(関連目次)小児科の現状 目次
(投稿:by 僻地の産科医)
MMJ2008年12月号からですo(^-^)o ..。*♡
ICU新生児の多くが痛みや
ストレスを伴う処置を受けている
新生児集中治療室(NICU)における痛みを伴う処置の実態
Epidemiology and treatment of painful procedures in neonates in intensive care units
(MMJ December 2008 vol.4 N0.12 p1006-1007)
〈背景〉
新生児における疼痛管理の向上に有効な対策を導入するためには、処置に伴う疼痛の疫学的状況(実態)および実施されている管理法について正しい理解が必要である。
〈目的〉
新生児のベッドサイドでの直接観察に基づき、地理的に定めた対象地域で収集した新生児の疼痛に関する疫学的データについて報告する。
〈研究デザイン・設定・患者〉
Epidemilogy of procedural Pain in Neonatals(EPIP-PAIN) study において、2005年9月~06年1月に、入院後14日間に実施された痛みあるいはストレスを伴う処置およびそれらに対する鎮痛療法に関するデータを、フランスのパリ地域にある3次医療施設に入院した新生児430人について6週間以内に前向きに入手した。
〈主要評価項目〉
医療従事者によって実施された痛みを伴うあるいはストレスになると考えられる処置の件数、それらに対して実施された鎮痛療法。
〈結果〉
。
対象児の平均(SD)在胎期間は33.0(4.6)週、集中治療室(ICU)在室日数は8.4(4.6)日であった。新生児が初めて試行された処置は60,969回あり、そのうち42,413回(69.6%)は痛みを伴い、18,556回(30.4%)はストレスの多い処置であった。処腹中に追加的に試行された11,546回の処置のうち、10,366回(89.8%)は痛みを伴い、1,180回(10.2%)はストレスとなるものであった。各新生児は、研究期間中平均115回(範囲,4~613回)、入院1日あたり平均16回(範囲,0~62回)の処置を経験した。これらの処置のうち、研究期間中に新生児1人あたりが経験した痛みを伴う処置は中央値で75回(範囲,3~364回)、入院1日あたり10回(範囲,0~51回)であった。痛みを伴う処置42,413回のうち、2.1%は薬物療法のみの治療に関連した処置、18.2%は非薬物的なインターベンションのみに関連した処置、20.8%は薬物療法または非薬物的療法あるいは両治療に関連した処置であった。これらの処置のうち、79.2%は特別な鎮痛処置なく実施されており、34.2%は他の理由で処置と同時に鎮痛薬か麻酔薬の注入を受けていた。未熟児、特定のカテゴリーに分類される処置、親の付き添い、手術、日中の時間帯、入院初日以降は、処置前の特定の鎮痛実施率の上昇と関連していたが、機械的人工換気、非侵襲的換気、処置実施時の不特定鎮痛薬の先行投与は、特定の処置前鎮痛薬使用の割合を低下させる要因であった。
〈結論〉
パリ地域における新生児集中治療の現場では、痛みを伴う処置やストレスとなる処置が多数行われており、その大部分は処置前に鎮痛薬が使われていない。
2008,American Medical Association.AII rights reserved.
解説
新生児低侵襲ケアの世界的な推進と浸透を目指して
埼玉医科大学総合医療センター総合同産期母子医療センター教授
側島久典
わが国の新生児医療の進歩はめざましく、この半世紀に世界で最も低い新生児死亡率を示すまでになった。しかし新生児が言葉を発することができず、表現を我々に伝える手段がきわめて乏しいために、医療者は彼らの「痛み」や「ストレス」が数多く存在することに気付かずに過ごしてきた経緯がある。新生児の五感(視、聴、嗅、味、触感)の発達は、育児に非常に大切な要素であり、出生前からこの五感を最大限に活用できるように準備され、出生後は母との接触から胎外生活の円滑なスタートが切られるようにプログラムされていると言われている。治療を必要とする病的新生児は痛みをどのように感じているのか、多方面から研究がなされ、米国小児科学会の鎮痛法の推奨をはじめ、低侵襲ケアは欧米で積極的に医療、看護に取り入れられている。
本論文はパリを中心に設置されているNICUをはじめとする3次医療施設13施設で実施された多施設、前方視的研究である。 NICUでは実際にどのくらい痛み、ストレスが児に加わっており、どのように対応されているのかをベッドサイドでの終夜を通した記録をもとに詳細に分析がなされている。その結果、痛みを軽減する麻薬をはじめとする薬剤の適切な使用がきわめて少数にしか行われていないこと、採血前の鎮痛対策・処置は20%にしかなされていないこと、呼吸管理をしている重症新生児にとって気管吸引はとてもストレスとなり、もっと個人の状態に即したケアに変更することにより吸引回数を減らしストレスを軽減できる可能性がある、と述べている。しかしながら、わが国の新生児施設での考え方はまだ成熟しておらず、ルーチンの採血1つをとってみても遅れた状況にあり、115施設でのアンケート調査によると、採血前からおしゃぶりをふくませておく施設はわずか6施設で、泣くと含ませる(43施設)、それ以外にはホールディング、包む、ネスティングなどの方法をとっているのは24施設と報告されている1。
新生児がどのように痛みやストレスを感じ、どのようなサインを発しているのか、それらを病的新生児のケアにいかに生かすのかなど、近年、客観的な評価方法を用いた研究が行われるようになってきた。
例えば、かかとからの採血時にREM睡眠下では採血部位に対応する対側脳の血液量の変化が在胎の進行とともに増大し、NON-REM睡眠下ではこの変化量がはっきりしないという研究結果がいくつか得られている2。改めて入院児への痛み、ストレスを与える回数の多さを認識するとともに、新生児が成人になった時の影響が最小限になるように医師や看護師が考えながら、ストレス源を低減する侵襲の少ないケアを目指す必要がある。
1.Yokoo K. Neonatal Care 2007;20(12):40-43.
2.Slater R, et.al.CorticaI Pain Responses in Human lnfants. J Neurosci 2006 ; 26 : 3662-3666.
週刊新潮 2009年1月15日号(2009/01/07発売)http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/newest/
【ワイド】日本の「恐ろしい数字」
(略)
(9)日本の「医師」はフランスやドイツの「6割」しかいない
「世界と日本経済30のデタラメ」幻冬舎
http://blogs.yahoo.co.jp/koganemusida/47355991.html
目次
(略)
デタラメ14:医療も民営化すれば診療のレベルが上がる
(略)
デタラメ16:日本は医療費が多すぎるから保険制度が破綻する
(略)
投稿情報: 情報提供 | 2009年1 月 9日 (金) 07:13