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(投稿:by 僻地の産科医)
MMJ 2008年9月号から!
世界の雑誌からですo(^-^)o ..。*♡
完全母乳栄養を推進しても
アレルギー発症リスクは低下しない
(MMJ September 2008 vol.4 N0.9 p772-773)
長期の完全母乳栄養がアレルギー・
喘息発症リスクに及ぼす影響:クラスター無作為化試験
Kramer MS,et al.BMJ 2007;335:815.
McGill University Faculty of Medicine,Canada.
■目的
長期の完全母乳栄養により6.5歳までの小児期のアレルギー・喘息発症リスクが低下するかどうか検討する。
■研究デザイン
クラスター無作為化試験(promotion of breastfeedig intervention trial ; PROBIT)。
■設定
ベラルーシ共和国の産科病院と提携総合診療所31施設。
■参加者
母親一乳児の17,046組を登録し、そのうち13,889組(81.5%)を対象児が6.5歳になるまで追
■介入
母乳栄養推進施設ではWHO/UNICEFのbaby friendly hospital initiative にならって母乳栄養を推進した。
■主要評価項目
ISAAC(lntemational Study of Asthma and Allergies in Childhood)の質問票および5種類の吸入抗原を用いた皮膚プリックテスト。
■結果
母乳栄養推進の介入を受けた児では、生後3ヵ月時の完全母乳栄養の割合が大幅に高く(44.3%vs 6.4%;P<0.001)、12ヵ月齢以下のすべての月齢において完全・部分母乳栄養の割合が有意に高かった。介入群において、アレルギー柱状、
アレルギー疾患・喘息の診断あるいは皮膚プリックテスト陽性のリスクの低下は認められなかった。皮膚プリックテスト陽性例の割合が異常に高い6施設(介入、対照各3施設)を除外して検討すると、プリックテスト陽性のリスクは5抗原中4抗原について、むしろ介入群で有意に高かった。
■結論
これらの結果からは、長期の完全母乳栄養が喘息・アレルギ一発症に対する予防効果をもつとはいえない。
試験登録番号 Current Controlled Trials ISRCTN37687716.
解 説
母乳栄養とアレルギー疾患発症リスクの関連
慶應義塾大学医学部小児科学教室助教
関口進一郎
母乳栄養がアレルギー疾患や喘息の発症に対して予防効果を有するのか否かについては、70年以上にわたって多数の研究が行われてきた。母乳栄養にはアレルギー疾患発症に対する予防効果があるとする報告がある一方、予防効果がないばかりかアレルギー疾患の発症リスクを上昇させるとするものがあり、相反する研究結果が混在している。過去の研究の多くは症例対照研究やコホート研究であり、栄養情報の信頼性や誤分類、盲検試験でないことによる評価の信頼性など、観察研究固有の問題点や限界があった。また、“positive"な結果だけが専門誌などに発表されやすいという「出版バイアス」による影響を受けていた可能性も考えられる。
本研究の著者らは、過去の研究にみられるこうした課題を克服するため、介人的方法によって母乳栄養とアレルギー疾患発症リスクの関連を検討した。母乳栄養で育てることを決めた母親を対象に完全母乳栄養と長期の母乳栄養を推進する介入方法を採用し、無作為化クラスタ一比較試験を行った。ベラルーシ共和国の病院、診療所を母乳栄養推進施設(介入群)と通常診療施設(対照群竹こ割り付けた。そして、完全母乳栄養を長期に継続した場合に、6年後においてアレルギー・喘息の発症リスクが低下しているかどうかが検証された。その結果、親の申告に基づくアレルギー・喘息の症状と診断、皮膚プリックテストの結果には有意差を認めなかったという。
本研究の長所は、母乳栄養推進の介大群と対照群との比較により観察研究固有の交絡因子を取り除いたこと、また、3ヵ月ごとに栄養の情報が収集され、母乳栄養期間のデータの信頼性が高いことである。一方、この研究における問題点の第1は、対象選択の偏り(選択バイアス)である。完全母乳栄養の割合や母乳栄養期間に差はあったにせよ、どちらも母乳栄養で育てられたという2群の類似性から結果に有意差が示されなかったかもしれない。問題点の第2は、評価項目の妥当性である。この研究では親の申告に基づくアレルギー・喘息の発症率は、英米における発症率の5分の1であった。この発症率の差が生じた理由については、ベラルーシ共和国ではアレルギー疾患の罹患率がそもそも低い、親が症状を認識していないために申告漏れがあった、アレルギーの診断が不十分であった、どちらの部も母乳栄養で育った――など両部に共通する要因の関与が考えられる。もう1つの評価項目とされた皮膚プリックテストは、有症状者に対する確認検査として推奨されるものであり、特異度は低い。
母乳栄養の利点についてはすでに、小児の消化管・下気道感染症を減少させることや、糖尿病や肥満、ある種のがんの発症リスクを下げることなどが科学的に証明されている。 したがって母子保健対策として母乳栄養を推進するのに十分な根拠は揃っているといえる。しかしながら現時点では、母乳栄養がアレルギー・喘息の発症を低下させるとする確実な根拠(エビデンス)は揃っていない。
二年半母乳で頑張ったのですがアレルギーには関係なかったのですね(;_;)でもいい思い出です。
投稿情報: sanagi | 2008年10 月13日 (月) 20:53
(途中に邪魔が入ってしまい上のつづきです。)
アレルギーのリスク低減に効果がなくても、息子は制限が多く食べられるものがほとんどなかった時期が長かったので、母乳なしの育児は私には考えられませんでした。アレルギーのお子さんを持つ周囲のお母さん方も同じ意見が多かったと記憶しています。挙がっているように他のメリットも多いですし、親としてはがんばって続けたことで絆が深まったとおもっています。
(今だにおっぱいを恋しがります…。)
投稿情報: sanagi | 2008年10 月13日 (月) 23:06
母乳が悪いとか、いいとか、そういうことだけではないと思いますo(^-^)o!!
なんでも利点も不利益もありますから。
でも世の中には母乳を上げられないお母さんたちもいるので、母乳否定じゃないけれど、こういうニュースも流していきたいなと思っています。
私自身は、当直が多すぎて激務ですぐに母乳が止まり、あげられなかったので。
悔いは残っていませんが、なんとなく責められることが多かったので当時は苦痛でした。
でも母乳の人も大変ですよね!
頑張ってください(>▽<)!!!
投稿情報: 僻地の産科医 | 2008年10 月14日 (火) 00:01