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(投稿:by 僻地の産科医)
昨日お伝えした、広島県保険医協会の
「無過失補償制度の制度設計の見直しを求める声明」が
アップされていましたので、
さっそくお伝えいたします(>▽<)!!
15日に厚労省へ送られたそうです!
産科医療補償制度について
広島県保険医協会 2008年12月15日
http://www.hiroshima-hokeni.jp:80/danwa.htm
2009年1月1日より産科医療補償制度がスタートする。この制度は、分娩時の医療事故では、過失の有無の判断が困難な場合が多く、裁判で争われる傾向があるため、患者の救済、紛争の早期解決、事故原因の分析を通して産科医療の向上を図ることを目的に実施される。
具体的には、加入した分娩機関が取扱い分娩数に応じた掛け金を運営組織である日本医療機能評価機構に支払い、運営組織は保険会社に保険料を支払う。補償対象となる脳性麻痺が生じた場合には、保険会社が補償金を患者に支払う仕組みである。
しかし、今回の産科医療補償制度にはいくつかの問題がある。まず、なぜ医療機関が保険金の元となる掛け金を支払うのか。医療機関の掛け金の原資は分娩費の引き上げであり、その患者の分娩費は出産育児一時金の引き上げによって補填される。最終的には国を含む保険者の支払いとなる。そうした複雑な仕組みが妥当なのであろうか。
また、民間保険を導入する点も問題である。制度検討のたたき台となった与党「医療紛争処理のあり方検討会」が作成した「産科医療の無過失補償制度の枠組みについて」には、既に「運営組織を通じて保険会社に保険料を支払う」ことが明記されている。制度内容を検討した産科医療補償制度運営組織準備委員会の報告書にも、「『産科医療の無過失補償制度の枠組みについて』に沿って検討を行った」「産科医療の崩壊を一刻も早く阻止する観点から、民間保険を活用して早急な立ち上げを図る」とされており、民間保険導入が当初からの前提であったことが伺える。実際には与党の指針から2年以上経ての実施であり、公的制度とした場合より「早急」であったかどうかは疑問である。掛け金の総額は300億円。補償金に事務コスト費を足しても、掛け金の合計には満たないとの試算もあり、差額は民間保険会社の利益になる仕組みとなっている。
以上の点から、産科医療補償制度は民間保険会社を関与させるべきではなく、国が責任を持つ公的制度とすべきである。医療事故における無過失補償制度は、今後も産科医療に限らずその対象を広げていくことが想定される。国による公的無過失補償制度こそ必要とされている。
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