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(投稿:by 僻地の産科医)
臨床婦人科産科2008年11月号からですo(^-^)o ..。*♡
特集は 子宮内膜症治療の最前線−症状に応じた治療戦略
かなり面白かったです!
その中から、結構以前から知られてはいたものの、
なかなか証明はされていなかった記事についてご紹介です!
矢沢先生から(>▽<)!!!!
経口避妊薬(oral contraceptive : OC)と
卵巣癌の予防
ハワイ大学 産婦人科 矢沢珪次郎
(臨床婦人科産科 2008年11月号 Vol.62 No.11 p1489-1491)
最近のLancet誌からOCと卵巣癌との関連を調べた大規模調査の論文をご紹介したい.
要約:経口避妊薬(OC)はすでに全世界で20万件の卵巣癌を予防し,卵巣癌による死亡を10万件阻止した.現在のOC使用者数から推定すると,今後数十年間にわたり,年間3万作の卵巣癌を予防し続けることになるであろう.
1960年代以降,0Cは最も重要な避妊法となって定着している.英国では,16~49歳の年齢層ではその25%がOCを使用し,16~24歳の年齢層では62%が使用している.米国でも、15~44歳の年齢層女性の%,20~24歳の年齢層では32%がOCを使用している.今日の低用量のOCは安全なものといってよい.
疫学的な考察
卵巣癌とOC使用との関連をみるには,0C使用者群とOC非使用背部との間で,卵巣癌の発生数率とそれによる死亡とを比較すればよい.しかし 実際にはその作業は容易ではなく,また,結論が有意差を持つためには調査対象数が大きくなければならない.
Confounding factors
この比較作業で考慮すべきいくつかの条件を挙げてみると,0C開始時の年齢,使用期間,最後のOCを使用してから訓告時点までの経過期間,0Cのタイプ(sequential ,combination ,progestin only )と用量などである.また,さらに統計を複雑にするもの(p()tential confouders)として,患者の社会学的背景(学歴や貧困など),悪性腫瘍の家族暦,生殖既往歴,ホルモン補充療法の使用の有無などを考慮しなくてはならない.
Recall bias
50~60歳の女性に過去のOC使用に関しての具体的な詳細を思い出してもらうことはときに困難である.しかし,実際に卵巣癌に罹患した女性では,0C使用に関する想起はより詳細に行われることが多い.卵巣癌に罹患した女性と罹患していない女性では想起内容の詳細が異なり,これが統計的処理を困難にする.このようなバイアスはrecall bias (想起バイアス)と呼ばれている.何歳からOCを使用しているか、どのくらいの期間使用したか,使用を中止してどのくらいの期問が経過したか,どの年代にOCを使用したか(OCのエストロゲン含有量は年代を追って減少している),などはすべてrecall biasの対象となる.
2008年1月のLancet誌にはOCと卵巣癌との関連を疫学的に調査した論文が掲載されている.これは21か国,45例の疫学的研究を集大成したもので,卵巣癌患者23,257人(case)と卵巣癌のない女性87,303人(control)とを対比して,0C使用と卵巣癌との関連をみようとした大規模研究である.
卵巣癌患者(case)の31%と,コントロールの37%がOC使用者であった.0C試用期間はcase 4.4年,cont.rol 5.0年であった.卵巣癌発見時の年齢は平均56歳であった.
結 論
・OC試用期間が長い女性ほど卵巣癌リスク減少の程度は大きかった(図1,3).
・OC服用中止後,30年以上にわたり,卵巣癌リスクの減少がみられた(図2).
・卵巣癌リスクの減少は,OC使用中止後30年以上にわたり持続したが,その期間の経過とともに保護作用は減少する傾向を示した.
・5年間のOC使用による卵巣癌リスクの減少は,中止後10年以内では29%減少,中止後10~19年では19%減少,同20~29年以内では15%であった.
・1960年代,1970年代,1980年代のOC使用では,この間OC製品エストロゲン含有量加減少し続けたが,リスクの減少は同程度にとどまった.
・卵巣癌を組織別にみると,全体の12%を占める粘液性癌(mucinous tumors)では減少が一番低かったが,それ以外の組織タイプによるばらつきはなかった.
・先進諸国においては,10年間のOC使用により,75歳以前の卵巣癌発生率は,使用者100名につき1.2から0.8に減少した.同様に死亡率は使用者100人につき0.7から0.5に減少した.5,000women-yearのOC使用につき2例の卵巣癌発生と1例の卵巣癌による死亡を防ぐことになる.
なお,Lancet誌はそのeditorialで,OCの有効性と副作用の少なさ,それに卵巣癌を防止する明白な作用を考慮すれば,ピルはもはや処方箋なしに購入される薬剤として承認されるべきであると述べている.さらに卵巣癌の大幅な増加という一点のみを取り上げても,それだけのためにピルを使用してもよいのではないかとしている.
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