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(投稿:by 僻地の産科医)
妊娠中のカフェイン摂取が
胎児の成長に悪影響の可能性
Medical Tribune 2009年1月22日号(VOL.42 NO.4) p.01
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=0&order=1&page=0&id=M42040011&year=2009
〔ロンドン〕レスター大学(レスター)のJustin Konje博士らがリーズ大学(リーズ)の研究者らと共同で行った研究によると,妊娠中のカフェイン摂取は妊娠期間にかかわらず,胎児成長抑制(低出生体重)リスクと相関している可能性がある。これについては,いくつかの先行研究でも示されていたが,今回の研究は,コーヒーだけでなく茶類,コーラ,チョコレート,ココアと一部の処方薬など,どのようなタイプのカフェインでも用量依存的に,胎児の発育遅延に関連していることをあらためて示したものである。詳細はBMJ(2008; 337: a2332)に発表された。
FGRリスクと用量依存的関係
Konje博士らは,母親のカフェイン摂取と個々のカフェイン代謝および児の出生体重との関連を調べた。
今回の研究では2003年9月〜06年6月に英国の2つの大規模な教育病院で,平均年齢30歳,妊娠週数8〜12週の低リスク妊婦2,635例を登録した。妊娠の4週前から妊娠の全期間を通して,カフェイン評価ツール(CAT)を用いてあらゆる食事源からのカフェイン摂取を記録して,さらに唾液検査によって個々のカフェイン代謝を調べている。
その結果,妊娠中の平均カフェイン摂取量は159mg/日で,これは英国食品規準局(FSA)による推奨上限値300mg/日を大きく下回っていた。興味深いことに,カフェインの62%は茶類から摂取されていた。そのほかは,コーヒー(14%),コーラ(12%),チョコレート(8%),ソフトドリンク(2%)であった。
ほとんどは正期産で平均出生体重は英国の平均に近い3,450gであった。4%は早産,0.3%は死産,0.7%は晩期流産であった。全体として低リスク妊娠であったが,用量依存的関係が認められた。すなわち,カフェイン摂取が増えるほど胎児発育遅延(FGR)リスクも高まった。
低出生体重児を出産する推定リスクは,カフェイン摂取量が100 mg/日(コーヒー1杯/日未満に相当)の妊婦に比べ,100〜199mg/日では20%,200〜299mg/日では50%,300mg/日以上では40%上昇していた。
小さいが無視できない影響
妊娠中にFGRリスクの上昇が認められなくなるカフェイン摂取閾値レベルは存在しなかった。コーヒー1杯に相当する100mg/日以上のカフェイン消費に伴う出生体重低下は第一トリメスターでは34〜59g,第二トリメスターでは24〜74g,第三トリメスターでは66〜89gであった。この影響は消費量が200mg/日以上の場合,全妊娠期間を通して有意であった。またKonje博士らは,カフェイン代謝が速い妊婦ほどカフェインとFGRとの相関性が強いことも指摘している。
同博士らの説明によると,3,000gを超える平均出生体重に比べればこの程度の出生体重の低下は小さいと捉えられるかもしれないが,リスクにさらされる小さな新生児にとって60〜70gの低下は重大でありうるという。また,同博士らは「妊婦は妊娠前から妊娠中を通してカフェイン消費を減らすよう努力すべきである」と警告している。
FSAはこのエビデンスに基づき,1日当たりのカフェイン消費の推奨上限値を300mgから200mgに引き下げた。
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公衆衛生学部のJorn Olsen教授とBodil Hammer Bech助教授は同誌の付随論評(2008; 337: a2316)で,「これらの知見はカフェインが潜在的に胎児にとって有害な物質であるとの懸念を強めるものである」と述べている。
しかしその一方で,Olsen教授らはこのアドバイスはある程度のカフェインを妊娠中に摂取してしまった妊婦をいたずらに恐れさせるかもしれないとも述べている。
同教授らは「妊婦はカフェインの摂取を減らすべきではあるが,アルコール飲料や砂糖の多いソフトドリンクなど,不健康な飲みもので代替すべきではない」と付け加えている。
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