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(投稿:by 僻地の産科医)
TOPICS FROM EUROPE
途上国向けHPVスクリーニング
中国で有効性を証明
Medical Tribune 2008年12月11日(VOL.41 NO.50) p.06
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41500061&year=2008
〔ロンドン〕中国医科学アカデミー・中国協和医科大学がん研究所(北京)のYou-lin Qiao教授らが,発展途上国向けに開発された新しいヒトパピローマウイルス(HPV)迅速スクリーニング検査,careHPVを中国東部の山西省で施行したところ,子宮頸がんの前がん病変の正診率は90%だったとLancet Oncology(2008; 9: 929-936)に発表した。careHPVは農村地域や医療資源の乏しい地域における効果的な子宮頸がんスクリーニング法として有望であると結論した。
支援スタッフでも検査可能
最低限の訓練しか受けていないスタッフによる農村での使用に耐えられるよう設計されたcareHPVは,発がん性のある14種類の高リスクHPVを約2.5時間で検出できる。北米と欧州では,ルーチンに使用されている細胞学的スクリーニングによって死亡率は50〜80%低下した。しかし,発展途上国では,塗抹標本の適切な採取と判定が困難であるため,専門的知識を導入することは不可能であった。健康のための適切なテクノロジー・プログラム(Program for Appropriate Technology in Health;PATH,米ワシントン州シアトル)との協同で実施されたこの新しいHPV-DNAスクリーニング法は,迅速,簡便,廉価で医療資源の少ない環境での使用に適している。
careHPVは,HPV-DNAのルーチン検査におけるゴールドスタンダードとして広く認められているHybrid Capture(HC)2を改良したシグナル増幅型アッセイの1種である。狭いクリーンベンチトップの作業スペース(約25×30cm)しか必要とせず,電気や水道水も不要で,技術者でない支援スタッフによっても素早く実施することができる。分析に要する時間も短いことから,検査と臨床的フォローアップを同じ日に行うことができる。
前がん細胞検出率は90%
今回,中国・山西省で行われたこのプロトタイプのアウトカム試験は,30〜54歳の女性2,388例を対象に実施された。その結果,careHPVの前がん細胞検出率は感度90.0%,特異度84.2%であった。
共同研究者でマクマスター大学(カナダ・ハミルトン)家庭医学のJohn Sellors教授は「今回の結果から,careHPVは発展途上国の女性に対する迅速で,きわめて正確な子宮頸がんスクリーニングとして有望であることがわかった。30歳以上の女性をこのような検査で生涯に1回スクリーニングし,同時に適切な治療を行うことができれば,公衆衛生プログラムとして廉価であるうえ,子宮頸がんによる死亡は3分の1に減少するであろう」と述べている。
バーツ・ロンドン医科歯科大学(ロンドン)分子疫学のAttila Lorincz教授は「今回の中国における新しいHPV検査の臨床成績は有望なものと言える。この検査法は,長期にわたる研究に基づいて開発されたものである。この検査が広く活用され,何百万人もの女性の命が救われることを期待している。新しい検査法が地球規模での子宮頸がんスクリーニングに適しているかどうかを確認するには,多くの国でこの検査を追試する必要がある」と述べている。
30年間はスクリーニング必要
子宮頸がんは世界中の女性において2番目に多いがんで,毎年約50万人が新規に発症し,30万人が死亡している。そのうち85%以上は発展途上国で発生している。このがんのほとんどは,発がん性を有するタイプのHPVが原因であるが,感染サイクルを阻止することが可能なため,予防可能である。
HPVに対するワクチン接種は,将来世代に対して有効であることが示されており,現在,英国で実施されているが,そのほとんどは若い女子学生である。しかし,現行のワクチンは子宮頸がんの原因の75%を占めるHPV16型とHPV18型のみに有効で,既にウイルスに曝露されている女性(20歳以上の女性のほとんど)に対しては無効である。したがって,スクリーニングは依然,現在20歳以上の女性には最も必要であり,少なくとも今後30年間,スクリーニングを継続する必要がある。
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