(関連目次)→性教育について考える
(投稿:by 僻地の産科医)
助産雑誌2008年08月号 ( Vol.62 No.8)から!
特集は、助産師が伝える性教育ですo(^-^)o ..。*♡
私は実は性教育に興味を持っていて、というのは、
はっきり言って堕胎って嘱託殺人だと思うんです。
私たち産婦人科医、はっきり言って「依頼人」から「殺人」を
依頼された雇われ人みたいなものですよ。
赤ちゃんを助ける業務とともに、中絶手術を一方で行う。
とても違和感があります。それから、中絶大嫌い!
女性は妊娠する性なんです。男性は痛みまで分かってあげられますか?
割切っちゃったのか、何ヶ月か毎に来る人だっています。
命の重みが分かっているのでしょうか?
本当は、産婦人科不足じゃなくって、ゆとりがあるのなら、
私が臨床のほかにやりたいのは、「裁判傍聴」でもなんでもなく、
「性教育」を小学校とかに行ってやること(>▽<)!!!
いつかそんな機会が与えられる世の中になればとおもっています。
助産師学生が出向く「いのち」の教育【小学生編】
東邦大学医学部看護学科 藤本 薫
東邦大学医学部看護学科 斎藤益子
(助産雑誌 Vol.62 no.8/ August 2008 p681-684)
助産師学生は,いのちの誕生や家族の絆にふれて感動したことを,新鮮な体験として語ることができる。小学校に出向いて行なう「いのち」の教育のグループワークでは,学生が担うピアエテュケーターによって,子どもたちは「いのちの大切さ」を感じ取ることができる。
はじめに
近年,思春期において性行動の活発化・低年齢化による人工妊娠中絶や性感炎症の増加,また,薬物乱用や喫煙・飲酒,過剰なダイエットの増加などの傾向か見られている。そして,これらの問題行動が思春期の男女の健康をむしばんでいることも指摘されている。2002年12月,厚生労働省は「健やか親子21」において,21世紀に取り組むべき課題を設定し,その1つに思春期の保健対策の強化と健康教育の推進を掲げた。
健やか親子検討会では,「思春期の健康と性の問題について,地域保健,医療,児童福祉,学校保健をはじめとした各分野での取り組みの強化などの量的拡大とともに,より明確なメッセージをできる限り効果的に提供する教材,媒体,教育手法の開発を急ぎ,望ましくないことを理解させ,行動変容につなげる質的変換を推進している」と述べている。
これを受け,性について「いつ」「誰が」「どのように」生徒に教育していけばいいのか,学校や地域の役割,医療関係者らの専門職の役割が検討されている。しかし,家庭との連携など学校における性教育の課題は多く,助産師や医師ら医療者に期待する声は大きい。
助産師は,出産の場に立ち全う専門職であリ,生命尊重を基盤にした職業倫理をもつ集団である。そのため,専門職能として「男女の身体の違い」「いのちの誕生」「性感炎症の予防」などについて伝えていくことができる。特に助産師をめざしている学生は,いのちの誕生の場に身を置き始めたばかりで,いま自分が体験していることを新鮮な感覚で鮮明に語ることができる。また,若年層に対する普及啓発として,同年代の仲間同士(=ピア)が行なうピアエデュケーターの役割を但うこともできる。 したがって,生命の尊厳やいのちの伝承の観点から,助産師学生が小学生を対象とした性教育を行なうことは,厚生労働省が推進する,より効果的な教育方法となりうると考える。
助産師学生によるピアエデュケーター
グルーブワークでは,助産師学生かピアエデュケーターの役割を批っている。 ピアエデュケーションとは,同じ立場にある仲間(ピア)から個人のもつ悩み・不安などに対処することのできる知識を得ることをいい、すでに性教育に取り入れられ効果をあげている。助産学生はグループワークの展開について指導案を作成し、演習を重ねたうえで実施している。ピアエデュケーターは,グループワークにおいてリラックスした空間をつくリ,生徒が自由な意見や疑問などを出し合ったり,正しい知識を得たり、新生児人形を抱く体験などを通して、いのちについて考えたりできるように努めている。全体講義前後にこのようなグループフークを展開することにより,性に関する知識の広がりや性への肯定的なイメージにもつながることが期待できる。
小学生を対象とした性教育プログラムの内容
学校教育における性教育は、学習指導要領を基本として行なわれる。しかし,「小学校学習指導要領 保健」に示された指導内容は,身体の発育・発達についての理解が主な内容である。5年生理科の動物の誕生では,「人は,母体内で成長して生まれること」という内容も含まれ,5,6年生道徳では「いのちがかけがえのないものであることを知り、自他のいのちを尊重する」との目標が掲げられている。小学校で性教育を行なう際に,どの授業のなかで何を目的に行なわれるのかにより焦点が異なることも考えられる。
筆者らは依頼先の養護教諭と密に連絡をとり内容を検討している。この小学校では1年生から6年生までの系統的な性教育が行なわれており,4年生までに自分の身体の成長,男の人と女の人の身体の違い,月経や射精はどうして起こるのか,その対処についてなどの話が済んでいる。筆者らは5年生と6年生を対象に2年間の積み上げ教育として活動を行なっている(図)。
小学生の感想から見えるもの
性教育実施後,5年生、6年生の生徒に感想を記入してもらった。その内容には,談義やグループワークを通して率直な感想が表現されていた。たとえば,「一番びっくりしたのは,私は何万個のたまごのなかかから選ばれた1つということです。いま,私がこの場所にいるのはとてもすごいことなんてなあと思いました。だからいのちを大切にしたいです。いのちはお金でも買えなく,自分に1つしかないものだから大切にします」(5年女子)といったいのちの大切さをあらためて感じている内容が多くみられた。また,「子どもの人形をもってみたら結構重かったから,ずっともっているお母さんが大変だろうなと思った」(5年男子)「ボクはすごい確率で生まれてきたんだと思った。このいのちを大切にしようと思った。お父さん,お母さんにありがとうといいたい」(5年男子)「あとで先生に聞かれたことをお母さんに聞いてみたらきちんと答えてくれました。ちょっぴりうれしかったです」(6年男子)と親への感謝の気持ちを感じたり、授業の内容を親に話してみた感想を表現したりしていた。
新生児人形を抱く体験からは,「本物の重さの赤ちゃんをだっこさせてもらいました。想像していたよりも重くて,ちょっと『ガクン』となりました。折り紙の中心あたりにあいたすごく小さな穴の大きさが『卵子』だなんて,びっくりしました。すごい数のなかから『1人』しか生きられないなかで,私が生まれてきただなんて,すごい『かくりつ』だなと思いました。だから,自分のいのちは大切にしなくちゃなど思いました」(5年女子)と赤ちゃんをだっこするという体験と講義の内容を統合しながらいのちの重みを実感している様子がうかがえた。
ピアエデュケーターについては,「赤ちゃんのだき方を教えてくれて,実際やってみたら『上手だね』と言われて,とてもうれしかったです」(6年男子),「お姉さんの話は,よくわかりやすくて,すごく勉強になりました。人形の赤ちゃんもだっこさせてもらえて,意外に重いことが実感でき、よかったです」(6年女子)とピアエデュケーターをお姉さんと親しみのある呼び名で表現していた。
そのほか,「5年生のときに1回やったけど,改めていのちの大切さを感じました。将来の子どもにも,こういうことを教えてあげたいです」(6年女子),「桔は性教育の勉強をして,赤ちゃんの人形をだいてみて,昨年はただ単に『重い』としか思えなかったんですけど,今回は『自分にも赤ちゃんの頃は,これだけあったんだなあ』と思えました。赤ちゃんが泣いたとき『何で泣くの?泣かないでほしい』と思ったことが何度かあったけれど,泣くというのは意味かあるわけだし,泣かなければいけないことがあるんだなあと思いました。勉強になりました」(6年女子)と5年生から6年生にかけて継続的に行なうことで,赤ちゃんをだっこするという同じ体験から異なる感覚を引き出すことができていた。
まとめ
性や異性への関心が高まりはじめるこの時期に,かけがえのないいのちの誕生や重みを学び,“いのちをバトンすること”“いのちを尊重するこどの大切さを感じることができる機会を設けていくことは有意義である。さらに、助産師学生がグループワークに入ると,子どもたちの表情も笑顔になったり真剣になったりと豊かに変化する。助産師学生は,いのちの誕生や家族のきずなに触れて感動した体験だけでなく,助産師という仕事の責任の重さと困難さを実感してきており,新鮮な体験を具体的に自分の言葉で生徒たちへ語りかけることができる。生徒たちは,講義だけではなく,ピアエデュケーションにて体験やディスカッションを行なうことで,「いのちの大切さ」を感じ取ることができると考える。
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