(関連目次)→ 助産師分娩について考える 今月の産婦人科医会報
(投稿:by 僻地の産科医)
今月の医会報、増刊分からですo(^-^)o ..。*♡
助産所からの緊急搬送例についての報告です。
そういえば天漢日乗先生のところでの
重要なエントリーを紹介し忘れていました!
【参考ブログ】
産科崩壊 兵庫県内の助産院でここ1-2年以内になんと先進国では考えにくい「新生児破傷風」が発生していた 原因は不潔な器具で臍の緒を切ったため
天漢日乗 2009-01-14
http://iori3.cocolog-nifty.com/tenkannichijo/2009/01/1-2-30ce.html
嘱託医における助産所からの
緊急搬送事例等に関する調査報告
五味淵秀人
(日本産婦人科医会報 平成21年1月1日号 医療と医業特集号 p20-21)
はじめに
医療対策部(1)コ・メディカル部会では、平成18年10月各地域の中心的病院に調査を依頼した「助産所からの母体搬送・新生児搬送に関する調査報告」を提出した。
その後、嘱託医は義務化され、且つ産婦人科医であることとなった。今回、嘱託医に助産所からの緊急搬送事例等に関する調査を行った。
調査時期:平成20年1~2月
対象:助産所と嘱託医契約を交わしている医師および嘱託医療機関契約を交わしている施設138施設。回答84施設(60.9%)。
1.嘱託医について
母体搬送の3/4は嘱託医で完結、分娩後搬送では1/2強が嘱託医で完結、新生児搬送では1/2強が嘱託医で完結していた。これは、母体に異常が起こった場合に4例に1例、産褥、新生児の異常では2例に1例か高次病院への再搬送されたことになる。その理由のひとつとして、分娩を取り扱っている嘱託医は1/2強に過ぎず、分娩を取り扱っていても、緊急帝王切開に対応できる嘱託医は7%減少し1/2であったことが挙げられた。改正前の日本助産師会による調査では嘱託医が産科医以外であることは18.9%、産科医でも分娩を取り扱っていない場合は35.3%としているが、法改正後においては産科医以外の嘱託医が分娩を取り扱わない産婦人科に置き換わっただけの効果であった。
助産所との契約方法では、医会の提言もあり書面による正式契約が3/4と法改正後に改善が見られていたが、契約料の規定は僅か8%と相変わらず医師側の好意の上に成り立っていると考えられた。また、嘱託医への平均受診回数の最多値は2回で3回以下が2/3(ただし、0回という回答もあり)、定期的な会合は1/4、「助産所業務ガイドライン」を知っている嘱託医は1/3強という結果であった。前述の嘱託医での治療完結率をみても、再搬送先を確保することが容易ではない事態は少なからずあり、患者の危険度が増すばかりでなく、嘱託医に降り掛かる責任も増すことになる。
一方で、契約においては1/4で「母体、新生児の高次機関への直接搬送もあり」としているが、母体搬送の7%、産褥の17%、新生児の12%は助産所の判断で高次医療機関に搬送されていた。緊急例こそ医師による初期治療が必要であり、医師が関与しない搬送では重症例での救命率の低下となる可能性が考えられた。逆に周産期三次救急病院への軽症例の搬送も考えられた。
2.助産所の業務内容について
異常産の取り扱い、合併症妊婦の取り扱いは5%あった。この中には双胎妊娠、骨盤位、前回帝王切開や血液型不適合妊娠など医学的管理が必要な症例があった。GBS感染症(陽性)妊婦の取り扱いも問題がある例と考えられた。しかし異常産の取り扱いについても、嘱託医に報告されていない症例が相当数存在することであろう。
およそ1/2が医療器機を使用していたが、ほとんどが超音波とビリルビン測定器であった。診断や治療と直結する場合が少なからずあり、使用方法には注視しなければならない。 しかし、1例とはいえ「流産のため麻酔器使用にて流産処置」との回答あり、事実であれば明らかに危険な違法行為である。縫合は1/3で行われていた。会陰裂傷縫合がそのほとんどと推察するが、分娩時に会陰が損傷することは稀ではなく、医師の観点からは少なくとも過半数は縫合の必要性があると判断されるだろう。さらに、医師にとっても縫合が平易でない例も少なからずある。われわれは医師として「縫合」は保助看法で定める臨時応急の手当」を遥かに逸脱していると言わざるをえない。外科的処置は十分な修練を積んだ医師にのみ認められた侵襲的行為と万人が考えるところであり、合法的であるか懸念するだけでなく、患者にとって利するところであるか甚だ疑問である。
薬剤の使用は1/3、助産所のための薬剤処方は1/2強であり、10%は助産院が嘱託医に無許可で購入し使用していたことが推測された。医薬品の購入に関して厚労省医薬食品局は医師の許可のもとであれば認める通知を出した。だが、医師法、保助看法の観点からすると助産師が独自の判断で投与することは認められていないと解釈する。薬剤の品目では補液もあるが、抗生剤、麦角剤さらにオキシトシン、子宮収縮抑制剤、静脈麻酔薬まであった。医師が助産所に往診し、その節に使用するための準備品とも考えられるが、「以前から薬剤を使用していた」という回答は1/2あり、使用に際して「事後承諾」や「独自の判断」が1/4を占めていたことは必ずしもこれだけではない可能性がある。嘱託医としてこれを黙認することは遺憾に思う。医師不足から、従来医師がすべき仕事のうち「簡単な医療行為」はコ・メディカルも施行可能にしてはどうかという意見がある。しかし、各々の職種には各々の役割があり教育目標も内容も異なっている。ただ単に、学生の教育課程にこれらを「部分的に」含めることで良しとすることには賛成できない。
以上より、下記の5点が問題と考えられた。
(1)今回の改正で嘱託医は産婦人員医と限定されたが、分娩を取り扱っている産科医あるいは産婦人科医と定める必要はないか。
(2)契約条項と嘱託医としての職務について再考する必要はないか。
(3)「門前の小僧、習わぬ経を読む」的な医療行為を是認して良いのか。
(4)分娩時の異常は医学的に予測不可能な場合も少なくないため、緊急対応のできない助産院での分娩に、そもそも安全を担保することは可能か。
(5)分娩の快適性は助産所以外には求められないのか。
解決すべき課題は多いが、妊産婦の安全のため、未来を担う新生児のために、専門職であるがゆえに安直な解決法は慎むべきであると考える。
一部の助産院では、無床診療所で出張自宅分娩ならば、嘱託医すら不要という論調がありましたが、法律上はどうなんでしょうか?
贅沢なお産by桜沢エリカ
は娯楽として読むにはいいでしょうが。
投稿情報: 麻酔科医 | 2009年1 月28日 (水) 13:40