した女性と生殖補助医療で妊娠した女性の比較である。もう1つの研究方法は、自然妊娠と生殖補助医療での妊娠の2種類を経験した女性において妊娠方法に関連した周産期リスクの比較である。2番目の方法では、2つの方法で妊娠した同一女性内で比較することにより、従来の研究で混同され報告されていた、周産期リスクに関する母体素因を同一にすることができ、生殖補助医療技術本来の周産期に関するリスクの評価を可能にしている。
本研究では、自然妊娠した女性と生殖補助医療で妊娠した女性の比較に関して、母体年齢、分娩回数、児の性、前回の妊娠から今回の妊娠までの期間、分娩の年号による補正をして検討している。その結果、従来の報告と同様に、自然妊娠した女性と比較し、生殖補助医療で妊娠した女性は、妊娠期間が短く、低出生体重児を出産しやすく、出生体重も妊娠週数に比較し低い児の割合が高く、そして周産期死亡率が高いことが、生殖補助医療で妊娠した女性のリスクとして指摘された。
一方、自然妊娠と生殖補助医療での妊娠の2種類を経験した女性における周産期リスクを比較すると、2種類での妊娠期間、出生体重は同等であり、出生体重が妊娠週数に比較し低い児の割合も同等であった。また、周産期死亡率は生殖補助医療での妊娠で低値を示した。
よって、生殖補助医療で妊娠した女性における周産期リスクの上昇は、生殖補助医療技術そのものではなく、この治療を受ける女性の素因によるものである可能性が高い。この研究より、われわれは、不妊女性のもつ周産期リスク素因が何であるのか、さらに追究し解明していかなければならないことを強く意識しなければならない。
この研究方法を、「タバコは肺がんの原因の一つとされている。」という命題の再考に使えないだろうか。喫煙者になるような人は、元々出生、階層、職業、飲食の嗜好性、遺伝、生活環境など非喫煙者に比べ肺がんになるリスクが高いかも知れない。単純に喫煙者の方が肺がんの率が高いからタバコは良くないというのは間違っているかも知れない。
たとえ話をすると、キャバ嬢の中に女子学生が多くなったと言うのは、女子学生が乱れたのではなく、女子学生になる者が多くなったからである。
投稿情報: jun | 2009年1 月26日 (月) 02:23
。。。(-_-;)。。。。
うーん、癌の場合は、二回目になる場合って、基本的に「再発」ですもんね~。
研究自体がなりたたないのでは~。
あ、まぢレスは期待してない?
投稿情報: 僻地の産科医 | 2009年1 月26日 (月) 14:30
やっぱりそうですよね…
前から思っていたんです。
不妊治療して、たとえすぐに妊娠したお方であっても、なんだか知らないけどトラブルが多いな、って。
論文になるくらい、差が歴然としていることだったんですね。
投稿情報: suzan | 2009年1 月26日 (月) 15:10
まじレスでいいんですが。研究方法としては、喫煙率の高い階層、地域、家庭環境、職業の非喫煙者と喫煙率の低い階層、地域などの非喫煙者の肺がん発生率を比較する。などです。
投稿情報: jun | 2009年1 月27日 (火) 01:50